
トランプ次期大統領は、自身のSNSに投稿し、
「かつて偉大で力強かったUSスチールが外国企業に買収されることに私は完全に反対だ」。 「一連の税制優遇措置や関税政策によって、USスチールを再び強く偉大にする。速やかにやる」「私は買収計画を阻止する。買収者は注意することだ」」。と大統領として買収の実現を阻止すると警告した。
また、全米鉄鋼労組(USW)のマッコール会長は3日、トランプ次期米大統領が日本製鉄によるUSスチールの買収を阻止すると明言したことを歓迎する声明を出し、国内経済や安全保障上のリスクになるとして、「全員が未来に目を向けられるよう、今こそ買収を拒否する時だ」と訴えた。
これに対して、日本製鉄は3日、トランプ次期米大統領が同社によるUSスチール買収に反対する投稿をしたことを受け「買収はUSスチールを支え成長させるとともに、アメリカ産業界並びにアメリカ国内のサプライチェーンの強靭化、そしてアメリカの国家安全保障を強化するものと考えている」 とのコメントを出し、買収の意義を改めて強調し、さらに、USスチールの製鉄所などに計27億ドル(約4千億円)以上の投資を行う方針を重ねて表明した上で、USスチールの米国人従業員が米国の顧客に最先端の鉄鋼製品を提供するために日本製鉄の世界トップクラスの技術を導入し、雇用を守る」と約束した。
また、森高弘副会長兼副社長は、トランプ次期米大統領が阻止する考えを表明したUSスチール買収について、バイデン政権の間に正式な手続きにのっとって買収が承認されれば、トランプ氏でも覆せないなどとして年内の実現について改めて意欲を示した。と言う。石破総理のバイデン大統領への嘆願書が功を奏するであろうか。
日鐵の方が正論だが、アメリカは聞く耳を持たない。
さて、このブログの口絵写真は、USスチールのHPの冒頭のページである。
日本製鐵とUSスチールのロゴマークと社名を併記して
MOVING FORWARD TOGETHER AS THE
BEST STEELMAKER
WITH WORLD-LEADING CAPABILITES
と大書されている。次のページからは、両社の合併によって如何にUSスチールが甦るか明るい未来が展望されている。
両社の合併決議はすでに完了済みで、その価値の重要さを、死ぬか生きるか、誰よりも、沈みつつあるUSスチールの経営者は、痛いほど熟知している筈なのである。
何も知らない部外者が、なぜ、茶々をいれ横車を押すのか。
トランプが言うように、USスチールは、「かつて偉大で力強かった」が、既に時代遅れの衰退企業で、「一連の税制優遇措置や関税政策によって、USスチールを再び強く偉大にする」など、アメリカの実力では、不可能である。
鯛は腐っても鯛、誇り高きヤンキー気質も分かるが、最先端を行く製鉄業のテクノロジーは遥かにアメリカを凌駕しており、自力再生に拘れば拘るほど墓穴を掘ることになる。
ラストベルトの衰退企業はその典型だが、アメリカのオールド製造工業が在来の業態で再興する可能性はゼロに等しい。
優良企業であったインテルやボーイングでさえ窮地に立つほど、技術革新や国際競争力の進化は激しく、一たび経営に失敗すれば一気に命運が傾く。レッドオーシャンの世界で、後塵を拝しているような企業には明日がない。
いずれにしろ、トランプが日本製鐵の買収を妨げてUSスチール再生の千載一遇のチャンスを失すれば、USスチールの更なる落日は明白となり、外資参入に対するトランプ政策の晩鐘となろう。
「MAGA」が、アメリカの衰退を加速する。