
Voice連載の伊藤元重教授と企業トップとのインタビューを纏めた本「成熟市場の成功法則」を読んだが、興味深い経営環境の変化と経営の取り組みについて得るところが多かったので書いてみたい。
イトーヨーカドー鈴木敏文CEO
「安いものが売れなくて、良いものであれば高くても売れる。
今のマーケットは、大量生産を否定、今様経済学が通用するのはアメリカと中国だけ。
現在PBの比率は、52%、他社の真似はしない。
「競争」よりは「変化」、いまは「競争の時代」ではなく「変化の時代」である。」
プレミアム何とかと命名した一寸価格が高くて質の高い限定版が売れ筋となっていて、イトーヨーカドーでも、地方で掘り起こした技術と品質の高い特産品が良く売れると言う。
消費者は、付加価値の付いた差別化された自分が持っていないものが欲しいのだと言うのである。
バブル直後のデフレ時代には、価格破壊で、人々はユニクロに殺到したが、もう見向きもしなくなってしまい消費者は質と喜びを求めるようになってきた。
さて、エブリデイ・ロープライスのウオールマート戦略・戦術が日本で息づくであろうか。
マスのアメリカとキメの細かさを求める日本とのマーケットの差は大きいと思う。
キヤノン御手洗冨士夫社長
「日本経営の復活のキーワードは、「技術」。
キヤノンは、創立当初から「独自の技術で勝負する」と言う進取の気性があった。
何よりも技術を開発し、その技術を特許で守り、事業を発展させて行く。会社の伸張と共に、自社の技術をさらに磨き、また新しい技術を加え、複合技術の上に新事業を築いて行く、これがキヤノンの王道。
情報通信ネットワークの技術に注力、ブロードバンド時代になると動画の時代になるのでディスプレイ技術に取り組む。
技術力によって日本の労務費を如何に削減するか、生産技術を磨いてロボット工場のようなものを導入して労務費の比率を極度に低減して国際競争力を増す。
技術は人の中に蓄積され、経営目標に向かってのコミュニケーションの伝達スピードを上げ、団結と信頼関係を醸成する運命共同体的な日本の長期雇用・終身雇用制度は、経営にとって極めて有効な制度であり、文化としてのコーポレート・ガバナンスである。
経営者の使命は、徹底的に合理主義を追求して企業価値を上げる事だが、何が合理的かは国によって違っており、長期雇用から生まれる運命共同体的な日本人の文化こそが日本の経営のコアコンピタンスであり、経営者としてこれを活用している。」
御手洗社長は、アメリカでの経営経験が長くて米国経営については知りすぎているほど知っていて、経営・財務指標重視の経営を果敢に推進するが、監査役制度を温存し、社員の登用機会を割くのが忍びないと言って社外重役も登用せず頑なに日本の従来の経営制度を継続している。
報酬委員会を置く会社は何に客観性を置くのか疑問だと言い、「コーポレート・ガバナンス」の仕組みの比較などナンセンスだとも言う。
トヨタとキヤノンは日本的な経営を継続しながら、極めて良好な営業成績を揚げている超優良企業だが、このことは、日本の伝統と文化に育まれた企業経営環境を尊重した経営が健在であることを如実に示している。
某格付け会社が、トヨタの終身雇用制度の為に格付けを落としたことがあったが、あと2年も寿命が持たないと言われるGMと比較して如何にトヨタが優良かが分かると思う。
和魂洋才、ハイブリッド経営の勝利だと思っている。
何十年も前に、「日本の経営」を書いてまだ発展途上中の日本の経営を世界に喧伝したアベグレンが、新著「新・日本の経営」で御手洗社長と同じ様な理論を展開してアメリカ傾斜型のコーポレート・ガバナンスを激しく糾弾しながら日本の経営の特質とその良さを説いている。
最近、日経など、CSR等で、委員会制度を導入している会社の評価を高くしているが、経営と言うものは生き物、根ざしている土壌・地盤を軽視した経営は成り立たないことを肝に銘ずべきであろう。
