スークを一通り見終わって、お茶を飲みにカフェへ。
ガーデンカフェでカモが放し飼いにされている。
「ねぇ、ヘナペイントを手にやりたいんだけど、あれっていくら位で出来るのかな。」
スースでヘナのデザインを並べているお店を見かけたけど、つけたら色が定着するまで
濡らしたりできないので躊躇していた。
「うーん。男は普通しないからわからないな。」
彼は友達に電話している。
「僕の友達が君にヘナをしてくれるって。今夜彼女の家に行こう。」
あれ、もうやる話になってる(笑)まぁいいか。
夜7時、ホテルまで迎えに来てもらった。何か持っている。
「ダット(ナツメヤシ)だよ。一番いいグレードのを持ってきてあげるって言ったでしょ。」
秋はなつめやしの収穫期らしく、あちこちでナツメヤシが大々的に売っているのを見かける。
彼は1キロ入りの大きな箱をうやうやしく差し出す。
きゃー嬉しい!ナツメヤシは大好物。でも、さすがにキロは・・・(笑)カバン一杯なのに。
タクシーで友達の家に向かう。
「僕はサハラ砂漠の出身だけど、これから行く家族も同じ町の出身なんだ。」
ナツメヤシと牛乳でもてなされる。この組み合わせはアラブではベストなメニューなのだ。
3世代が勢ぞろいで、わいわいとにぎやかで楽しそう。
おばあちゃんはベルベル民族の刺青を顔にしていて美しい。
お父さんはとても陽気だ。大体、お父さんの気質でその家族の雰囲気も決まるけど、
この家族はみな大らかで気さくだ。
彼女は10代後半だろうか。姉妹やお母さんとビニール袋からデザインのシールを広げて
あーでもない、こーでもないと決めるのにとても時間がかかった。
そしてこの緑色の粉に水、砂糖、レモンを入れて混ぜてしばらく置く。
手や髪にはオレンジがかった赤に発色する。とても不思議だ。
その間にシールをカットして私の手に貼っていく。
全部貼ったらペースト状のヘナを塗る。植物の青臭いにおいがする。
書いたら簡単だが、4時間近くかかった・・・。なんて呑気な人たち(苦笑)
終わった頃は私はされているだけなのに、へとへと。
写真を撮ってくれたが、自分だけ疲れきってやつれた顔をしている(笑)
足もやろうと言われたけど、体力の限界を感じて丁重にお断りする。
塗った手はペーパータオルとビニール袋で包んで輪ゴムで手首を止める。
彼にホテルまでタクシーで送ってもらい、鍵も開けてもらう。
明日手を見せに行くと約束して、そのままバタンとベッドに倒れこんで寝てしまった。
翌朝、ビニールを取って手を洗う。
すると、まーかっかの手が!!!
すごいな。赤を通り過ぎて黒に近いくらい色が着いてる。
ちょっと皮膚がゴワゴワと硬く感じられる。
荷造りをしてから、muzeへ。
入り口に昨日の館員さんが。「聞いてるよ~。手を見せてよ。」というので、
ほらっ!と手を広げるとおおーっ。とニコニコ。
彼も後からやってきて、素晴らしい!と褒めてくれる。
ヘナはこちらでは伝統的で喜ばしいもの。特に南部は都会の北部とメンタリティが違う。
観光客がこんなことしても誉めそやしてくれる。
「僕はドゥーズ(サハラ砂漠)の出身なんだ。家族はドゥーズにいる。今度は僕の家に招待するよ。
ママの手料理を食べて、バイクでガゼル猟をしたり、歌ってタイコをたたいたり、楽しいよ!」
そんな話をして別れた。
ここでもいい人たちに出会えてよかった。
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「今日の予約はこれでおしまい。これからスーク(市場)を案内してあげるよ。」
ほんと!?ラッキー。もう他のゴルファを見に行く気もなかったし。
「おまたせ!行こうか。」
黒人青年は民族衣装を脱いで普通のシャツとパンツ姿になっていた。
あの衣装がいいのに。「ははは。あれは仕事だから。普段は恥ずかしいよ。」
