絵画の始祖ギリシャから説き起こした西洋絵画史と言った感じの本だが、非常に、軽快なタッチで語りながら、含蓄のある示唆に富んだ語り口が素晴らしい。
貴重なエポックメーキングな絵画については、その背景なり絵画の作画についても詳しく語っていて参考になるし、面白い。
著者の示唆で最も重要な点は、西洋絵画は、感性で美術を見たり、好きか嫌いか、感動するかしないかで見るのではなく、どの絵画も、古代ギリシャに遡るまで、ある一定のメッセージを伝えるもので、そこには明らかな意図が内在しているので、そのメッセージや意図を正確に読み解かない限り鑑賞できない。と言う指摘である。
そのためには、その時代の歴史、政治、宗教観、思想、社会背景など、膨大な知識が必要となり、それらを総括したのが西洋美術史であるから、欧米人でも現代に生きる人々は、古代や中世の人たちが何を思って生き、どんな価値観を持っていたのか、美術史を学ばないと分からない。と言うのである。
面白いのは、日本の観光客は、「ルーヴルは詰まらなかったが、オルセーは良かった」と言う人が多いが、ルーヴル美術館にあるものは教養がないと理解できない歴史画中心のコレクションだが、オルセー美術館にあるのは教養がなくても楽しめる作品が多い。
無教養を晒すようなものであるから、せめて、やはり、ルーヴルは最高ですわ、と言って、何が好きだと言われたときに、応えられる作品を何か用意して置けと言う。
この点については、私自身、メトロポリタン博物館、ルーヴル博物館、ロンドンやワシントンのナショナルギャラリー、ウフィツィ美術館、エルミタージュ美術館、プラド美術館など多くの欧米の主要美術館を訪れて、絵画鑑賞をしてきたので、痛い程分かっている。
ロンドンに住んでいたので、ペンギンのガイドブックを最初から最後まで読みながら、全館、絵画を一つ一つ見て回ったが、帰ってから、ブリタニカやギリシャ神話や聖書など首っ引きで復習したことがある。
私たち日本人には、馴染みの薄いギリシャ神話やローマ神話、キリスト教は勿論、西洋史の故事来歴など、欧米人の文化文明のバックグラウンドが分かっていなければ、その絵画が、何を描き何を語ろうとしているのかを、理解することが殆ど無理で、その絵画が語り掛ける物語、すなわち、画家の伝えたいメッセージや意図を理解できないと言うことである。
たとえば、最近感じたことだが、ダンテの「神曲」やゲーテの「ファウスト」を読んだだけで、一挙に、西洋絵画鑑賞の裾野が広がり豊かに成る。
著者は、美術のプロになるわけではないので、「その時代のエッセンスを掴む」と言う手法で、かなり、詳しく丁寧に、個々の作品について解説を加えているが、それはそれとして面白いが、要するに、例えば、ギリシャ神話やキリスト教などの基礎知識、教養がなければ、18世紀以前の西洋絵画の鑑賞は、中々、難しいと言うことである。
モナ・リザをはじめとして、蘊蓄を傾けた実に興味深い話が展開されていて、興味が尽きない。
解説を加えた作品106点については、カラー写真が添付されていて分かり易い。
一点だけ、幻想的で怪奇な作品を残したヒエロニムス・ボスについて。
十分な宗教教育を受けた教養豊かな、しかし、厳格な道徳主義者で、悲観主義者。
人間の業や悪業を徹底的に悲観的に描いて、死者の再生などを殆ど描かず殆どは地獄行き、
亡くなった翌年にマルティン・ルターの宗教改革が始まると言う免罪符を売るローマ教会が腐敗の極致。
当時の人文主義者たちはオカルトに興味を持ち、貴族たちはグロテスクな絵画に興味を持ち、ボスは秘密結社のメンバーとしてそれらの富裕層の顧客を掴み、・・・
次のボスの「快楽の園」は、マドリードのプラド美術館で見たが、凄い絵画である。

貴重なエポックメーキングな絵画については、その背景なり絵画の作画についても詳しく語っていて参考になるし、面白い。
著者の示唆で最も重要な点は、西洋絵画は、感性で美術を見たり、好きか嫌いか、感動するかしないかで見るのではなく、どの絵画も、古代ギリシャに遡るまで、ある一定のメッセージを伝えるもので、そこには明らかな意図が内在しているので、そのメッセージや意図を正確に読み解かない限り鑑賞できない。と言う指摘である。
そのためには、その時代の歴史、政治、宗教観、思想、社会背景など、膨大な知識が必要となり、それらを総括したのが西洋美術史であるから、欧米人でも現代に生きる人々は、古代や中世の人たちが何を思って生き、どんな価値観を持っていたのか、美術史を学ばないと分からない。と言うのである。
面白いのは、日本の観光客は、「ルーヴルは詰まらなかったが、オルセーは良かった」と言う人が多いが、ルーヴル美術館にあるものは教養がないと理解できない歴史画中心のコレクションだが、オルセー美術館にあるのは教養がなくても楽しめる作品が多い。
無教養を晒すようなものであるから、せめて、やはり、ルーヴルは最高ですわ、と言って、何が好きだと言われたときに、応えられる作品を何か用意して置けと言う。
この点については、私自身、メトロポリタン博物館、ルーヴル博物館、ロンドンやワシントンのナショナルギャラリー、ウフィツィ美術館、エルミタージュ美術館、プラド美術館など多くの欧米の主要美術館を訪れて、絵画鑑賞をしてきたので、痛い程分かっている。
ロンドンに住んでいたので、ペンギンのガイドブックを最初から最後まで読みながら、全館、絵画を一つ一つ見て回ったが、帰ってから、ブリタニカやギリシャ神話や聖書など首っ引きで復習したことがある。
私たち日本人には、馴染みの薄いギリシャ神話やローマ神話、キリスト教は勿論、西洋史の故事来歴など、欧米人の文化文明のバックグラウンドが分かっていなければ、その絵画が、何を描き何を語ろうとしているのかを、理解することが殆ど無理で、その絵画が語り掛ける物語、すなわち、画家の伝えたいメッセージや意図を理解できないと言うことである。
たとえば、最近感じたことだが、ダンテの「神曲」やゲーテの「ファウスト」を読んだだけで、一挙に、西洋絵画鑑賞の裾野が広がり豊かに成る。
著者は、美術のプロになるわけではないので、「その時代のエッセンスを掴む」と言う手法で、かなり、詳しく丁寧に、個々の作品について解説を加えているが、それはそれとして面白いが、要するに、例えば、ギリシャ神話やキリスト教などの基礎知識、教養がなければ、18世紀以前の西洋絵画の鑑賞は、中々、難しいと言うことである。
モナ・リザをはじめとして、蘊蓄を傾けた実に興味深い話が展開されていて、興味が尽きない。
解説を加えた作品106点については、カラー写真が添付されていて分かり易い。
一点だけ、幻想的で怪奇な作品を残したヒエロニムス・ボスについて。
十分な宗教教育を受けた教養豊かな、しかし、厳格な道徳主義者で、悲観主義者。
人間の業や悪業を徹底的に悲観的に描いて、死者の再生などを殆ど描かず殆どは地獄行き、
亡くなった翌年にマルティン・ルターの宗教改革が始まると言う免罪符を売るローマ教会が腐敗の極致。
当時の人文主義者たちはオカルトに興味を持ち、貴族たちはグロテスクな絵画に興味を持ち、ボスは秘密結社のメンバーとしてそれらの富裕層の顧客を掴み、・・・
次のボスの「快楽の園」は、マドリードのプラド美術館で見たが、凄い絵画である。
