詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

マルケスの文体

2021-12-23 10:54:26 | その他(音楽、小説etc)

マルケスの文体
 マルケス「予告された殺人の記録」はルポルタージュ風の、簡潔な文体の作品である。「百年の孤独」「コレラ時代の愛」「族長の秋」のような、まだつづくのか、という凝った文体が特徴的なわけではない。
 しかし。
 写真は、小説の最初の方の部分だが、「era una costumbre 」以下の部分がいかにもマルケスらしい。(長いので、写真で紹介。)
 現実にはピストルの弾がクロゼットを突き破り、壁をぶち抜き、隣の家、広場を超えて、教会の奥の等身大の石膏像を粉々にしてしまうということはないだろう。まるでミサイルだ。この文章を成り立たせているのが、途中の「con unestruendo de gerra」だね。「戦争のときの轟音のような」とでも言えばいいのか。おおげさだけれど、このおおげさが全体を生き生きさせている。この挿入がなければ「絵空事」だけれど、その「絵空事」を現実にかえることばの運動。これは、文学にだけ許された特権。
 こういうのって、やっぱり好きだなあ。笑い出してしまう。


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