熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

三菱UFJフィナンシャル・グループ株主総会

2010年07月01日 | 経営・ビジネス
   株主総会の集中日だとかで、三菱と三井住友とがかち合ったので、今年も、武道館の三菱UFJの方に出かけた。
   今回は、ベテランの畔柳氏に代わって新任の永易克典社長の司会で始まった。
   第一声の印象は、極めて覇気に欠ける陰気な感じで、慣れてくれば、気にならなくなるのだが、才気煥発でトップを行く金融機関の長とは思えないほど穏やかな議事進行であった。
   時々、当たり障りのない極めて常識的な自分の見解を述べることがあるが、初めてであったからかも知れないが、最初から最後まで、バックに陣取る事務局の指示が手元の机のディスプレイに映し出されるのであろうか、それを見ながら、株主の質問を、総て担当者に振って答えさせており、前任の畔柳前社長とは大分違っていた。

   決議事項は、剰余金処分と取締役16名選任の件の2件だったが、これについては、株主の質問などはなく、また、株主の一般的な質問や意見も、特に、カレントトピックスもとぼしかったので、目だったものはなくて平穏無事であった。
   先約があったので、行員で組合員の株主から雇用条件の改善などを訴える最後の質問が終わったところで、私自身は会場を出た。
   武道館前で、九段下から上がってくる株主に、この組合員たちが、要望書ビラをくわっていたが、労使問題が激しい時ならいざ知らず、この程度のことを事前に、解決できないようなメガバンクであるところに、三菱UFJの陰に篭った経営問題があるのかも知れないと思った。

   しかし、ビラを見ると、主は、誰でも一人でも入れると言う「金融ユニオン」の要望であり、そのビラの裏には、組合員株主の「定時株主総会質問書」が書かれている。
   全国金融産業労働組合と銀行は、団体交渉を行っているが、経営者側から、組合の質問に対して、経営問題について明確な回答が出てこないので、総会時の質問に及んだと言うことらしい。
   問題の焦点は、10年来定例給与の改善がないと言うことで、その論点の大半は、中小企業対策も含めて、日本の左派系政党の主張と殆ど同じである。
   今、選挙戦でも論点のひとつだが、労働分配率が悪化して給与水準が上がらないのが原因で、需要が伸びず日本経済が益々悪くなっていると言う論点と、この20年間、殆ど経済成長がなくて益々日本経済の地盤沈下が進展して、国際競争力の強化の為にも、企業に活力を与えて経済成長を図らねばならないと言う論点との鬩ぎあいでもあろう。
   問題は、この三菱UFJでも開示されたが、畔柳前社長他2名の取締役の報酬が、いつの間にか、1億1千万円まで上がっていると言う現実をどう見るかである。

   さて、三菱UFJの業績だが、前年の連結粗利益と連結当期純利益が、夫々、32,729億円とマイナス2,569億円であったのが、当期のそれらは、夫々、36,004億円と3,887億円で、大幅な回復を見たと言うことだが、自慢出来るような業績では決してない。
   収益向上に貢献したのは、グループ挙げての経費削減と株式相場の好転に伴っての株式等償却が減少したことなどと言うのであるから、積極的な経営努力や経営革新あっての業績アップではなく、また、金融再生法開示債務比率が上昇しており、先行きの明るさは、景気次第で、特に感じられなかった。
   連結自己資本比率及びTier1が、14.87%、10.63%と向上して、世界でも最高水準だと誇るのだが、株主利益を無視して、大幅増資を強行すれば、数値が上がるのは当然である。

   株主から、何故、外銀と比べて、三菱UFJなど日本の銀行の株価が極端に悪いのだと聞かれて、収益力の差だと答えていた。
   日本の長期にわたる異常な低金利水準が収益の足を引っ張っており、また、外銀が、利益が見込める投資銀行業務や海外業務を指向して事業を展開しており、その差が大きいとも答えていた。
   そのために、モルガン・スタンレーとの戦略的提携が、これからの三菱UFJの最大の切り札だと言うのであるが、モルガン・スタンレーのグローバル・ネットワークと先進的な商品開発能力、グローバル・ベースでのM&A指向の投資関連業務などに対するノウハウを、三菱UFJの幅広い顧客ときめ細かいサービスとを結びつけることによって、日本の証券会社などには出来ない投資銀行業務を推進するのだと言うことのようである。

   野村證券も同じようなことを言っていたが、要するに、サブプライム関連で露呈しアメリカ資本主義を破綻させたような投資銀行業務は避けるけれども、それ以外の欧米の投資銀行業務こそが、これからの金融機関の目指すべき道であり、出来るだけ早くこの体制を整えて、one stop shoppingを実現するのだと言うことであろうか。
   気になるのは、このone stopと言う三菱UFJで総て完結すると言うビジネス感覚で、いまだに、グループを挙げての総合力を結集してことに当たろうとする時代錯誤ぶりなのだが、総合なんとかと言う業態が、既に、ICT基調のグローバル経済社会環境下で、破綻齟齬を来たして暗礁に乗り上げているのが、分かっての話であろうか。
   話は違うが、株主から、三菱UFJから投信を買ったが対応が悪すぎたとの苦情が出たのに対して、色々な証券会社の合併直後なので体制が未整備だと答えていたが、能書きと実態の違いを示していて面白い。

   相変わらず、実際の銀行窓口では門前払いされて不満を持っている株主からの苦情が絶えず、今回は、90歳の老人にマンション建設資金を貸し付けて、その損失の穴埋めのために資産を切り売りして返済を続けていて大変苦しんでいると言う例を紙芝居形式でボードを示しながら老人を食い物にしている(?)銀行の実態を訴えていた。
   ところが、驚いたことに、このような苦情トラブルは無数にあって、多数が係争中であり、苦情処理は、ここに届け出て頂けば・・・と言った三菱UFJからの回答があり、銀行にも銀行の言い分があるのだと言うことで、然るべきところで解決しようと言うことらしい。

   他にも、支店を作る時は良い顔をして協力依頼の挨拶をするがゴーストタウンになるとさっさと支店を閉鎖して駅前にATMだけのこすのはケシカランと、千里ニュータウンから来た老人株主が訴えていたが、
   武道館に、何百人と言う三菱UFJの優秀な行員を糾合して立たせて、「ありがとうございました」と挨拶させるだけの人的無駄をするのなら、会場に、2~30人くらいの人材を割いて、臨時のお客様相談・苦情処理室を設置して、株主顧客の「物申す」に対応して貴重な情報を得ると言う多少頭を使った対応が出来ないものだろうかと思っている。

   
   
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