熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

日系企業の中欧でのビジネス・チャンス・・・工業、そして、BPO

2005年07月04日 | 経営・ビジネス
   大前研一氏は、自動車産業について相当紙幅を割いて記述している。3年前に、プラハで、チェコの名車シュコダのタクシーで移動したが、フォルクスワーゲン傘下の所為か、他の欧州車と比べて遜色なく素晴らしい車であった
   ベルリンの壁崩壊直後は、プラスチック張りで角ばった小型の如何にもみすぼらしいトラバントが、東ドイツでもチェコでも我がもの顔で走っていたが、我々のチャーターしたベンツやBMWに一たまりもなく追い抜かれていた。
   ハンガリー等の道路標識は、殆どヨーロッパ国内のと同じであった。

   東ドイツを走っていて駐車していると子供たちが集まって来て、ベンツ、ベンツ、と言いながら車を取り巻いていたが、一部の舗装道路を除いて大半は、アスファルトが割れた貧しい道であった。
   余談ながら、この東ドイツで、中央分離帯のないまっすぐな広いハイウエイに出会い、これがヒットラーの意図した何時でも戦闘機の発着場となるアウトバーンかと感に堪えなかったのを覚えている。

   1991年から、スズキがハンガリーに進出して小型車を作っているが、解放前から比較的欧州車の普及率が高かったハンガリーで、真っ先に悪評高きトラバントと置き換わったのであろう、それに、トカイワイン等を輸入してハンガリー経済に貢献している。
   
   「ロボット」と言うのは、チェコの作家カレル・チャペックの造語、元々、モノづくりに秀でたチェコは、戦前からヨーロッパの工業の中心地で、教育水準、民度は極めて高く、チェコ政府の外資勧誘機関チェコインベストの政策よろしきを得て自動車工業関連の産業クラスターが形成されていると言う。
   日本の製造業の進出もチェコが一番多いようである。
   それに、チェコの国境沿いにポーランドやスロバキアの工業が集積をしている模様である。
   比較的賃金の安い優秀な高学歴の機械・技術系エンジニアの存在、伝統的工業国としての技術水準の高さ、西欧市場へのアクセスの良さ等、ハンガリーとともに工業関連投資市場として脚光を浴びている。

   もう一つ重要なのは、BPO(Business Process Outsourcing)基地としての中欧の活用である、と大前研一氏は言う。
   GEが、その欧州事業のBPOをハンガリーに集中しようしている。
   ドイツ語、ロシア語、英語、フランス語、その他9ヶ国語を操るバイリンガルな教育水準の高い人材を活用してクロスボーダーのBPOを展開しようとしているのである。

   一方、アクセンチュアのチェコでの活躍を紹介し、プラハの財務デリバリーセンターでは、バックオフイス方式で、14カ国以上の言語に対応して、経理・財務・税理等の業務を代行し顧客からこれ等の業務を解放している。
   ハンガリーやチェコのBPOは、バックオフイス業務以外にも、一歩突っ込んで営業支援を行う能力も有すると言う。
   デルが、中国にコールセンターを置いて頓珍漢な答えが返って来て困っている日本人ユーザーの話を聞くが、この差は何であろうか。

   ベルリンの壁崩壊後、資本主義国の企業は、ビジネス・チャンスを求めて、中欧・東欧にダッシュした。
   しかし、長い間の共産主義経済社会に影響されて、資本主義のビジネスそのものが分からなかった。例えば、保険を説明すれば、それは素晴らしいと言うが、何故掛金を支払わなければならないのか理解できなかった。
   中欧・東欧社会は、資本主義市場に同化するためには、中国がそうであったように随分時間が掛かったが、やっと、資本主義社会の一員に仲間入りした。
   ビジネス・チャンスの到来かもしれない。

   注意しなければならないのは、欧米企業と違う点は、欧米企業には、中欧・東欧からの移民なり縁戚が必ずいると言うことである。
   ヨーロッパに駐在していた時に、壁の崩壊後に真っ先に動き出し仲介をしたのはロンドンやパリ、ニューヨークに居た壁の向こうの出身者であったが、多くの欧米企業の中欧・東欧進出にも、これ等の母国人が関与している場合が多いと言う。
   日本企業にはない、血と地、そして、人縁に伴うノウハウやノウフウが如何に重要かと言うことである。
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