伊藤教授の本だが、こんな興味深いインタビューが12回も続いている。
(追記)写真は、新宿御苑プラタナス並木の今。
イトーヨーカドー鈴木敏文CEO
「安いものが売れなくて、良いものであれば高くても売れる。
今のマーケットは、大量生産を否定、今様経済学が通用するのはアメリカと中国だけ。
現在PBの比率は、52%、他社の真似はしない。
「競争」よりは「変化」、いまは「競争の時代」ではなく「変化の時代」である。」
プレミアム何とかと命名した一寸価格が高くて質の高い限定版が売れ筋となっていて、イトーヨーカドーでも、地方で掘り起こした技術と品質の高い特産品が良く売れると言う。
消費者は、付加価値の付いた差別化された自分が持っていないものが欲しいのだと言うのである。
バブル直後のデフレ時代には、価格破壊で、人々はユニクロに殺到したが、もう見向きもしなくなってしまい消費者は質と喜びを求めるようになってきた。
さて、エブリデイ・ロープライスのウオールマート戦略・戦術が日本で息づくであろうか。
マスのアメリカとキメの細かさを求める日本とのマーケットの差は大きいと思う。
キヤノン御手洗冨士夫社長
「日本経営の復活のキーワードは、「技術」。
キヤノンは、創立当初から「独自の技術で勝負する」と言う進取の気性があった。
何よりも技術を開発し、その技術を特許で守り、事業を発展させて行く。会社の伸張と共に、自社の技術をさらに磨き、また新しい技術を加え、複合技術の上に新事業を築いて行く、これがキヤノンの王道。
情報通信ネットワークの技術に注力、ブロードバンド時代になると動画の時代になるのでディスプレイ技術に取り組む。
技術力によって日本の労務費を如何に削減するか、生産技術を磨いてロボット工場のようなものを導入して労務費の比率を極度に低減して国際競争力を増す。
技術は人の中に蓄積され、経営目標に向かってのコミュニケーションの伝達スピードを上げ、団結と信頼関係を醸成する運命共同体的な日本の長期雇用・終身雇用制度は、経営にとって極めて有効な制度であり、文化としてのコーポレート・ガバナンスである。
経営者の使命は、徹底的に合理主義を追求して企業価値を上げる事だが、何が合理的かは国によって違っており、長期雇用から生まれる運命共同体的な日本人の文化こそが日本の経営のコアコンピタンスであり、経営者としてこれを活用している。」
御手洗社長は、アメリカでの経営経験が長くて米国経営については知りすぎているほど知っていて、経営・財務指標重視の経営を果敢に推進するが、監査役制度を温存し、社員の登用機会を割くのが忍びないと言って社外重役も登用せず頑なに日本の従来の経営制度を継続している。
報酬委員会を置く会社は何に客観性を置くのか疑問だと言い、「コーポレート・ガバナンス」の仕組みの比較などナンセンスだとも言う。
トヨタとキヤノンは日本的な経営を継続しながら、極めて良好な営業成績を揚げている超優良企業だが、このことは、日本の伝統と文化に育まれた企業経営環境を尊重した経営が健在であることを如実に示している。
某格付け会社が、トヨタの終身雇用制度の為に格付けを落としたことがあったが、あと2年も寿命が持たないと言われるGMと比較して如何にトヨタが優良かが分かると思う。
和魂洋才、ハイブリッド経営の勝利だと思っている。
何十年も前に、「日本の経営」を書いてまだ発展途上中の日本の経営を世界に喧伝したアベグレンが、新著「新・日本の経営」で御手洗社長と同じ様な理論を展開してアメリカ傾斜型のコーポレート・ガバナンスを激しく糾弾しながら日本の経営の特質とその良さを説いている。
最近、日経など、CSR等で、委員会制度を導入している会社の評価を高くしているが、経営と言うものは生き物、根ざしている土壌・地盤を軽視した経営は成り立たないことを肝に銘ずべきであろう。
伊藤教授の本だが、こんな興味深いインタビューが12回も続いている。
(追記)写真は、新宿御苑プラタナス並木の今。