熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

日本の総選挙 another hard-to-fathom swing in Japan’s weathervane-like politics

2012年12月17日 | 政治・経済・社会
   表題の英語は、The Economistの”Shinzo Abe's sumo-sized win ”記事の文中の文句なのだが、日本の総選挙の特色を言い得て妙なので、借用した。
   どう日本語に訳せば良いのか分からないが、”日本の風見鶏風政治における想像し難い振り子現象の再現”と言ったニュアンスであろうか。
   郵政民営化で争われた小泉選挙の時には、一気に自民党の大勝利を齎し、3年前の選挙では経済情勢の悪化などで小沢戦略が功を奏して、逆に、野党民主党が想像を超えた大勝利で政権に着いたと思ったら、その失政で、今回は、振り子が一気に逆に振れて、自民党の”相撲サイズの大勝利”に終わった。
   総選挙の度毎に、振り子のように大きく逆方向に振れる国民の審判が、あたかも風見鶏のような日本の政治を象徴していると言うことであろうか。

   ワシント・ンポストの一句だが、”a fierce rebuke of a party that guided the country into another recession and into a bitter territorial dispute with China”故に、野田民主党が、大敗を喫した。
   益々悪化し続けた経済情勢、それに、鳩山・小沢の日米関係軽視の外交や普天間の不手際に端を発した深刻な領土問題に嫌気を差した国民が、これ以上、民主党に政権を任せれば大変なことになると言う危機意識を感じて、この点で、多少期待が持てる自民党の方がベターだと言う判断が働いたと言うことであろう。
   私自身は、安倍政権が進めようとしている公共投資増大、日銀をコントロールして推し進めようとしている金融緩和やインフレターゲットなど、既に、財政金融政策が慢性的に暗礁に乗り上げてしまった日本経済に、どれほど効果があるのか疑問に思っており、むしろ、本当に死に物狂いで取り組むのなら、民主党の説く経済政策(尤もこれでも不十分過ぎるのだが)の方に分があるのでは無いかとさえ思っている。

   
   さて、本題に戻るのだが、このように振り子のように選挙結果が大揺れに触れるのは、衆議院議員の3分の2近くが、小選挙区で選出される小選挙区制度のシステムの特質を如実に示している結果である。
   実際の自民党の得票数は、3割台だろうと思うのだが、一選挙区に一人の当選者と言う現行の小選挙区制度では、必然的に、一番人気の高い第一党に当選者が集中する可能性が高くなる。
   今回も、小選挙区の8割くらいが、自民党当選者で占められていると言う一人勝ち現象が起きているのは、この現れである。

   これに比べて、比例代表区の当選者の比率なり割り振りは、世論調査に似た比較的国民の意思に近い結果となり、少数政党が、生き残るためには、かっての中選挙区制度を維持するか、この比例代表制を温存するなどの配慮が必要となる。
   今回の少数政党のうち、共産党は、当選者すべてが比例区であり、大地も当選者1人は比例区、未来も、当選者9人のうち、小沢一郎、亀井静香以外7人は比例区であり、みんなの党も、当選者18人のうち14人は比例区で、公明党でさえ、31人当選者のうち22人は比例区である。
   しっかりと正論を主張していた新党日本と新党改革が、一議席も取れ無かったと言うのは、残念なことだったと思っている。
   イギリスのように、民主主義と市民社会が成熟した社会であれば、小選挙区制度でも、比較的、2大政党政治が有効に機能するのだが、いまだにノック青島現象のようなポピュリズムが生きており、国民の意思が振り子のように大きく振れる日本のような国では、小選挙区制度による2大政党政治などは、無理なのかも知れない。

   さて、今回の日本の総選挙の結果については、欧米のメディアは、殆ど無視軽視に近かったようで、電子版のニューヨークタイムズもワシントンポストも、探さないとタイトルが出て来ない状態で、今朝のNHK BS1のワールドWawe7時でも、中韓はともかく、ドイツ放送とアルジャジーラの引用くらいで、シリアやエジプトなど中東のニュースの方が重要だと言うことらしい。
   これほど、地盤沈下した日本をどうするのか、安倍政権に期待する以外にないと思うのだが、今回の自民党の大勝利は、国民の3分の1のバックアップにしか過ぎず、選挙制度故の結果による相撲サイズの政権委託であって、フリーハンドを与えられたようなつもりになってアロガントにならないように祈りたい。

   蛇足ながら、今回の選挙では、結果を十分には出せずに悲劇の宰相で終わりそうだが、野田総理の努力を多として、そして、カウンターベイリング・パワーとしての民主党の今後に期待して、私は、民主党に投票した。

(追記)口絵写真は、エコノミスト誌の記事から借用。
   
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