1991年のクリスマス。息も詰まるような3日間をエリザベス女王の私邸で過ごすダイアナ妃の姿が描かれる映画は、ひたすら彼女の心の中を覗くような映像に終始する。
一つの自由もない生活に、息をするのさえもやっとのような様子。洋服の一つも好きに選べない事、一挙手一投足をチェックされて、食事さえもまともに摂れない彼女。
ロイヤルファミリーである事が生まれながらにして決まっていた夫チャールズと違い、ロイヤルファミリーになる事を義務付けられた立場の彼女。慣れない生活の中で、唯一の味方であるはずの夫が彼女に興味を持っていない事を国民全員が知っているという事実。
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特別イギリス王室に興味を持っていなかった私でも、彼女がスペンサー家の令嬢だったこと、結婚式後のロイヤルキスの写真が新聞の一面に掲載されたことはよく覚えている。ファッション誌でも少し上目遣いの表情や、時折みせるはにかんだ笑顔と一緒に彼女の装いは紹介されたし、チャールズとの仲が冷え切った中で摂食障害に悩まされていた事や、彼女が泣きながら一人車を運転していた事はワイドショーでも頻繁に取り上げられていた。
他人の興味本位な視線の中で、どれだけ彼女が孤独を感じていたかを、ダイアナを演じるクリステン・スチュワードの一人芝居のような映像で描く。子ども達とのやり取り以外は極力そぎ落とされ、今の状況を一人何度も繰り返し考え、そこから抜け出そうとする彼女の様子は、切なくも潔い。
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1997年の自動車事故から25年。映画化するにはそれだけの時間が必要だったということか・・・