
先に紹介した井深大の「ものづくり魂」で、日本の戦後の経済復興期に、如何に偉大な日本の先覚者達が、ものづくりに挑戦してきたか、教えられることが多かった。
エレクトロニクスを通じて豊かな新しい文明社会を開いたソニーの最大のヒット商品の一つは、ウォークマンだと思っている。
欧米などへの長期出張の時に、飛行機の中での映画や音楽の音質の悪さに閉口していたクラシック好きの井深は、機内で良質な音楽を楽しめる適当な機器があればどんなに良いかと考えた。
井深は、自分で考案して製作した、何やらオーディオデッキに電源を載せた改造機のようなものを両手に持って、ヘッドフォンを聞きながら、嬉しそうに会議中の森田の部屋に入ってきた。
ステレオ音響の素晴らしい臨場感にビックリした森田は、こんなに良い音が何処にでも持ち運び出来れば面白いね、と賛同して、小型化製品化の命令を下してウォークマンが世に出る事となった。
自転車にエンジンを取り付けた車からオートバイメイカーに躍進したホンダは、「世界のオートバイ王」として名声を博し、「マン島レース出場」を宣言して世の注目を浴びた。
しかし、実際のマン島レースを視察した本田は、凄い迫力と馬力で走っているオートバイを見て、自社の技術と世界最高水準とのあまりにも大きな較差に度肝を抜かれた。
ショックを受けた本田の未知への挑戦はここから始まった。
艱難辛苦の努力の末、当時の技術を遥かに凌駕する1万回転の高速回転エンジンの製品化に挑戦して成功する。
「こういうものを作りたい」と言う目標を先に立てて、二人とも物まねが嫌いだから、今までにないものを創ろうと大きな目標を立てて挑戦する。
理論も何もなく直感で飛びつく。
難しさを知らない素人だから、新しい技術に、新しい製品の開発に挑戦できるのである、と井深は、事も無げに言う。
しかし、例えば、磁気テープを開発する為に、飯粒で磁気粉を紙やセロハンに貼り付けて失敗したり、とにかく、その背後には、膨大な失敗と試行錯誤が交錯し、大変な努力と艱難辛苦が伴っている。
他社と違って、ホンダは、ガソリンの完全燃焼一本槍で、マスキー法を真っ先にクリアーするCVCCエンジンを開発した。
ソニーは、補聴器しか物にならないと言われたトランジスターをラジオに活用し、更にテレビにまで転用してトリニトロン方式を編み出した。
全盛の真空管を駆逐してトランジスター時代を開いたのである。
しかし、このトランジスター導入も、外貨送金で通産省の許可が下りずに、トランジスターラジオ第1号生産の名誉を逸した。
同様に、ホンダも、通産行政の影響で長い間自動車生産に入れなかったことがあったが、ソニーもホンダも、規制されればされるほど、それに力を得て挑戦し、更にその先を目指すのだと言う。
二人とも、民間企業の限りない競争が、素晴らしい製品を生み出すのだと信じている。
私が経済学部の学生の頃は、ケインズが流行であったが(もっとも、まだマルクス経済学の信奉者も多かったが)、私は、シュンペーター主義者で、特に好んで勉強をしていた。
今でも、国家経済も、企業の浮沈も、その運命は、イノベーションにかかっていると思っている。
そして、そのイノベーションを一番追求して成功している会社、即ち、シュンペーターが草場の陰で最も愛でている会社は、ソニーだと思い続けてきた。
イノベーション志向を止めたら、ソニーはソニーでなくなると思っている。
「技術よりも大切なのは人間の思想であって、考え方がしっかりしておれば、技術は後からついてくる」と本多は言う。素晴らしい人間肯定哲学である。
井深が、本田を称して右脳人間だと言って、如何に貴重な存在かを語りながら、左脳重視、左脳教育一辺倒の日本の教育を論じている。
確かにアインシュタインも、チャーチルも、マルコ-ニーも、子供の時は落ちこぼれの右脳人間であったが、世界を変えてしまった。
