先日NHK教育テレビで放送された「亡命詩人の憂鬱」は、中国の詩人を8年間追い続けた秀作であった。廖亦武という小説家・詩人であるが、天安門事件に関する怒りの詩を書いて収監され他人物である。
廖亦武は何度も投獄され、拷問を受け生活もできずに中国をついに昨年7月にベトナム経由で脱出した。中国国内では「六四証言」と天安門事件を追求する小説を書いている。
収監されながら、歯磨きなどで文章を書きとめ「銃弾とアヘン」を、出所後まとめた。アヘンとは経済成長のことを指す。中国では発行されない。
亡命先のドイツで「私たちの世代は中国を変られない」との、亡命者の嘆きを口にする。
天安門事件では、前半のデモなどの報道はなされているが、後半の軍による大量虐殺は全く報道されていない。3千人から5万人まで殺された人数も幅がある。解放軍は一人も殺していないと報道する。
その後の中国政府の隠ぺい工作と、弾圧は徹底している。参加者は「暴徒」と呼ばれ社会から隔絶され、職にもろくにつけない。
いまだ獄中にいる者、殺された者、処刑された者たちに負い目を感じている、廖亦武たち亡命者たちの心情である。その亡命者はごく僅かである。国内の不当こう留者の署名をするのがせいぜいである。
外での発言は自由であるが、国には届かない。廖亦武は「亡命者は孤独である。胎児のように小さく小さく縮こまる」との述べる。
廖亦武は先月、ポーランドのカプチンスキー、ノンフィクション賞を受賞した。彼の憂鬱は消えることがない。