熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

日産のグローバル人材育成・・・志賀俊之COO

2006年01月28日 | 経営・ビジネス
   日経産業新聞主催、ヘイコンサルティング グループ協賛で、「グローバル時代の人材マネジメント~今、企業に求められるリーダーシップ育成~」と言うフォーラムが開催されて、日産自動車の志賀COOが、「グローバル時代の人材育成マネジメント」と言う演題で講演を行ったので聴講した。

   講演を聴いた最初の印象は、カルロス・ゴーンCEOが、パリに行き、日産の経営から少し距離を置いてから、多少企業経営が集団指導性に変わったのではないかと言うことであった。

   ところで、志賀COOは、日産の経営および人材育成について多くを語ったが、自身が指摘したように、カルロス・ゴーン氏が、「30歳でブラジル・ミシュランの社長になって以来、ずっと経営者を生産している「プロの経営者」」であることで、ゴーン氏が持ち込んだ日産の経営そのものが、グローバル時代の人材を育成したと言うことであろう。
   ゴーンCEOは、世界で最も厳しくて商才に長けたレバシリの血を受けたブラジル人で、フランスの超エリート校ポリテクに入学して、ECOLE DES MINES鉱業高等学院卒と言う最高の教育を受けて、ブラジル・ミシュラン社長でスタートした。
その後、米国に移り、アメリカミシュランの社長として厳しい試練を受けユニロイヤルの買収等完全に業績を建て直し、ルノーに入ってからはベルギー工場の再建等担当するなど、その間に培った最先端を行くグローバルビジネスでの経営手腕は群を抜いており、望み得る最高の経営者として日産にやって来たのである。
   生まれた環境、教育、キャリア、総ての面で、最高の資質を備えた天性のグローバル経営者としてである。

   元々、日本の製造業でも、最高の人材を集めて最高の車を作っていた日産であり、劣悪な経営と大企業病、極端な官僚化等過去の残滓に窒息状態で活路を見出し得なかっただけであったから、経営手法を変換しコーポレートカルチュアを革新すれば一挙に回復の余地は十分にあったのであろう。
   カルロス・ゴーンのたった2時間の社員に告ぐ演説が、日産社員の士気を一気に高揚させたと志賀COOが云っていることからも分かる。

   カルロス・ゴーン氏は、30人のスタッフを連れて来て日産社員の中に同化させてリバイバルプランを始動したと言う。
   日本人の企業文化を大切にしながら、企業目的とターゲットを高らかに歌い上げて最先端を行く経営手法を導入して優秀な日産社員の能力をフル回転させたのである。
   元々、グローバル企業である日産には、世界に通用するグローバル社員を作り出す以外には選択肢はないし、まさに、カルロス・ゴーンの経営そのものが、グローバル・マネジメント人材育成のオン・ザ・ジョブ・トレイニング場だったのである。
   極言すれば、ルノーとの提携は、副産物として、優秀な社員と技術を有する日産に、カルロス・ゴーン・ビジネス・スクールと言う途轍もない資産を持ち込んだのだと言っても過言ではなかろう。

   ところで、志賀COOは、講演で、エクゼクテイブ・リソース・マネジメントの中で、ダイバーシティ(多様性)の重要性を強調していた。
   より高い価値を創造するためには、色々な価値観を持った色々な背景を背負った人々による異質と多様性が重要であること、それが企業の活力を生む。
   このことは、数日前に、イノベーションと経営で触れたメディチ・インパクトに相通じる考え方で、創造性と豊かな発想を生むための基本的な手法であるが、企業社会は、異質をや多様性を排除する強力な力が働く厄介な組織でもある。

   話は飛ぶが、私のグローバル・メネジメント人財の育成についての考え方は、資質のあるΠ(パイ)型人間、即ち、ダブル・メイジャー、少なくとも異質な2つの専門分野の教育を受けた人材(その一つはMBAが望ましい)に、厳しい海外経験と英語力、そして国際感覚を身につけさせることだと思っている。
それに、世界に通用する巾の広い教養人であれば望ましいと思うが、中々大変である。
   もっとも、いくらこのようなスタッフを育成しても、トップ・マネジメントに事の重要性を理解してこれ等の人財を活用する才覚がなければ意味がないと思う。

   当日、商社やメーカーなど日本の有名企業のグローバル人財育成プログラム等について討論されていたが、形だけで実質が何も伴っていないことが良く分かった。
   行き当たりばったり、ぶっつけ本番、と言うところであろうか。
   それなら、今、不況で殆どの会社で辞めてしまっている海外留学制度を復活させて、欧米、そして、進出国の大学院に人材を送り込むことが良いと思う。
   海外のトップクラスの人々と渡り合える人間を育成することである。


   
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