この本を手に取ったのは、ついこの間までネットフリックスでシスターズを見ていた事が大きな理由だ。
ドラマは、ベトナム戦争に従軍した人々が、自分たちを情蘭会と名乗り、その後韓国に戻ってどのような事をしたかが、ドラマの大きな謎として描かれている。
私は、韓国にとってはベトナム戦争に参加した事が、金銭面で1970年前後の復興の大きな後押しになった事位しか知識になかったため、せっかくだからと手に取った本だったのだ。
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ベトコンとただの村民の区別がつかないので全員を殺す。
ベトコンが逃げたあととわかっていても、村人を協力者とみなして皆殺しにし、村を壊滅させる。
著者はベトナム、韓国を訪れ、関係者を探し出し、「自分がこの取材を続ける事の意義」を何度も自らに問いかけつつ、丹念に少しずつ当事者の辛い話を聞きだしていく。
私は、韓国が何をしたかだけでなく、「なぜそんな事を・・・」という理由と、「それが今にどんな風に繋がっているのか?」ついても、はっきりと知るきっかけを探しだしたかったのだが、残念なことに、そのあたりは私は良く理解出来なかった。私の理解不足で分からなかったのか、何故については明確な言及がなかったのか・・・本は全部読んだはずなのに、そのあたりに関してはどうも理解が追い付かなかった・・・
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同じ出来事であっても、特に目をそむけたくなるような事象であればあるほど、当事者の思いは全く別の方向を向く事が多いと思う。どちらにも引きずられない第三者の視点が必要な事は確実なので、韓国、ベトナム、両方の関係者の話を聞こうとしていた事は意味のある事だと思う。戦後長い時間が流れ、更に現在の両国がおかれている立場が関係して、今では検証する事さえも難しい事になっている事、歴史の事実は時間の経過とともに、恣意的、意図的、偶発的な事象が重なって姿を変えていく事も読みながら実感する。
記憶は風化し、記録は抹消され、検証することはどんどん難しさを増すだろう。ただ、検証することは現在を生きる者の辛い義務であるという思いは伝わってくる。