ということで、普通の姿になってしまった青年とすぐ近くのスークへ。
日用品が延々と続く。鍋釜、食器、石鹸・・・
ヘナという植物の粉を見つける。毛染めにしたり、手に模様にして塗ったりする。
最近は日本でも美容院で見かけるようになった。
「これ買う。日本では簡単に手に入らないの。いくらか聞いてくれる?」
彼は値段を聞くと「安いものだから」と買ってくれた。
女性の髪留めやアクセサリー売り場では、プラスチックで出来た腕輪を買ってくれた。
次はお香コーナーへ。
お香はどの家にもあり、来客の時はいいお香を焚いてもてなす。
色んな種類があるけど、木片だったりガラスみたいだったり、全部ナチュラル本物なので
いい匂いだけど使い方がわからない。
青年が白い半透明の塊を取って「これなんだか知ってる?ガムだよ。」と言って口に
放り込んで噛み始めた。
お香がガム???なんだかわかんないけど、自分も噛んでみる。
うっ、粉っぽくて苦い。
でも噛んでいる間に味はなくなってしまって、ほんとにチューインガム状のものが口に残っている。
「ほら、嘘じゃないでしょ。これは胃にいいし、口もすっきりするんだ。」
確かにそんな感じ。
「これ好き?」「うん。面白いね。知らなかったよ。」そういうとまたこれも買ってくれた。
その時はわからなかったけど、後で調べたら、これはき乳香らしい。(写真)
現地の人と一緒だと、ただ旅行者として一人で見てるより色々なことがわかって有り難い。
「ここから先はリビアエリア。全てリビアから来たものばかりだよ。なんでも半額なんだ。」
リビアから!売ってる物は他とあまり違わないみたいだけど。
彼は又しても腕輪を買ってくれた。「これ買ってもらったばかりじゃない。もういらないよ。」
「いや、買いたいんだよ。」
お茶1杯程度の値段だけど、なんだか貢がれているみたいだな(笑)
こんな子が日本人だったら間違いなく女の子の食い物にされるぞーーー。
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fengさんコメントありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
この不思議な建物の裏にまわると、そこもゴルファ(カマボコ型の建物)通りだった。
muze(博物館)の矢印看板があったので、それに従って行ってみる。
門のあたりにヒマそうな男たち。少し離れた所に民族衣装を着た黒人の若者。
私が近づくと、黒人の若者がこちらに向かって歩いてきた。
「見学かい?」「そう」「こっちへ」と門へ。 って言ってもどこがmuzeなの?
ここがmuzeだよ。門で入場料を払うと中へ案内してくれる。
あぁ。このゴルファ全体が郷土資料館のようになっているんだ。
中庭には古くからの彼らの生活が、人形や道具と共に紹介されている。
彼が一部屋づつ、95%のフランス語と5%の英語とジェスチャーで説明してくれる。
私は普通の人の普通の生活にとても興味があるのでかなり一生懸命聞く。
石臼をまわしてみたり、羊の毛をならす櫛で引っ張って見せてもらったり。
最後に何故か世界中のお金を展示してる部屋があって、特にイスラム諸国のお金は
めずらしくて一つ一つじっくり見てしまった。
黒人青年は面倒くさそうなそぶりも見せず、ニコニコしながら私の質問や感想に答えて
付き合ってくれている。
あまりに時間をかけているので他の館員が心配して見に来た(笑)
外に出て、2階に登って写真を撮ってもらった。
「こっちは僕の部屋だよ。見たい?」「え、ここに住んでいるの!?見たい見たい!」
と入れてもらうと、ベッドと服が数枚。以上。
隣の部屋は物置にしてるそうだけど、何もない(笑)
えらくシンプルな生活をしてるなぁ。
全て見終えると、ミントティのサービスがあった。
一緒に座ってお茶を飲む。
