熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

京都大学からの提言・・・21世紀の日本を考える

2006年03月16日 | 政治・経済・社会
   品川のインターシティ・ホールで、京大の付属研究所・センター主催のシンポジューム「京都からの提言」が、尾池隆之総長の挨拶で始まり、午前中は「危機をいかに乗り切るか?」、午後には「東アジアといかに向き合うか?」と言うテーマで、21世紀の日本について講演とパネルディスカッションが行われた。

   4月に設立の「地域研究統合情報センター」を入れると17の付属研究所・センターとなるようで、国立大学中一番多いと言う。
   私が学生の頃には、既に、人文科学研究所があって、桑原武夫や貝塚茂樹先生の講演やシルクロードの話、それに、基礎物理学研究所では、湯川秀樹や朝永振一郎などの先生方の講演を聞いたが、懐かしい思い出である。
   丁度その頃、恩師の岸本誠二郎教授が、池田勇人総理、水田三喜男蔵相、荒木文相と先輩が3人揃ったのでお願いしたと言って、経済研究所を設立し所長に就任された。
   マル経の強い京大経済学部にとっては、近経の比重が高まった感じであった。
   霊長類研究所の犬山猿センターに行ったり、白浜の水族館など出かけた時には学生証を提示すれば入場させてくれた。

   今日の講演も、他のシンポジュームとは一寸違って、大学の講義調の講演で、久しぶりに百万遍の教室に居る様な錯覚を感じて聞いていた。
   大学の時は、100分授業であったが、いい加減に聞いていたし、授業にも出ずに単位を取った科目が結構あるのだが、最近になって、セミナー通いを続けて勉強していると、学生の時にもっと真面目に授業を受けるべきであった、勉強すべきであったと思って後悔している。

   トップは、川田惠昭防災研究所所長の「首都直下型の被害と減災戦略」。
   先年のスマトラ沖地震の時には、次は日本かアメリカかと言われたようで、東海・東南海・南海地震の後には必ず首都直下型地震が起こり、10年以内に起こる確率は30%で、東京湾北部地震の可能性が高いと言う。
   要は、何時起こっても不思議ではないと言うのである。
   緻密な学問研究の結果を克明に説明しながら、東京では自宅まで歩いて帰宅出来る地図が売れているようだが実際の震災には役に立たないこと、公衆電話が10円玉で満杯になってすぐに使えなくなるがどうするのか、と言った卑近な例から減災対策を木目細かく語っていた。

   次は、佐和隆光経済研究所所長の「日本の「構造改革」――何処をどう変えるべきか」。
   佐和教授は、竹中大臣の市場資本主義の対極にあり厚生経済的な主張を展開し、「市場主義の改革と第三の道改革を同時進行」しなければならないと言う。
   教育による可能性の平等を追求し異端を包含する平等な、そして、排除される者の居ない福祉の充実した社会、即ち、平等な福祉社会を作らなければならないと強調する。
   高度なIT技術が産業のエンジンとなり、ソフトウエアが中心となるポスト産業社会においては、ユートピアは存在しないと言って講演を締めくくったが、小泉内閣の構造改革には問題が多いことを匂わせながら、教授の性格なのか舌鋒温厚な講義であった。

   金文京人文科学研究所所長の講演は、「日・中・韓三国の歴史問題をめぐって」。
   濱下武志東南アジア研究所教授の講演は、「躍動するアジアと21世紀の日本――日本はアジアを越えられるか」。
   カレント・トピックスなので面白いが、流石に学者の研究は深く、歴史の深層から掘り起こして研究していて、巷の評論家の分析が如何に表層的かが分かって興味深かった。
   もう少し、勉強してからこのトピックスはコメントしたいと思っている。

   品川から始めて全国に発信するのだと言う知の集積の総本山からの知の発信、全国の多くの大学も熱心に乗り出したが、この文化活動の将来の発展を期待したい。
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