採集生活

お菓子作り、ジャム作り、料理などについての記録

漆器の修理

2014-10-03 | +食べるもの以外

だいぶ前のことですが、福井の母方の実家のお下がりということで、蒔絵のお椀を貰いました。


「紙がすごいから見てごらん」 という母からの連絡。
包み紙を広げてみると・・・ 

Lacquerware_repair

上質な薄紙は、なんと、戸籍謄本の紙でした。
大正13年の、えー、何月だ?

昔は謄本ってこんないい紙に、毛筆だったのですね!!!!
福井は和紙の産地だからかしら。それとも日本全国同じなのかな。
そして、役所の人が謄本の依頼が出るたびに手書きしていたということですよね?
達筆な人でないと公務員になれないのだわ・・・。
(謄本に書かれた人物は祖母の関係者(つまり私のご先祖?)のはずなのですが、達筆すぎて読めませんでした・・)

 

Lacquerware_repair

中味はこちら。
ふたつきの豪華なお椀4客です(ミがないものが一客)。
やや立体的な塗り方ですが、高蒔絵というのでしたっけ(高蒔絵はもっとこんもりしているもの?)。

Lacquerware_repair

やや曇った色合いは古風ということで味のうちですが、使うには少々問題が。
金の縁取り部分のあちらこちらが、こんな風にはげているのです。 

Lacquerware_repair

縁の部分は欠けが多いです。

Lacquerware_repair

ここなどは、かなり深い傷。
だいぶえぐれていて、木地が露出しているかも?

Lacquerware_repair

小さな欠けがあちこち。 

Lacquerware_repair

大きめの欠けも。

Lacquerware_repair

もう少しで2つの欠けがつながってしまいそう。

瀬戸物の欠けたものは、危険がなければ気にせず使ってしまいますが(片付け本ではこれはダメな行動。捨てなさい、だそうです)、漆の場合は漆の傷みが進んでしまったり、最悪芯の木材が腐ってしまう可能性もあります。 
なので使わずにしまってありました。 


折角綺麗なお椀なのに、しまっておくしかできないのは勿体ないです。
片付け本を読んでいると「修理する予定のない電気製品が納戸にありませんか?」などというお説教が書いてあるし。

漆は修理出来ると聞いたことがあります。
他にも大分古くなったお椀があるので、一緒にまとめて問い合わせてみることにします。

Lacquerware_repair

他、というのはこちら。
合鹿椀というのかな?大きめのお椀です。
知人に「結婚祝いに何がいい?」と聞かれて私がリクエストして頂いたものです。 

Lacquerware_repair

赤と黒のセット。
木目を残した拭き漆仕上げのものです。
具沢山汁物や炊き込みご飯、ちらし寿司などに重宝で、××年間、毎日のようによく使いました。
黒いお椀は漆がすり減って、うっすら下の赤が透けて見える程に。


ネットで漆器修理を受け付けてくれそうなところを探し、いくつか問い合わせしてみた結果、山久漆工というところにお願いすることにしました。
各社から正確な見積もりを出してもらった訳ではなく、箇条書き形式の私の質問に、箇条書きに従って丁寧に回答して下さった、というのが理由です。
おそらく技術レベルはどこも問題ないでしょうし、お値段もそれほどは違わないと思いますので、素人の質問に丁寧に答えてくださる、相談しやすい方がいらっしゃるところに決めました。

写真を見せて相談したところ、結婚祝いの赤と黒の方は、拭き漆仕上げの上からまたたっぷり漆を塗って、つるりと滑らかなお椀に塗り直すことになり、かなり高い修理代になるとのこと(漆のお椀を一個まるまる塗り上げるくらいの手間かも?)。
迷いましたが、修理は諦めることにしました。
これにさようならして、結婚××年記念に、また新しいものを買うのも楽しみですよね。


祖母のお下がりの方は、実物を送って見て頂いた結果、
・縁金
蓋と親の内側
という項目で修理をお願いしました。

所要期間はおよそ3ヶ月・・・。ほよ。忘れてしまいそう・・・


そういえば?とふと思い返した折りに、丁度修理が終わって帰ってきました。
 

Lacquerware_repair

おやま。
修理に出す際はキッチンペーパーとお椀を重ねてプチプチでくるんでまとめて送ったのですが(例の和紙の謄本は手許にとっておいた)、綺麗な箱に一客ずつ入れて下さっています。
包み方が丁寧で、出すのがためらわれるほど。
(このあと再度包んで入れ直したらやっぱりグシャっとなってしまってこんな風には戻らなかった・・・・) 

Lacquerware_repair

わーお!