「これからジェルバからのフランス人の団体客が来るんだ。ここは個人の訪問はほとんどないよ。」
チュニジア南部は見所がいっぱいあると言うのに、殆どはジェルバというリゾート島から
バスで1日ないし2日のツアーで駆け足で見てまわるんだって。なんてもったいない。
なんてのんびりお話してる間にツアー客到着。
他の館員がガイドとなって見学へ。
その間に他の館員がポットにお茶を補充。
たくさんの小さなグラスをお盆に並べ、庭から摘んできたミントをちぎって入れる。
「手伝ってもいい?」「もちろん!」許可がでたたので自分もミントを入れる。
見終わった人たちに青年が「お茶どうぞ!」と勧める。
グラスを取って庭のベンチに座ってお茶をすする。
いつの間にか置いてある小皿にフランス人がチップをチャリンと入れる。
少しの間雑談し、トイレを済ませて、彼らはまた慌しく去っていった。
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colo さん「番外編」へのコメントありがとうございました。私も以前何かの本で読んでかすかな記憶があるのですが、史実として確定しているものと思っていました。新しい史料の発見が待たれますね。
一人じゃ商売魂も火がつかないらしく、売る気まんまんで話しかけてくる人もいない。
英語で話しかけてきた青年が一人いたので、彼の店をのぞいておしゃべり。
都会と違ってのんびりしているので、なんだかリラックスしちゃうなぁ(笑)
青年も時間が限られているツアー客ではないので焦って売ろうとしない。
お土産屋さんで、商品を一つ一つ説明してもらうのが好きだ。
あちこちで見て知っていても、丁寧に教えてもらうとへぇーと感心したように頷いてしまう。
きれいに結晶している小さな「砂漠の薔薇」を「キレイ!」と言ったらくれた。(写真)
うれしいなぁ。欲しかったんだ。
お兄さんは、カフィーヤ(パレスチナ人がよく身に着けている赤×白のスカーフ)を
ファティマ巻きだよといってこっちの女性の巻き方で巻いて写真を撮ってくれた。
なんかお礼に買おうと、よく見かける色砂で瓶の中にらくだなんかを描いたものを買うことにした。
「いくらかな?」
「いくらでもいいよ」
「え?いくらでもって・・・わかんないよ」
「君はもう友達だから、払いたいだけ払って持って行ったらいい」
そう言われると困る。身内価格でもぼったくりでもいいから決めてくれた方が楽なんだけど。
仕方なく、適当にポケットから小銭を掴んで渡す。
日本に持ち帰るのに割れないようにと硬いガサガサしたビニールをたっぷり巻いてくれた。
最後に一緒に写真を撮ろうと言うので近くの人にシャッターを頼んだ。
日本から写真送るね、と約束をしてゴルファを後にした。
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ロティを頼むと前菜(?)としてルビア(えんどう豆のトマト煮)が付く。
パンはどこでも食べ放題でサービスされる。
普段は安いルビアだけを頼んでパンにつけて食べているので今日はかなり豪勢な昼食だ(笑)
アラブや中東を旅すると嬉しいのがこのパン。
とても素朴で小麦の自然な甘みと優しい香り。保存料などの添加物一切なし。
とてもおいしいのにとっても安い。朝焼きたてにありつくと、手が止まらない。
そんな訳で、旅の最中も痩せそうで全然痩せない。
食べ終えて、店のおじさんにゴルファへの道を聞く。
フランス語なのでほぼわからないけど、一生懸命教えてくれたので不思議となんとなくわかる(笑)
お礼を言って道を進んで行くと、ピンクの大きなオブジェが。
「コムサ(こんな)」とおじさんがガイドブックのピンク色の部分を指していた意味がわかった。
そこを曲がるとゴルフが見えた。おじさんのおかげだよ。ありがとう!
