
昨夜の日経夕刊に、「政治家 こんな本を読む」と言う記事が出ていて、政治家に「今年読んで印象に残った本」「来年読みたい本」を聞いて特集している。
「外交」「品格」歴史に学ぶ、と言うサブタイトルがついていて、塩崎官房長官が「晏子」、中川幹事長が「岸信介証言録」、鳩山幹事長が「昭和史」を嬉しそうに掲げている写真が掲載されている。
傑作は、参院で40年『「五車堂書房」店主に聞く 「勉強不足、本当の読書家いない」』と言う囲み記事が掲載されていて、そのカリカチュア加減が面白い。
第一印象は、今年読んで印象に残った本、と言うことであるから、少なくともこの一年間(一年間365日である)で最も印象に残った本と言う意味にしては、あまり感心しないと言うか、この程度の読書力で政治は大丈夫なのかと言う感じである。
従って、来年読みたい本に到っては、展望が利いていない。
五車堂書房の幡場益さんが「最近の国会議員は本を読まないねえ。読書家もいるけど、突出した人はいない。」と言っており、議員になる前に当然読んでおくべき本を聞いたり、若手に議員になってから勉強しますと言う人がいると揶揄している。
同書房の売れ筋の本が、「国家の品格」を頂点に、安倍晋三、小澤一郎、共産党、自民党等政治関連の本以外は、中国を活写した杉本信行元上海総領事の「大地の咆哮」と元NHKの手嶋龍一氏の「ウルトラ・ダラー」、それに、何人かの政治家が上げていた半藤一利氏の「昭和史」等であり、極めて限られた閉塞的な選択で夢も希望も感じられない。
国会議員の本離れも、インターネットの普及など急速な情報・知識媒体の多様化の所為ばかりでもなかろうと思う。
一つだけ、グローバル時代への対応についてコメントしたい。
中国・北関連を除いて、外人が書いた本で名前が出たのは、加藤紘一氏の上げたスティグリッツの「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」と岡田克也氏のジェレミー・リフキンの「ヨーロピアン・ドリーム」だけである。
この分野は、私自身の読書域でもあり非常に興味のあるところだが、日本の政治を背負って立とうと思う人には、少なくとも最低限度アプローチすべき本であろうと思う。
スティグリッツは、また新しい本「世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す」を出したし、兎に角、グローバリズムに関しては膨大な量の本が出版されており、国際政治も国際経済も、この方面の十分な理解なくしては現代社会を語れない。
それに、真実を知って世界中が非難し始めたイラク戦争に当初から抵抗してきた大陸ヨーロッパの英知とヨーロッパ合衆国への歴史の胎動、そして、大きく舵を切らざるを得なくなったアメリカの地滑り的な政治経済社会の変革の可能性についての洞察等がなければ、美しい国どころか日本の将来が危ういと考えるべきであるが、政治家先生達にはその意識が希薄であるような気がする。
かってのように、日本が経済一等大国であった頃は良かったが、落ちぶれて普通の国になってしまった今日では、余程の国際感覚と文化文明の軌跡についての理解が伴わないと国際社会に伍して行けなくなっている。
かってはアメリカにジャパン・パッシングで無視され、今日、北朝鮮にもパッシングされている日本の悲しい現状を見れば分かる筈である。
安倍首相が就任演説で欧米について、そして、グローバリゼーションについて殆ど語らなかったのが不思議で仕方なかったが、如何せんこの方面に対する意識が乏しいのであろう。
面白かったのは、小泉政権へのあてつけか、加藤紘一氏と綿貫民輔氏が、市場原理主義経済の対極にあるリベラル派の内橋克人氏の「悪魔のサイクル」を上げていたことであるが、アメリカも民主党が勝利しており、弱肉強食、強者の経済社会を弱者を慮った平等で福祉国家的な方向に関心を移してゆこうと言う傾向であろうか。
一寸毛色が変わったところでは、谷垣禎一氏が、「万葉集」と漢籍の「毛詩」を読みたいと言う。
何れにしろ、年末年始にあたって、日本を代表する政治家達が、壮大な人類の文化文明の歴史を前にして、無限に広がる先哲の教えや偉大な創造に一顧だにし得ない、そんな読書遍歴を披露しているのが一寸寂しい気がする。