みなさんエステ帰りみたい。
つやぴかしています。 

Lacquerware_repair


縁の金色はツルリとなめらかで、どこが欠けていたのか分からない程。 

Lacquerware_repair

蓋と親の内側は塗り直してありますので、つやつや・てりてりです。 

Lacquerware_repair

蓋の外側は模様があって塗れません。
親の外側は塗れないことはないですが、もし塗ると蓋の外側と違う色になってしまうので今回は塗らないことにしました。でも、綺麗に洗って下さったのかな、前よりつややかです。

親指のちょっと先あたり、傷があった部分をレタッチして下さったのかな?という部分がありました。
(前からかも。よく分からないです)
 

Lacquerware_repair

金粉がかすかに残っているところが。
このあたりの縁を直したのかしら? 

Lacquerware_repair

一客3500円、蓋のみのものは2500円、合計18000円ちょっと、という金額でした。
とても綺麗になって使っても問題ない状態になり、また日本の伝統工芸の丁寧さの一端を実感出来て、直してよかったと思います。

折角のお椀ですので、食器棚に置いて、時々は使おうと思います。
 


●業務連絡:お母さんへ
お正月にお雑煮用に使いますか?持っていきますけど。


■参考情報
漆器修理の相談にのって貰えるところ。
たまたま調べた結果ですが、福井県鯖江市に工房が多いようです。(他の地域にもあると思います)

(1) 山久漆工 福井本社
916-1222 福井県鯖江市河和田町20-4-6
TEL 0778-65-0101   FAX 0778-65-2373
URL http://www.yamakyu-urushi.co.jp
SHOP http://www.rakuten.co.jp/kasane
▼お直しご依頼~完成までの流れ
http://www.yamakyu-urushi.co.jp/custom/
今回お願いしたところです。

(2)くらしを彩る「雅乃」
(株)山崎器商会 
〒916-1114 福井県鯖江市磯部町6-9
TEL 0778-65-0500 FAX 0778-65-0490
URL http://www.yamazaki-j.co.jp/

(3)株式会社ヒロセ
〒916-1223福井県鯖江市片山町6-1
TEL 0778-65-0103
FAX 0778-65-2030
器修理サイト http://shikki-shuuri.jp/

(4)藤井工芸株式会社
東京都足立区足立1-29-18
TEL  03-3848-2141
FAX  03-3889-3227
URL   http://j-fujii.com

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10 コメント

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謄本記載事項の解読です (Yozakura)
2014-10-04 10:02:30
採集生活さま:初めまして

 「達筆過ぎて読めなかった」とありますので、実に余計な御世話ですが、このブログの掲載部分だけ勝手に謄本を解読しました。(  )内の記述は、写真には映っていない部分を、前後の文脈から推察したものです。
 ご関心無ければ、削除なさって下さい。

《謄本原本の末尾3行》

 右謄本ハ戸籍原本ト相違(無キ事ヲ認ム)
 大正拾参年壹月(x日)
 今立郡庁

 多分、上記の通りでしょう。「壹」とは、「壱」の繁体字であり、漢数字の誤読や誤用を防止する為に使用されます。
 それにしても上等な和紙ですね。90年も前の製品とは信じられない品質です。凄い!
 お元気で。 
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素晴らしい! (サクマ)
2014-10-04 13:48:52
直していただけたことも素晴らしいけれど、「欠けているから」と見捨てなかったFujikaさんも素晴らしい!
本当に「エステ帰り」という雰囲気ですね。なんだか今すぐ実家に駆けつけ、納戸を探索したくなりました。こういうの、きっと眠っていると思うのです。