ゴルファというのは貯蔵庫や住居として使用されていた不思議な形の建物。
ここはそれがぐるっと輪のように並んでいて、建物は現在お土産屋として使われている。
中に入ると、観光客は見当たらず閑散としている。
ツアー客ばかりだからだろう。閉まっている店も多い。
端からブラブラと1軒づゆっくりと歩いてみる。
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メドニンという南部の町に来た。
ここに来るバスでは、隣のシートは素敵なおじいさんだった。
マグルーブと呼ばれるスターウォーズでも使われた茶色のフード付きマントに気の杖。
ごつくシワシワの顔立ち。
完璧にかっこいい。
写真集にでも載りそうなおじいさんだ。
「シーナ?(中国?)」
「ノン。ヤバニーヤ(いや、日本人)」
ふむ。とうなずくおじいさん。
言葉は通じないけど、カーテン下ろせとか、メドニンだよとか、目と杖で語る(笑)
バスを降りると、ガイドブックに書いてあるバスステーションではなく、街中のようだ。
便利だけど、一体ここはどこよ。
英語の表記もないどころかフランス語表記も見当たらないので見当がつかない。
街はアラビア語ばっかり・・・今風なカフェなら英語話す人がいるかもと思って聞いてみる。
なんとか通じてホテルへ向かう。
ホテルの隣のレストランのおじさんが「ホテル?ここだよ!」と言うが早いが荷物を
奪ってレセプションに連行(笑)
「お礼はいいから後で食事しに来てね!」
とお礼を言う前にそう言ってニッコニコで戻っていった。
ホテルはボロボロだけど、1泊なのでシャワーなしの一番安い部屋へ。
早速食事に向かう。
たまにはお肉でも食べるかとロティ(鶏のグリル)を頼む。
先にルビア(豆のトマト煮)が出てくる。これがうまい。
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スース7
サンドイッチ屋でチャパティサンドというのを注文して、近くのベンチに座って食べる。
道行く人を眺めながら食べるのも楽しい。
白人の親子が通りかかる。
5歳位の娘がマントを纏ってうずくまっている老人にお金を渡して親の元へ駆け戻る。
ふと「マダム、マッダーム」と離れたベンチから少年達がこちらを見て声をかけていたのに気づく。
全体的に身なりが汚い。
「ん?」と首を傾げてみると、食べかけのサンドイッチを指して食べるジェスチャーをする。
おいでと言うと3人でこそこそと何やら話している。
シャイなのかしらん。英語がわからかったのかも。
また食べ始めると「マッダーム」とまた3人で目をクリクリさせてこちらを見ている。
今度はおいでと手で手招きすると、そのうちの一人が私のベンチまでやってきた。
愛くるしい顔立ちの美少年。「おなかすいてるの?」黙っている。やっぱり英語はNGらしい。
彼の着ているスウェットシャツは薄汚れて穴も開いている。
これ?とサンドイッチを指すと「ウィ(イエス)」と言うので、財布から1D(100円弱)を出して渡す。
食べてるサンドイッチが1Dだったから。
少年は受け取るが早いが、すごい勢いで仲間とどこかへ消えていった。
食べ終わって、白人親子が喜捨していた老人に自分も小銭を渡してその場を離れた。
露店の店じまいの頃、広場に出向く。
「今日はお客だよ。サハラ沙漠用にサングラスを買うよ。」「あ、そう。好きなの取っていいよ。」
「じゃこれ。いくら?」「・・・20D!」
「いいよ。言い値で買う。」「冗談に決まってるだろ。お金は要らない。払ったら口もうきかない。」
数日間面倒を見てもらったお礼に買いたかったのに、結局代金は受け取ってくれなかった。
やっぱり九州男児だなぁ。
店をたたむのを手伝う。
彼は寝不足で早く帰りたいと言ってたのに「よければ食事付き合うよ。」と気を使ってくれる。
「いや大丈夫、さっき食べたし。」
ホテルへ送ってもらう途中、彼が2D(200円弱)をくれた。
「なにこれ?」
「夜おなかすくでしょ。これでサンドイッチくらい買えるから。」
ええっ。君は本当にアラブ人なのか?
