
ダンテの「神曲」を読もうと思って、まず、今道友信先生のダンテ「神曲」連続講義を聴こうとインターネットに向かって、勉強をし始めた。
冒頭のホメーロスの『イーリアス』と『オデュッセイア』の説明で、これが、口承文学であって、口誦言語芸術として伝承されていて、紀元前6~8世紀に書かれて文章化したと説明されていた。
両長編叙事詩とも、膨大なボリュームで、朗誦するのに何日もかかると言うことだが、
これが、正確な口承文学かどうかについての疑問についてだが、今道友信先生は、金田一京助先生から直接聞いた話だとして、アイヌのユーカラの記録の話をされた。
金田一先生は、アイヌの村落に出向いて、古老の語るユーカラをローマ字で筆記し、その真否を確認するために、別な老婆からも聞いて筆記したが、殆ど異同がなかったと言うことであった。
今道先生は、「イーリアス」の原文を聴講者と暗唱しながら、リズムが文字よりも前に伝承の担い手であったと、丁寧に説明されていた。
このリズムと言うことだが、歌舞伎の七五調の流れるような名調子のセリフや、素晴らしい詩人の詩や、名作小説の冒頭など、好んで暗唱している文章などは、正確に何度でも繰り返されるが、普通に語っている語り言葉は、もう一度言ってくれと言われても同じ表現は繰り返されない。
アイヌのユーカラの記録の時にも、途中で記録をミスって、もう一度同じところを繰り返してくれと言ったら、古老は出来ないと言って、初めからやり始めたと言う。
口誦文学には、そのような人間の体にビルトインされた暗唱のリズム感覚が息づいているのであろう。
日本の「古事記」も、文字のなかった頃からの口承文学で、中国から漢字の伝来を待って、天武天皇の命によって、稗田阿礼が「誦習」していた『帝皇日継』と『先代旧辞』を太安万侶が書き記し、編纂したものだと言われている。
いずれにしろ、ホメーロスの長編叙事詩と同様に、口誦言語芸術を筆記文章化して、今日に継承されたと言うことで、人間の口誦伝承芸術の凄さは、人知の限りなき英知を象徴していて脅威でさえある。
さて、平家物語だが、鎌倉時代に、信濃前司行長が作者で、生仏という盲目の僧に教えて語り手に伝えられて来たと言うことで、盲目の僧である琵琶法師が日本各地を巡って口承で伝承してきたと言う印象が強いのだが、勿論、漢字も仮名をあった時代であるから、読み本と言う形態も残っている。
一度、越前琵琶奏者の上原まりの「平家物語」を聴いて感激した記憶があるが、これなども、口誦伝承の系譜であろうが、琵琶法師の語りにおいても、琵琶のサウンドなりリズム感が、大きく作用していたのであろうと思う。
口承文学には、ウィキペディアによると、ユーカラの他にも、
アメリカ大陸のインカ神話・ネイティブアメリカンの神話
オーストラリアのアボリジニの神話
太平洋島嶼部のポリネシア神話、マオリ神話、ハワイ神話
アフリカ神話
北極地方のイヌイットの神話
アイルランドやウェールズのケルト神話
ヴァイキングなどの北方ゲルマン人によるエッダ
などがあるようだが、すべて、その民族の神話なり、民族のアイデンティティの象徴を表現している。
神懸り的な語り部が、自分たち民族の成り立ちや誇りを、語り続けたと言うことであろう。
ところで、余談だが、今道先生は、ダンテの「神曲」を読むために、ウェルギリウスを理解することが必須だとして、ついでに、ウェルギリウスの叙事詩「アエネーイス」について面白い話を語っていた。
ギリシャ人は、ギリシャ神話の神の子だが、ローマ人は、狼に育てられたロームルスとレムスによって建国されたとして、見くびられているのが癪に障るので、権威のある物語を書けと、皇帝アウグストゥスが刊行を命じたので、ウェルギリウスが、トロイアの王子でウェヌスの息子であるアエネーアースが、トロイア陥落後、イタリアに渡って、ラウィニウム市を建設して、このアエネーアースが建設した町がローマへと発展することになる。 とする叙事詩「アエネーイス」を書いたと言う。
この作品は、結構流布して、ベルリオーズのオペラ「トロイアの人々」はこれをテーマにしており、絵画や彫刻などほかの芸術にも影響を与えていると言うから面白い。
口誦芸術については、どう考えても、ホメーロスなり、稗田阿礼が語り継いだと言う人知を超えた偉業に感嘆せざるを得ず、この調子だと、AIもそれ程、恐れずに足らずと言う気もしてくるから愉快である。