理科系の人々の右脳人間肯定論は、面白いのでまた、後日論じてみたいと思っている。
エレクトロニクスを通じて豊かな新しい文明社会を開いたソニーの最大のヒット商品の一つは、ウォークマンだと思っている。
欧米などへの長期出張の時に、飛行機の中での映画や音楽の音質の悪さに閉口していたクラシック好きの井深は、機内で良質な音楽を楽しめる適当な機器があればどんなに良いかと考えた。
井深は、自分で考案して製作した、何やらオーディオデッキに電源を載せた改造機のようなものを両手に持って、ヘッドフォンを聞きながら、嬉しそうに会議中の森田の部屋に入ってきた。
ステレオ音響の素晴らしい臨場感にビックリした森田は、こんなに良い音が何処にでも持ち運び出来れば面白いね、と賛同して、小型化製品化の命令を下してウォークマンが世に出る事となった。
自転車にエンジンを取り付けた車からオートバイメイカーに躍進したホンダは、「世界のオートバイ王」として名声を博し、「マン島レース出場」を宣言して世の注目を浴びた。
しかし、実際のマン島レースを視察した本田は、凄い迫力と馬力で走っているオートバイを見て、自社の技術と世界最高水準とのあまりにも大きな較差に度肝を抜かれた。
ショックを受けた本田の未知への挑戦はここから始まった。
艱難辛苦の努力の末、当時の技術を遥かに凌駕する1万回転の高速回転エンジンの製品化に挑戦して成功する。
「こういうものを作りたい」と言う目標を先に立てて、二人とも物まねが嫌いだから、今までにないものを創ろうと大きな目標を立てて挑戦する。
理論も何もなく直感で飛びつく。
難しさを知らない素人だから、新しい技術に、新しい製品の開発に挑戦できるのである、と井深は、事も無げに言う。
しかし、例えば、磁気テープを開発する為に、飯粒で磁気粉を紙やセロハンに貼り付けて失敗したり、とにかく、その背後には、膨大な失敗と試行錯誤が交錯し、大変な努力と艱難辛苦が伴っている。
他社と違って、ホンダは、ガソリンの完全燃焼一本槍で、マスキー法を真っ先にクリアーするCVCCエンジンを開発した。
ソニーは、補聴器しか物にならないと言われたトランジスターをラジオに活用し、更にテレビにまで転用してトリニトロン方式を編み出した。
全盛の真空管を駆逐してトランジスター時代を開いたのである。
しかし、このトランジスター導入も、外貨送金で通産省の許可が下りずに、トランジスターラジオ第1号生産の名誉を逸した。
同様に、ホンダも、通産行政の影響で長い間自動車生産に入れなかったことがあったが、ソニーもホンダも、規制されればされるほど、それに力を得て挑戦し、更にその先を目指すのだと言う。
二人とも、民間企業の限りない競争が、素晴らしい製品を生み出すのだと信じている。
私が経済学部の学生の頃は、ケインズが流行であったが(もっとも、まだマルクス経済学の信奉者も多かったが)、私は、シュンペーター主義者で、特に好んで勉強をしていた。
今でも、国家経済も、企業の浮沈も、その運命は、イノベーションにかかっていると思っている。
そして、そのイノベーションを一番追求して成功している会社、即ち、シュンペーターが草場の陰で最も愛でている会社は、ソニーだと思い続けてきた。
イノベーション志向を止めたら、ソニーはソニーでなくなると思っている。
「技術よりも大切なのは人間の思想であって、考え方がしっかりしておれば、技術は後からついてくる」と本多は言う。素晴らしい人間肯定哲学である。
井深が、本田を称して右脳人間だと言って、如何に貴重な存在かを語りながら、左脳重視、左脳教育一辺倒の日本の教育を論じている。
確かにアインシュタインも、チャーチルも、マルコ-ニーも、子供の時は落ちこぼれの右脳人間であったが、世界を変えてしまった。
理科系の人々の右脳人間肯定論は、面白いのでまた、後日論じてみたいと思っている。