たかられたりぼったくられたりはあるけど、彼らから施しを受けようとは(笑)
これだけは固辞して、受け取らない彼のポケットに無理やり押し込んだ。
「色々ありがとう」と、ホテルの前で別れた。
写真はベンチで食べたサンドイッチです。卵やツナ、チーズ、唐辛子ペーストなどを好みで挟んでもらいます。
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スース6
すでに1週間弱の滞在となってしまったけど、やっと祝日も終わって街も通常に戻ったみたい。
大きな迷路のような旧市街のメディナも大分歩き尽くした感がある。道も大体覚えてしまった。
たくさんの人に会ったなぁ。いい人も嫌なひとも(笑)
ホテルはのおとなりさんはサウジアラビアの衣装をきたおじさん、イギリス人の老紳士、
ドイツ人の一人旅の女性とめまぐるしく変わって行く。
今日は無口なアラブのおじさんだった。部屋の前で出会ったのでハローと挨拶したら、黙って部屋に入ってしまった。
きっと英語を話さないんだろうと思っていたら、すぐに部屋から祝日のお菓子を持ってきて黙って手渡してくれた。
アラブ語でありがとうと言うと、黙ってうなずいて部屋に戻っていった。
シブイなぁ。
街にでて露店の兄ちゃんに「ここを出て南に向かうよ。両替もお土産デパートでできたし。」と伝える。
「そう。お金は本当に大丈夫?もし足りなかったら貸すよ。一体今いくら持ってるの?」と厳しい顔で聞いてくる。
どうやら両替できないから金がないと思われていたのではなく、本当の貧乏ツーリストだと思われていたらしい(笑)
「夕べは朝の5時までビールを飲みまくって眠いよ。悪いけど今日は一人で夕飯食べてくれる?明日は大丈夫だから。」
「全然心配ないよ。でも明日はもうここにいないから。」
また帰りにお店に顔を見せる約束をして買い物に行く。
彼のお勧めのアラブCDを数枚購入。読めないけどアラブ語で書いてくれた紙を見せる。
これ以上は払っちゃだめだと2.5D(ディナール。250円弱)と1枚の値段も書いてくれていたので、お店の人はふっかけることもできず
むすっとしてお金を受け取る(笑)
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スース5
夜は露店の兄ちゃんがお店を閉めてから夕飯に連れて行ってくれた。
近所の食堂に入って注文。「何食べる?」「何でも!」
出てきたのはオドロオドロしい緑色のスープのようなお皿とケバブという焼肉のプレート。
「これ何?」「モロヘイヤだよ」
あー見た目ほうれん草みたいな葉っぱね。最近日本でも売られているのを見るね。
こんな風にスープ状にするんだ。お肉も入っている。
とてもネバネバしていて、パンに付けてたべる。
見た目の毒々しさとは反対においしい♪
兄ちゃんはとても線が細いのに、あまり食べない。
「細いんだからもっとたくさん食べないと。」「デブになりたくないんだよ」
ふーん。細い方がいいのかぁ。結局、二人で半分ほどを食べるのがやっとだった。
食べ終わると手を洗う。
食堂には必ず手を洗うための洗面台がある。この国では肉でも魚でも手で食べるのがおいしい。
お会計で財布を取り出すと、兄ちゃんはギロッとにらんで「何出してるの?君が払う必要はない」
といって払ってくれた。
「いやおごってもらう理由ないし。払うお金もあるよ。」
多分、昼間に祝日で銀行が閉まってて両替ができないから困ると私が言ったのを覚えていたに
違いない。
「もし払ったりしたらもう口きかないから。」
そこまで言われては、素直にご馳走になるしかないでしょ。
こういった国では仲良くなってもお会計はよろしくね、と金持ちツーリストが払って当たり前、
という雰囲気が常にあるので、これにはちょっと驚いた。
お茶はどこでも喜んでご馳走になるけど、外での食事はちょっと申し訳ないと思ってしまう。
彼には「チュニジアの九州男児」というキャッチフレーズを密かに付けた。
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スース4
