ストによる公共サービスの停止により、ゴミの匂いが町中に溢れるゴッサムシティ。病気の母を一人で介護し、自身も笑いの止まらない病のために福祉サービスの面談を受ける男。コメディアンで生計を立てることを夢見るものの、ピエロの格好して小さなイベントアルバイトをするような日々は不安定だ。護身用にと同僚から貰った銃を落としたために職を追われ、結局その銃を地下鉄内で乱射し警察に終われるようになる男。
心休まる時はなく、生活は不安定で、自分を理解して慰めてくれる者もない。ただ、そんな不安定は日々でも誰もが銃を持ち、人を殺めるわけではない。
不安と不満が爆発し、その思いが溢れ止まらない様子が恐ろしく自然に感じられる。何故売れないコメディアンのアーサーは、一線を越えてそんな道に入り込んだのか・・・・この映画が面白くそして恐ろしく怖い映画であるのは、同意は出来ないが共感は出来るという不安定な感情が、見ているうちに自然と湧き上がってくることだ。彼が一線を越えるしかなかった理由が見ていれば自然に伝わってくる。。。。
のちにジョーカーとなるアーサーが見るテレビの中では、ビング・クロスビーが甘い歌声を聴かせている。その歌声が幸せそうであればあるほど、不安と不満がより身近に感じられるのはなぜだろう。