熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ロシア経済が好調だという

2024年11月23日 | 政治・経済・社会
   ロイターが電子版で、
   コラム:予想外に好調なロシア経済、戦争の「麻薬」が切れるとき By Pierre Brianconを報道した。最近、ほかのメディアでも、ウクライナ戦争や欧米諸国の経済制裁など逆風に曝されながらも、順調に推移しているというニュースを報じているので、一寸、現実を考えてみたい。
   大規模な軍事支出と制裁逃れの貿易、ロシアがコモディティーの輸出先をより友好的な国に切り替えていることが理由だ。この「戦争依存」はロシアにとって経済財政面で大きなアキレス腱になっている。と言う。

   予想外の好調ぶりは主に3つの要素で成り立っている。
   まずはロシアの制裁に対する適応力だ。ロシアは14年のクリミア併合以降、常に何らかの形で制裁の標的にされており、この間次第に適応力が向上してきた。 ドイツなど欧州からカラフスタンなどの中央アジアの旧ソ連諸国向け輸出が驚くほど活発化している点が挙げられ、一部の西側企業が制裁対象の製品を迂回ルートでロシアに出荷し続けている様子がうかがえる。
   また、ロシアは自国産の石油・ガスに対する中国の購入意欲も当てにできるし、もはや西側企業から入手できない精密部品などの一部を中国から調達することも可能だ。昨年の中ロ貿易は確かに26%拡大し、ロシアにとって中国が最大の貿易相手になった。 
   そして、ロシア経済の「打たれ強さ」をもたらしている最大の要素は、プーチン氏がウクライナとの戦争開始以降、国家予算の大きな部分を軍事支出に振り向けていることにある。 

   しかし、向こう数年のさらに先を見越すと、状況は暗たんとしていて、昨年と今年最初の数カ月は政府支出の急増が経済を引っ張る力になったとはいえ、そうした過熱感は間もなく弱まるかもしれない。  と言う。
   長期的な課題も抱えていて、年間9%という物価上昇率もその1つで、中銀が、このインフレ対策に強力な引き締め的な金融政策運営を強いられ、政策金利は19%に達した。
   借り入れコストが増大したことで、銀行の企業や家計向け融資は鈍化が見込まれ、政府は法人税と所得税の税率引き上げを模索しつつある。さらにロシアは戦争開始以来、高技能労働者が大挙国外に脱出した影響もあり、深刻な人手不足に直面している。足元の失業率は3%未満だ。
   ロシア経済にとって2番目の制約は、現在の経済成長が今後の課題に備える性質のものでないことだ。西側による制裁のため、ロシアは工業製品、特に軍事機器の面で高度な技術を欠き、質的な低下を余儀なくされている。 
   最後の問題として浮かび上がるのは、現在国家予算の4割を占める軍事支出の増加が、教育や医療といった分野への投資も振るわないことを意味するという事実だ。社会保障費は3年連続で圧縮された。今後生産性が改善せず、公共投資を通じた成長が止まり、年金生活者が痛手を受け、ロシア経済が苦境に陥れば、プーチンの人気は急落する。 

   ロシアは今、経済学者ウラジスラフ・イノゼムツェフ氏が描写した「発展なき成長」というモデルにはまり込んでいる。
   ローテク品の量産化にかつてないほど大規模な軍事支出を振り向けることで、速戦即決ではなく長期の消耗戦に敵を引きずり込んで疲れ果てさせる準備をしているように思われ、ただこの戦略は、ロシアがより強烈で高度な戦いのコストを負担するのを難しくする。欧州がロシア制裁を厳格化することができるか、少なくとも現在の制裁の枠組みに存在する多くの抜け穴をつぶすことが可能になれば、そうした事態は起こり得る。
   より長い目で見れば、いったん軍事支出という「麻薬」の効き目がなくなった場合、ロシア経済に内在する課題が必ず日常的な光景として出現してくる。その際に何か劇的な地政学的変化が起きて「離脱症状」を克服する手助けになれば、幸いだろう。 

   以上がロイター論文の趣旨である。
   注目すべきは、長期的戦略を欠いた「発展なき成長」だと言う指摘である。
   まず間違いなしに、軍事産業化で経済は好調だが、戦時の張子の虎で、戦争が終結すれば一気に経済が縮小して崩壊する。
   そして、欧米の制裁によって軍需産業のみならず工業生産の質が著しく低下しているにも拘わらず、つけ刃のローテクに終始して、技術革新や生産性向上などの将来の成長への施策を打ていない。
   さらに、戦争によって著しく労働人口が減ってしまい、その上に、国外に脱出した何十万もの優秀な頭脳流出の結果、人的損失は甚大である。
   長期的な経済の成長発展の芽を摘んでしまっていると言うことである。

   たとえ、ロシア有利にウクライナ戦争が終結したとしても、戦争によるロシアの損害は甚大であり、長く強力なボディブローとしてロシアを苦しめ続けて、国力の低下を招くことは間違いない。
   
   国際的信用を著しく損傷して劣等国に成り下がる、ロシアにとって、何のための戦争であったのか。
   一時の軽挙妄動によって沈みゆく、偉大なロシアの落日を見るのは忍び難い。
  
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