ホテルの隣の部屋はアルジェリアから来たというふとっちょのおじさん。
いつもデカパン一丁でウロウロしている(笑)
「コーヒー飲むかい?」といつもフレンドリー。
反対隣は国籍はわからないけど、もうちょっと若いアラブ人。
携帯が手放せないタイプらしい。
夕べも夜中から明け方まで元気いっぱいの声で話していた(苦)
昼間もテラスの階段に座ってしゃべっている。
スーク(迷路のような旧市街)に出ると、あちこちで爆竹が鳴る。
店も閉まっている所が多いのでのんびりと散歩しながら街並みの写真を撮っていたら
10m後ろで「バン!バン!バン!」
驚いて首をすくめると、若造達がしてやったりと笑う。絶対わざとだ。くそー。
その時、「お~い」と誰かが私の名前を呼ぶ。
振り返ると、道のずっと先で昨日の露店の兄ちゃんが店をだしていた。
写真を撮り終えて挨拶に行くと、座れ座れと椅子を2脚並べてお茶の出前をとってくれた。
「昼間は広場じゃなくてこっちに店をだしてるんだ」
チュニジアのお茶は、紅茶にミントを入れたミントティだけど、
日本で飲むミントティとは味が違う。
初めて飲んだけどおいしい♪
「断食が終わって今日から3日間の祝日が始まったから、あちこちで爆竹を鳴らしているんだよ」
そうだったのか。
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スース3
陽が落ちて、断食明けの食事の時間になると街はどこも店を閉めて
ゴーストタウンのように閑散とする。
あぁ、みんな家で、家族や仲間とワイワイ楽しく食べているんだろうなぁ。
来たばっかりだと、まだウチにいらっしゃいとも言われずつまらない。
ふと、昼間の人ごみと正反対のガランとした街を写真に撮ろうと思って広場に出た。
広場近くにサングラスと腕時計の露店。
こんな時まで働いているなんて!日本人じゃあるまいし。
通りすがりに店のお兄さんが話しかけてきた。お、英語話せるじゃないの。
とにかく、この国に来て以来、言葉が通じるというだけで嬉しくなってしまう。
まともに話相手になってくれるツーリストはめずらしい、と言って長話になった。
んー、この国の旅行者ってほとんどヨーロッパ人だからね。
白人ってなんであんなに上から目線なんだろ。いくら旧宗主国ったって。
日本人は偏見に鈍感な分、差別意識もあまりない気がする。
戦争未体験の自分世代にとっては。
腕時計は2.5~3Dで日本から、サングラスは2Dで中国から仕入れてそれを
5~10Dで売るんだそうだ。
厳しい商売だな。いつもお店の人と仲良くなると、大して売れてないのを見て
旅行者から少しでもボラないと食べていけないよなぁ、なんて思ってもう値切れなくなる。
アメリカってアラブ人にとっては最悪、って話をしてるところに白人ツーリストが通りかかった所で別れた。
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**ニース2*************************************************************************************
夕べの洗濯物を干してから、メディナへ。
ホテルから適当な方向に行ったら野菜や魚などのスークにでた。
今日はラマダン最終日。大晦日みたいなもの。
明日から数日間はお正月と同じ、祝日に入る。
ラマダン後の祝日に備えて、スークも大晦日のアメ横状態になっている。
とんでもない地元民の人出のエリアをなんとか抜け出し、観光客向けの土産屋エリアに出た。
こちらは閉まってる店もあり、観光客もあまりいなくて寂しいくらい。
ヒマなので、土産屋の英語の話せるお兄さんとしゃべる。
彼も明日からスファックスという街に帰って祝日を家族と過ごすんだそうだ。
今夜コーヒーを飲みに行かない?と言うのでインシャッラー(神の思し召しがあれば)って答えたら
「ノー!ちゃんと決めないとダメだよ」だって。
驚いた。モロッコでは何でもそれでよかったのに、まともに約束しようとするなんて。
