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今日の日経に、「英経済衰退に危機感」と言う記事で、シデック経済担当政務次官が、保守党政権が悪化させて不安定にした経済に深刻な危機感を抱いて、その改善策を述べた。
スターマー政権は、財源の裏付けのない減税表明で金融市場を混乱させた2022年のトラス・ショックや、公共投資の不足による医療や教育、交通の質の低下が深刻となり、英経済は生産性や生活水準の低下で崖っぷちに追い込まれて、「投資するか衰退するかの選択に迫られた」と言う状態であった。
したがって、まず、
10月30日に公表した予算案には5年間で1000億ポンド(20兆円)公共投資を計上し、公共サービスの充実とともに再生可能エネルギーなどの成長分野に投資する。
ところで、問題の財源だが、豊かな人々に負担を課すべきだと判断して、国民保険料の雇用主負担の引き上げ、キャピタルゲイン課税や相続税の増税、私立学校の授業料に対する付加価値税などを充てるという。
ロイターによると、
過去30年で最大規模となる年間400億ポンド(約7兆9600億円)の増税計画を発表した。増税で賄った資金で英国を迅速に再建し、同時に原資を負担する企業の憤りに耐えるという大きな賭けに出た格好である。
また、リーブス財務相は、数年間にわたって大企業に対し、政治的および規制的な安定を提供し、成長を手助けするために事業計画に関する規制の簡素化に協力すると約束してきた。それにより、労働者も賃金上昇の恩恵を受けられるようにとの望みを託していた。と言う。
富者強者への増税で財源を賄い、積極的に投資して経済を活性化するという方針は、労働党としては当然であろう。
しかし、根本的な問題は、英国経済を迅速に再建して成長軌道に乗せられるかどうかである。成長がなければ、弱者をも利するトリクルダウンなど望み得ない。
成長戦略が明確ではないので何とも言えないが、公共投資の多くは公共サービスを向上させるための保守的投資であって強力な成長要因とはならず、再生可能エネルギーなどの成長分野に投資するにしても、即経済成長の特効薬にはなり得ない。
英国経済が、制度疲労して疲弊しきっているのなら、需要サイドのみならず、供給サイドの再建強化など、抜本的なリシャッフルが必要なのではないであろうか。
英国のように成熟経済に達して活力の衰えた国では、成長を阻害することなく、公共投資で経済を活性化することは非常に難しいのである。
さて、私は、今回よりもっとひどかった英国経済崩壊危機のサッチャー政権前の労働党政権の英国を具に見ているので、今昔の感だが、
その後、サッチャー政権で、ビックバンで英国経済が沸きに沸いた黄金時代も住んでいたので経験しており、その浮沈の激しさに驚いている。
最近の英国の蹉跌は、EU離脱だったと思っている。アメリカのトランプ現象と同じで、民主主義のサイコロは、Goodばかりではないのである。