謄本も、解読してもらえちゃって、よかったですね!読者の私ですら、もやもや感が晴れ、すっきり致しました。
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懐かしい話 (母より)
2014-10-06 10:44:14
漆器のこと、忘れていましたが、直してくださったのが河和田町と聞いてびっくりです。うちのおばばちゃんは河和田村の出でした。偶然?業者の方も古い河和田塗りを見てうれしく思ってくださったのではないかしら。戸籍謄本についてですが、明治元年生まれだったおばばちゃんは、大正13年には58歳、娘はたぶん17、息子は13歳。一体何のために取り寄せたのでしょうね。でも手元に残っているということは結局使わなかったということですね。
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はじめまして☆ (●Yozakuraさま~Fujika)
2014-10-06 16:34:24
はじめまして☆
解読ありがとうございます!
ブログをやっていると時々こうやって天使のように教えて下さる方があらわれて、感激です。
毛筆の古い文字と和紙にお詳しいということは、Yozakuraさんは、書道をされているのか、もしくは古文書(日本史)がご専攻でしょうか。すごい~。
何はともあれ、ありがとうございました!!
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捜してみて~ (●サクマさま~Fujika)
2014-10-06 16:42:59
ご実家に、きっとありますよね。
しかも、欠けていないものがあるのではないでしょうか。
ステキなものが出てきたら、是非(写真で)見せて下さいませ~。

「壱」でも滅多に見かけないのに、更に古い「壹」があったとは知りませんでした。
天使か魔法使いがいて、時折、しゃらりーん、と謎を解いてもらっているようです。
(以前、お菓子のラベルのポーランド語のときも天使があらわれました)
http://blog.goo.ne.jp/fujika_0000/e/1e5e3c8c850fb37fa22f76bed474f99f
返信する
里帰り (●お母さんへ)
2014-10-06 16:47:38
福井の会社なので、ざっくりと、里帰りだな~とは思っていましたが、なんと、町までおなじところでしたか。
縁があってよかったです。

謄本の紙は90年も前とは思えないですよね。数枚あったのでどれもとってあります。
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再生は楽しい (KOH)
2014-10-10 08:29:39
直して使うのは楽しいですよね。
私はせいぜいパソコンやゲーム機くらいですが…。

そういえば、国産の漆で直してくれるところがありますよ。
http://waurusi.sblo.jp/
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修理は魔法みたい (●KOHさま~Fujika)
2014-10-14 21:50:33
私はもっぱら(壁とか)壊すだけで、直せるものはほとんどないです。
車を直して売る『名車再生』という番組はご存じですか?
私は全く車に興味はないのですが、直す様子が面白くてこの番組は大好きです。魔法みたい。
家具とかPCとか、他にも修理のTV番組があったらいいのにな。

国産漆の情報ありがとうございます。
古い寺社建築の建具など、国産漆でないと耐久性が数段劣ると聞いたことがあります。
今回は、里帰り修理でそれはそれでよかったのですが、新しい大きめお椀が欲しいな、と思っているので、こちらのネットショップをじっくり見ているところです。
どこかのデパート出店などで手にとって見られたらいいなあ・・。
返信する
他にも、130年前の和紙による書簡の画像あり (Yozakura)
2014-10-22 17:15:47
採集生活さま
 「余計な御世話かな?」と懸念しつつ投稿したのですが、御好評を戴いた模様で何よりです。で、またまた余計な御世話で恐縮です。

 ネット上の某所に、130年前の書簡が展示されている場所があります。文豪が、後輩に送った日常書簡の一部ですが、手紙の用紙や封筒も鮮明に読みとれます。
 御関心のある向きは、以下の要素で検索なさってみて下さい。用心のため、連結先は表記しません。

[ベルリン中央駅、山根寿代さんのこと(3) - 森鴎外からの手紙 -] 

 およそ130年ほど前に取り交わされた書簡でしょう。和紙の品質は抜群ですね。お元気で。
返信する
現代の文豪は・・ (●Yozakuraさま~Fujika)
2014-10-23 16:24:45
森鴎外の直筆書簡、カッコイイですね!
ハガキにも収まりそうな文章の量ですが、(おそらく)大きな字でサラサラっと和紙に書くお手紙、いいものですね。
手紙に使われている和紙にも、全然古さを感じませんね。

現代の文豪の手紙は、おそらくほとんどEメールになってしまっていて、書簡という形で後世に残すのは難しいかもしれませんね。内容は残るとは思いますが。
返信する

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