BLACK SWAN

白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

サマータイムレンダ 全13巻(全139話)感想2:全編通じて展開の緩急のつけ方が上手く、最後まで加速したまま物語が進んでいくのは気持ちいい!

2022-05-06 15:33:33 | サマータイムレンダ
感想1からの続き)

とにかく、この作品は、緩急のつけ方が最高!

7月22日から24日の3日間を繰り返して、最終的には10周する。

ただし、回を追うごとに戻れる過去が近づいてくる、というタイムリミットつき。
つまり、いつまでもタイムリープ者の好きにはできない、ということ。
あわせて、確定した過去は覆せない、ということ。
やり直しできる範囲がどんどん狭まっていく。
その分、知恵を使わなければならない。
相手の数手先まで先読みして、相手が取れる選択肢を狭めなければならない。
知略戦の横行。
しかも状況は時々刻々変わっていく。

実際、慎平&ウシオから見れば、常に一進一退。

とりわけ
3周目の絶望
4周目の無念
5周目からの容赦ない追撃
によって、圧倒的に劣勢を強いられる

なかでも、ウシオの消失とひづるの死は決定的にマズイ状況を生み出すが、9周目におけるウシオの奇跡的な復活とともに物語は一気に加速し最終局面へ流れ込む。

それにしても、この終盤の9周目から10周目にかけての一気呵成ぶりには、ホントしびれたw

もう読み進めるしかない!って感じでグイグイいく!

で、最後に覚醒したウシオが、第1話への円環をつくる。

ウシオは、潮のコピー、いわばニセモノだが、ニセモノ故に本物の「潮」なら絶対にこれをやるはず、ということをとことん突き止めて、実行に移す。

そのあたりは、西尾維新の『偽物語』に出てきた貝木泥舟の「ニセモノこそが本物に近づきやがては凌駕する」という理論そのもの。

実際、ウシオはオリジナルの「潮」と比べても不思議な存在で、

肉体的な素体、すなわち物質的な素体は、

ハイネの右目ならびにその右目に伴う異能と、
ハイネのオリジナルであった雁切波稲の良心

をともにもった存在としてつくられ、

そこに魂として、オリジナルの「潮」の真っ直ぐな正義感と慎平への愛情が上乗せされた存在。

その意味では、ウシオって実は「潮」以上の存在なんだよね、ポテンシャルとして。
潮以外の要素も持ち合わせたハイブリッド。
そのハイブリッドな肉体的存在を、「潮」の魂が操っていた、という感じで。


「潮」自体は、いわば「魂」だけで戦っていたようなものだけど、イレギュラーな「影」の肉体のスペックによって、それ以上の成果を見せる。

加えて、影のウシオも慎平とループを繰り返すうちにどんどん成長していく。

だから、終盤になるとウシオは、魂的にも「潮」であって「潮」ではない状態になる。

「潮」の魂が経験を積んで成長していくから。

で、ここで哲学的に面白いのは、成長したウシオは、当然、コピー直後のオリジナルの「潮」とは異なるはずなのだけど、でも、人格としての同一性(アイデンティティ)を保っていると、本人も周りの人間も思ってしまうところで。

つまり、人格の同一性は、成長という変化も織り込み済みのものなのだ、ということで。

だったら、影の身体だけどウシオはやっぱり「潮」でいいじゃん、ってことになるわけで。

そういう、ふとした時に思いつく知的面白さもあるんだよね。

もっとも、そのために仕込まれたのが、作中の『沼男』という小説なのだけど。

ああいう形で、読者の解釈を誘導するところも作風として上手いなぁ、と思ってしまったんだよね。

ああしたメタ読みを促さすガジェットの配置も、緩急のうまさに一役買っているのは間違いない。

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サマータイムレンダ 第4話 『未視感(ジャメヴ)』 感想: 今回でメインキャラが勢ぞろいした、って感じだな!

2022-05-06 11:30:14 | サマータイムレンダ
いやー、展開早い!

一気に夏祭りのクライマックス間近まで。

しかも最後をひづる/竜之介の登場で締めるのも!

しかし、一通り最後まで読み終わってから、今回のエピソードを見ると、

慎平がウシオ(=潮の影)を浜辺で見つけるところって、秀逸だな。

ずっと海の中を漂っていたウシオが浜辺に打ち上げられた、という意味では、状況的には「人魚姫」のようなシチュエーションだし。

実際、ウシオの髪が金髪なのも、この浜辺での再会シーンで思いっきり、効いている。

幻想的だし、ロマンティックだよねw

しかも、ウシオが、この時点では、影の記憶をもろもろ飛ばされているから、自分自身を本物の潮と思いこんでいるところもいい。

別にウシオに悪気があるのではなく、本気で自分が潮だと、この時点では思っているからね。

そのあたりは、最初から自分は澪の影だと自覚して行動しているミオとは全く違う。

というか、圧倒的にウシオがイレギュラーなわけだけど。

でも、読み終わった後で、今回の浜辺での再会シーンを見ると、実は、この時に出会ったウシオと慎平は、ずっと一緒に最後まで戦うことになるんだよね。

影だけど影じゃないウシオ/潮として。

これは実は良く出来てるんだよなぁ。

タイムリープものって記憶の保持が基本的にその人物の人格の一貫性、つまりアイデンティティを決定するものとして機能するのだけど、ウシオについては、それがそのまま当てはまる。

タイムリープの能力者は慎平であるにもかかわらず。

前の周回や並行世界の記憶を保持する特異点としてのキャラクター、って、ホント当たり前の存在になってるのは、なんだけどw


もっとも、こうやってこの4話における慎平とウシオの遭遇シーンを見直すと、どうしてあの場所に慎平が誘導されたのか? という謎が新たにわいてくるんだけどねw

ご都合主義といえばそれまでなのだけど、でも、そうした物語の転換点を、うまーく原作は、物語の勢いで突破しているんだよね。

そういう意味では、この作品のスピード感は、物語を成立させるためにも必要だったんだな、って改めて痛感した。


そう、こんな感じで、今後もどんどん物語は加速していく!

今から続きが楽しみだ。

ともあれ、次回は、前半の山場!

というか、物語の大転換点だからな!

今からワクワクするよ。ゾクゾクもするけれどw

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