熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

個人投資家説明会(ミレアH)・・・対極のライブドア狂想曲

2006年01月19日 | 政治・経済・社会
   今日、帝国ホテルで、ノムラIR主催で、ミレアホールディングスの個人投資家説明会が、行われたので聴講した。
   石原邦夫取締役社長から「ミレアグループの現状と新中期計画」、そして、東京海上日動あんしん生命(株)の太田資暁取締役社長から「あんしん生命の成長戦略」についての説明があり、質疑応答を含めて1時間半で終了した。

   ミレアグループの長期目標は、業績の浮沈の激しい国内損保事業の比率を下げて、国内生保事業、金融及び一般事業、海外保険事業等の拡大に注力して保険のステージを拡大し、修正利益を約3倍にしてROEを8%以上にして世界トップクラスの保険グループを目指すことだと言う。
   成長性、収益性、健全性といった面で世界のトップクラスの保険グループを目指して、各ステイクホールダーに対して価値を提供し、社会的責任を果たし、ともに永続的に発展する会社を目指すことによって、株主にとって中長期的な企業価値の最大化を目指す、のだと言うのである。
   極めて真面目な個人投資家説明会であった。

   最近、大和やいちよし等の証券会社や金融関連、それに日経やロイターなどメディアも含めてあっちこっちで個人投資家説明会が開かれていて盛況であるが、各社、まちまちで個性が出ていて面白い。
   ノムラは、ドコモやミレアと言った優良な大企業のIRに力を入れているが、日経等は、東証1部からマザーズ等まちまちだが、東京IPOやブリッジサロン等は比較的新規上場の会社のIRが多いとか、特色があり、問題のライブドアなどのIR説明会を聞いたことがある。
   株式投資の参考として聞くのではなく、新規事業の立ち上げや優良企業の事業モデル等経営コンサルタントの仕事の参考にと思って聞いているのである。
レッドオーシャンと言うかオールドエコノミーと言うか伝統ある優良企業が、何故、あれほど業績が悪くて株価が低く、即ち、企業価値が低いのか、逆に、ニッチを追い求めたり、ブルーオーシャンの新規事業に船出したベンチャー志向の企業が、何故、あれほど成績が良いのか、教えられることが多い。

   ところで、ライブドア問題で引き金を引かれて、日本の株式市場が世界の非難を浴びているが、根本的な問題は、グローバル化した金融市場に対応するインフラも含めて株式市場システムの整備がなされていなかったことで、リスク管理意識の極端な欠如であろうか。
東証のIT関連トラブルは連続しており、不可抗力でもないのに市場を閉鎖するなど言語道断で、国際証券市場としての資格も能力も有していないことを示している。
   
   ライブドアの錬金術について非難されている。偽計取引、風説の流布、株式分割、粉飾決算などで株価を吊り上げて時価総額による企業価値を増して更にM&Aで成長拡大を計って来たことが。
   アメリカの場合は、ITバブルによって株価が異常に高騰して時価総額が巨大化したIT関連企業が、株式交換によって積極的にM&Aを繰り返して巨大企業化した例があった。
これは、バブルだが、しかし、ライブドアの場合は、故意に株価を吊り上げようと画策して、これに煽られた一般投資家人気に支えられて巨大化してきた。
   実態が脆弱な会社でこんなことが永遠に続くわけがないので結局粉飾に粉飾を重ねる等違法行為を続けざるを得なくなる。
これは、エンロンやワールドコム等アメリカでの証券不祥事で十分経験済みであり、日本には、アメリカで、とうの昔に終わっていたはずのITバブルがまだ残っていたと言うだけの話である。
   それに、実態が進みすぎていて、法体系の未整備が呼応して、更に事態が悪化してしまった。
   金儲けの為には違法行為すれすれ何をやっても良いと言ったライブドアの幹部のモラル欠如は御し難く、結局違法行為に踏み込んでしまったのだが、コーポレート・ガバナンスの欠如、中でも、コンプライアンスの欠如は酷すぎる。
   しかし、太平天国、安閑としていた日本の経済社会に一石を投じてイノベイティブな新しい波を起こしたライブドアの働きと言うか、動きについては、私は認めており、この波動は大切にすべきであると思っている。

   根本的な問題は、日本の法制度であろう。
   早稲田の上村達男教授が何時も言われているように、遵法精神希薄で話し合い優先の旧態已然たる日本社会に、ジョン・ウエインやピストルや保安官等の必要な恐いアメリカのような制度を導入・整備することなく、商法や証取法等法律だけを変えて近代化(?)を推し進めようとした日本の貧弱な司法・法体制に根本的な問題があるのではなかろうか。
   少なくとも、後追いでも、アメリカでエンロン直後にSOX法が施行されたように、迅速な対応が必須であろうと思っている。

   もう一つの問題は、経過せざるを得ない過程かも知れないが、一般個人投資家の対応で、今回の株価暴落と取引停止のために、信用取引で株取引をしていた個人投資家の損失が膨らんだと聞く。
   現実は、もう既に、株式市場の、特に個人投資家部門では、ミニバブルが始まっているのではなかろうか。
   「ヘッジファンドで増やす時代」などと言う本が売れていて、デリバティブや外為の証拠金取引がポピュラーになるなど、今後レバレッジを利かせて実力以上の取引をする素人の投資家が増えてきて、今回のライブドア問題のような事件が発生すると株価が乱高下して収拾がつかなくなる。
   「質」の良い所は質草が限度であること、歯止めがある。しかし、元も子も損する投機は、底がない。
   
   カジノなどでのギャンブルは、欧米の場合は、負けっぷりが如何に立派かで評価されると言う。
イギリスのアスコットやケンタッキーのダービーでも、金儲けなどではなくスポーツとしての競馬を楽しむと言う。
   日本の場合は、賭けと言うと、丁半の世界で、まだまだ暗いイメージが付きまとう。
   個人投資家の活況は、日本経済にとっては良い事かもしれないが、煽るだけではなく健全な株式投資の教育も望まれる所であろうか。
コメント
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