そー言えば電車も時間通りだったもんね。
強引なお兄さんだけど底抜けに明るいので許してしまう。それに私の友達によく似てる(笑)
ここは近くの町から出稼ぎ?に来てる若者が多そうだ。
スース到着
列車は2等でも革張りで意外と高級感がある。
冷房が効きすぎていて寒い。
スースに到着。隣の男は私の荷物を網棚から降ろすとさっさと消えてしまった。
ありがとうと言ったけど無反応(苦笑)でも思ったより冷たい人ではないのかも。
それにしても、時刻表通りに発着するのに心底驚いた。
駅をでて、驚いたこと。
客引きが、いない(笑)
えー。マジで!?大抵、観光で食っているような国は駅やバスステーションでは
ホテルや旅行会社の客引きが、てぐすね引いて待ってるものなんですが。
仕方ないのでガイドブックの地図を頼りにメディナへ向かう。
広場でマーケットをやっていて、日用品やら服やら、すごい露天の数とすごい人出。
大きな荷物が邪魔だけど、ここを突っ切らないと中に入れないので突入。*
目星をつけた安宿へ。
そこは、メディナの中の土産屋と土産屋の細長い階段の上にあった。
これまた荷物を持っていくのが・・・(苦)
この旅が終わる頃にはかなり腕力がついていることだろう。
レセプションのおじさんはとても愛想がいい。
部屋はベッドだけで洗面台も共同だけど、ドアを開けると屋根がないので
気持ちいい。*
それにテラスに上がれば洗濯物が干せる。これ、めちゃ大事。
とても気に入ったので、数日ここにいようと思う。
(アイシェさんの寄稿は今後長期間いただけそうなのでいったんここで中断して私の「中米」編を次回から掲載します。今後はアイシェの寄稿と交互に掲載していきます。)
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(前回の続きです)
「ここだよ」
サラリーマン風の男の隣が空いていた。
少年が一言何か言うと男は黙って私の荷物を網棚に乗せた。
自分じゃ持ち上げられないけど、置いて置くほどのスペースもない。
何故か男は窓側に座っていたのに私に奥に座れと合図する。
「ありがとう」と少年に言って座った。
通路側に座った男はフランス語の新聞を読み始めた。
都会だなぁとまた思う。
旅行者に興味を持って話しかける人はいないし、さっきの少年だって周りと比較して
ちょっと汚い格好に見えるだけで、小汚い格好の私といい勝負だ。
アフリカの中で5番目に裕福な国だと聞いたけど、確かにそのようだ。
発車時刻までの間、外を眺めながらぼーっとそんなことを思っていた。
すると、さっきの少年が駅の職員らしい制服のおじさんに首根っこをつかまれてやってきた。
おじさんは大きな声で何か少年にわめいている。
ハムサディナール。その言葉だけ聞き取れた。
身振りでこの人にお金を返せと言っているらしい。
どうしてわかったの?どうして金額まで知ってるの?
誰かが見てて職員に連絡したんだろうか。
それとも彼がドジってウロウロしてるところを見つかってしまったんだろうか。
嫌々払ったわけでもなく、まして脅されたわけでもなく、彼に報酬として
私が支払いたい分をあげたんだから何も問題ないのに。
席をみつけてあげるってだけのことだけど、誰かが私という存在を認めて
話しかけてくれた、お金のためでも自分の為に働いてくれたってことが嬉しかった。
英語が通じるかわからなかったけど
「OKなのよ。彼は返さなくていいの。ノープロブレム。」
と言ってもおじさんは
「だめだ!ほら早く返せ!」
と少年を乱暴にせかす。
少年は返せというおじさんと、いらないという私の間で、どうしようといった表情だったけど
おじさんのすごい剣幕に押されてポケットからコインをだして私に渡した。
私はため息をついてしょうがないね、という顔で受け取った。
コインは暖かかった。
二人が去って、なんだか悲しくなってしまった。
あぁ、言葉が通じたらちゃんと説明できたのに。彼はお金を返さなくて済んだのに。
貧しい人を助けるのがイスラムの教えじゃないの?
それとも少年は貧しい振りをしてわざわざ列車の中でカモを探しているの?