冒頭のホメーロスの『イーリアス』と『オデュッセイア』の説明で、これが、口承文学であって、口誦言語芸術として伝承されていて、紀元前6~8世紀に書かれて文章化したと説明されていた。
両長編叙事詩とも、膨大なボリュームで、朗誦するのに何日もかかると言うことだが、
これが、正確な口承文学かどうかについての疑問についてだが、今道友信先生は、金田一京助先生から直接聞いた話だとして、アイヌのユーカラの記録の話をされた。
金田一先生は、アイヌの村落に出向いて、古老の語るユーカラをローマ字で筆記し、その真否を確認するために、別な老婆からも聞いて筆記したが、殆ど異同がなかったと言うことであった。
今道先生は、「イーリアス」の原文を聴講者と暗唱しながら、リズムが文字よりも前に伝承の担い手であったと、丁寧に説明されていた。
このリズムと言うことだが、歌舞伎の七五調の流れるような名調子のセリフや、素晴らしい詩人の詩や、名作小説の冒頭など、好んで暗唱している文章などは、正確に何度でも繰り返されるが、普通に語っている語り言葉は、もう一度言ってくれと言われても同じ表現は繰り返されない。
アイヌのユーカラの記録の時にも、途中で記録をミスって、もう一度同じところを繰り返してくれと言ったら、古老は出来ないと言って、初めからやり始めたと言う。
口誦文学には、そのような人間の体にビルトインされた暗唱のリズム感覚が息づいているのであろう。
日本の「古事記」も、文字のなかった頃からの口承文学で、中国から漢字の伝来を待って、天武天皇の命によって、稗田阿礼が「誦習」していた『帝皇日継』と『先代旧辞』を太安万侶が書き記し、編纂したものだと言われている。
いずれにしろ、ホメーロスの長編叙事詩と同様に、口誦言語芸術を筆記文章化して、今日に継承されたと言うことで、人間の口誦伝承芸術の凄さは、人知の限りなき英知を象徴していて脅威でさえある。
さて、平家物語だが、鎌倉時代に、信濃前司行長が作者で、生仏という盲目の僧に教えて語り手に伝えられて来たと言うことで、盲目の僧である琵琶法師が日本各地を巡って口承で伝承してきたと言う印象が強いのだが、勿論、漢字も仮名をあった時代であるから、読み本と言う形態も残っている。
一度、越前琵琶奏者の上原まりの「平家物語」を聴いて感激した記憶があるが、これなども、口誦伝承の系譜であろうが、琵琶法師の語りにおいても、琵琶のサウンドなりリズム感が、大きく作用していたのであろうと思う。
口承文学には、ウィキペディアによると、ユーカラの他にも、
アメリカ大陸のインカ神話・ネイティブアメリカンの神話
オーストラリアのアボリジニの神話
太平洋島嶼部のポリネシア神話、マオリ神話、ハワイ神話
アフリカ神話
北極地方のイヌイットの神話
アイルランドやウェールズのケルト神話
ヴァイキングなどの北方ゲルマン人によるエッダ
などがあるようだが、すべて、その民族の神話なり、民族のアイデンティティの象徴を表現している。
神懸り的な語り部が、自分たち民族の成り立ちや誇りを、語り続けたと言うことであろう。
ところで、余談だが、今道先生は、ダンテの「神曲」を読むために、ウェルギリウスを理解することが必須だとして、ついでに、ウェルギリウスの叙事詩「アエネーイス」について面白い話を語っていた。
ギリシャ人は、ギリシャ神話の神の子だが、ローマ人は、狼に育てられたロームルスとレムスによって建国されたとして、見くびられているのが癪に障るので、権威のある物語を書けと、皇帝アウグストゥスが刊行を命じたので、ウェルギリウスが、トロイアの王子でウェヌスの息子であるアエネーアースが、トロイア陥落後、イタリアに渡って、ラウィニウム市を建設して、このアエネーアースが建設した町がローマへと発展することになる。 とする叙事詩「アエネーイス」を書いたと言う。
この作品は、結構流布して、ベルリオーズのオペラ「トロイアの人々」はこれをテーマにしており、絵画や彫刻などほかの芸術にも影響を与えていると言うから面白い。
口誦芸術については、どう考えても、ホメーロスなり、稗田阿礼が語り継いだと言う人知を超えた偉業に感嘆せざるを得ず、この調子だと、AIもそれ程、恐れずに足らずと言う気もしてくるから愉快である。