「外交」「品格」歴史に学ぶ、と言うサブタイトルがついていて、塩崎官房長官が「晏子」、中川幹事長が「岸信介証言録」、鳩山幹事長が「昭和史」を嬉しそうに掲げている写真が掲載されている。
傑作は、参院で40年『「五車堂書房」店主に聞く 「勉強不足、本当の読書家いない」』と言う囲み記事が掲載されていて、そのカリカチュア加減が面白い。
第一印象は、今年読んで印象に残った本、と言うことであるから、少なくともこの一年間(一年間365日である)で最も印象に残った本と言う意味にしては、あまり感心しないと言うか、この程度の読書力で政治は大丈夫なのかと言う感じである。
従って、来年読みたい本に到っては、展望が利いていない。
五車堂書房の幡場益さんが「最近の国会議員は本を読まないねえ。読書家もいるけど、突出した人はいない。」と言っており、議員になる前に当然読んでおくべき本を聞いたり、若手に議員になってから勉強しますと言う人がいると揶揄している。
同書房の売れ筋の本が、「国家の品格」を頂点に、安倍晋三、小澤一郎、共産党、自民党等政治関連の本以外は、中国を活写した杉本信行元上海総領事の「大地の咆哮」と元NHKの手嶋龍一氏の「ウルトラ・ダラー」、それに、何人かの政治家が上げていた半藤一利氏の「昭和史」等であり、極めて限られた閉塞的な選択で夢も希望も感じられない。
国会議員の本離れも、インターネットの普及など急速な情報・知識媒体の多様化の所為ばかりでもなかろうと思う。
一つだけ、グローバル時代への対応についてコメントしたい。
中国・北関連を除いて、外人が書いた本で名前が出たのは、加藤紘一氏の上げたスティグリッツの「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」と岡田克也氏のジェレミー・リフキンの「ヨーロピアン・ドリーム」だけである。
この分野は、私自身の読書域でもあり非常に興味のあるところだが、日本の政治を背負って立とうと思う人には、少なくとも最低限度アプローチすべき本であろうと思う。
スティグリッツは、また新しい本「世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す」を出したし、兎に角、グローバリズムに関しては膨大な量の本が出版されており、国際政治も国際経済も、この方面の十分な理解なくしては現代社会を語れない。
それに、真実を知って世界中が非難し始めたイラク戦争に当初から抵抗してきた大陸ヨーロッパの英知とヨーロッパ合衆国への歴史の胎動、そして、大きく舵を切らざるを得なくなったアメリカの地滑り的な政治経済社会の変革の可能性についての洞察等がなければ、美しい国どころか日本の将来が危ういと考えるべきであるが、政治家先生達にはその意識が希薄であるような気がする。
かってのように、日本が経済一等大国であった頃は良かったが、落ちぶれて普通の国になってしまった今日では、余程の国際感覚と文化文明の軌跡についての理解が伴わないと国際社会に伍して行けなくなっている。
かってはアメリカにジャパン・パッシングで無視され、今日、北朝鮮にもパッシングされている日本の悲しい現状を見れば分かる筈である。
安倍首相が就任演説で欧米について、そして、グローバリゼーションについて殆ど語らなかったのが不思議で仕方なかったが、如何せんこの方面に対する意識が乏しいのであろう。
面白かったのは、小泉政権へのあてつけか、加藤紘一氏と綿貫民輔氏が、市場原理主義経済の対極にあるリベラル派の内橋克人氏の「悪魔のサイクル」を上げていたことであるが、アメリカも民主党が勝利しており、弱肉強食、強者の経済社会を弱者を慮った平等で福祉国家的な方向に関心を移してゆこうと言う傾向であろうか。
一寸毛色が変わったところでは、谷垣禎一氏が、「万葉集」と漢籍の「毛詩」を読みたいと言う。
何れにしろ、年末年始にあたって、日本を代表する政治家達が、壮大な人類の文化文明の歴史を前にして、無限に広がる先哲の教えや偉大な創造に一顧だにし得ない、そんな読書遍歴を披露しているのが一寸寂しい気がする。