別にそれでもいいじゃん。
社会的弱者に対してこうも冷たいところを見せられて、とても気持ちが落ち込んだ。
何故?で頭の中がいっぱいだった。チュニジアだってイスラム国なのに。アラブなのに。
職員は、外国人ツーリストに快適に旅行をしてもらう為に正しいと思ってそうしたんだろうと思う。
でも、これじゃホームレスの寝床を奪う為に新宿の地下道に人の金でつまらないオブジェを
作る日本と同じじゃない。
隣の男は、通路側だから無関係ながらやりとりの間にいたのに表情も変えず、
終始何も聞こえない、見えないという態度だった。
なんなんだこの国は。
私は少年の顔を思い浮かべながら暖かいコインを握って窓の外を眺めていた。
もうすぐ発車の時間だ、という頃、ひょっこり少年が現れた。
私の席より少し先にたって他を見ている。チラとこちらを見て様子を伺うので(笑)、
目でおいで、と合図するとこっちにやってきた。
嬉しくて笑顔でずっと握っていたコインを差し出す。
それをすばやく受け取ると彼はニヤッとしてすばやく消えていった。
あーよかった。
これでまた楽しい気持ちで旅が続けられる。
少年はコインを暖かい、と感じてくれただろうか。
一気に気持ちが晴れて、神様にありがとうと言った。
列車は定刻ぴったりに発車した。
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(アイシェさんのチュニジア2日目です。今回は少し長いので2回に分けます)
2日目
翌朝ホテルを出て、ガイドブックの地図を見ながら鉄道の駅へ。
夕べもtaxiの中から眺めて思ったけど、街並みがまるでフランス。
とってもきれいだし、歩道も車道も広い。
人々は都会人らしく忙しそうで足早だ。
誰も東洋からの旅行者になんて目もくれない。
駅で並んで切符を買い、ホームへ。
みんな好き勝手に立っている。
予定時刻20分ほど前に列車が静かにゆっくり入ってくる。ドアは新幹線のように車両の前後しかない。
ファーストクラスとセカンドクラスがあり、車両に大きく1とか2と書いてあるので判り易くていい。
もちろんセカンドクラスの切符を買ってある。
並んでいないので、自分が入るドアを決めると列車が止まる前からドアに群がりつつ歩く。
ドアが開くと何事かという勢いで我先に乗り込む。
ドアは新幹線のドアと同じくらいの幅しかないのに乗る人も降りる人同時なもんだからぐっちゃぐっちゃ(笑)
よっぽど時間かかるやんけ。 アホか、と見ててあきれる。
もしかして列に並んで順序よく、というのは世界的に少数派なのかもしれない。
ドアがすいてから乗り込む。
ステップはとても狭くて、高さも結構ある。
重い荷物を持ち上げるのに一苦労。
お年寄りはどうやって乗るんだろう・・・
ほとんどの席は埋まっている。 一車両通ったけどいっぱいで、デッキでため息。
人の視線にまだ慣れてない(笑)
自分は部外者だと実感する。 ジロジロ見られることに疲れてしまう。
大抵こういう国の人は視線に遠慮がないし、目が合ってきまり悪く目をそらすということもしない。
ほんの2時間だし、ここで景色を眺めてるのも一人でゆっくりできていいかな。
と荷物を端によせていると、少年がやってきて「席がないの?」と英語で話しかけてきた。
おっこんな子供が英語を話すなんて。 小学校中学年くらいか。利発そうな顔をしている。
服は薄汚れている。きっと列車に乗るんじゃないんだろう。「ファーストクラス?セカンドクラス?探してきてやるよ。」と2等車に消えていった。
少しすると戻ってきた。
「君の席あったよ」
「ありがとう」
「マネー」きたな~。
この国で初めてのお金の要求。健康な子供にタダではお金はあげないけど、仕事に対しての報酬は払いますよ。
子供にとってはかなりの高額なコインをあげる。
「もっと。」
「だめ。これで十分でしょ。」
「だってファミリーのために必要なんだ」でたぁ~~家族が・・・って定番のセリフ。
「じゃいいよ。」と去ろうとするので待てと腕をつかんで「十分すぎる分あげたよ。 席に案内して」
と言うと、ニヤッと笑って「OK」と荷物を持って先導してくれた。
(長くなるのでここでいったん中断し次回へ。ここからの展開がまた面白いのですが。しかも最後にはオチまでも。やっぱりパックツアーではこのような楽しみが少ないですよね)