107 絶望の中で
「誰か別の/恋人の唇に彼の唇を 探し求める」というだけなら、誰にでも経験があるかもしれない。この絶望は、二連目で、こう言いなおされる。
カヴァフィスは、彼を失ったことよりも、このことばに絶望したのではないだろうか。彼は、そのことばをほんとうに実行したのか。それともカヴァフィスから逃れるためにそう言っただけなのか。
たぶん、後者だろう。
性の好みは変えることはできないだろう。この詩を書いているカヴァフィスは「汚れて恥知らずな 性の快楽」のなかに、いまもいる。同じ快楽を体験した彼。彼だけが、それを捨て去ることができるとは思えない。もしかすると、カヴァフィスは、そういう彼を、いつか、どこかで見かけたかもしれない。
それがカヴァフィスを絶望させる。
池澤は、詩の構造(脚韻)について註釈しているが、実際にどういう韻なのか書かれていないので、「構造」があるらしいということしかわからない。
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
ここをクリックして2500円(送料、別途注文部数によって変更になります)の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。
オンデマンド形式です。一般書店では注文できません。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
*
以下の本もオンデマンドで発売中です。
評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455
彼をすっかり失った。 今は誰か別の
恋人の唇に彼の唇を 探し求める。
新しい恋人を 抱きしめるたびに、
これは前のあの 若者なのだと
自分に 言い聞かせる。
「誰か別の/恋人の唇に彼の唇を 探し求める」というだけなら、誰にでも経験があるかもしれない。この絶望は、二連目で、こう言いなおされる。
恋人は言ったのだ。 こんな病んだ
汚れた愛から 自分を救いたいと。
汚れて恥知らずな 性の快楽から。
今ならばまだ 間に合うと。
カヴァフィスは、彼を失ったことよりも、このことばに絶望したのではないだろうか。彼は、そのことばをほんとうに実行したのか。それともカヴァフィスから逃れるためにそう言っただけなのか。
たぶん、後者だろう。
性の好みは変えることはできないだろう。この詩を書いているカヴァフィスは「汚れて恥知らずな 性の快楽」のなかに、いまもいる。同じ快楽を体験した彼。彼だけが、それを捨て去ることができるとは思えない。もしかすると、カヴァフィスは、そういう彼を、いつか、どこかで見かけたかもしれない。
それがカヴァフィスを絶望させる。
池澤は、詩の構造(脚韻)について註釈しているが、実際にどういう韻なのか書かれていないので、「構造」があるらしいということしかわからない。
カヴァフィス全詩 | |
クリエーター情報なし | |
書肆山田 |
「高橋睦郎『つい昨日のこと』を読む」を発行しました。314ページ。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
ここをクリックして2500円(送料、別途注文部数によって変更になります)の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。
オンデマンド形式です。一般書店では注文できません。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
*
以下の本もオンデマンドで発売中です。
評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455