熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

椿の季節・・・来年の5月まで咲き競う

2005年09月14日 | 花鳥風月・日本の文化風物・日本の旅紀行
   我が家の庭の椿は、今、実が小さな果物のついていて、同時に、付き始めた蕾も少しづつ大きくなり始めている。
   この写真の椿の実は、中国りんご椿の実で、直径10センチ位もあって、本当のりんごのように大きい。りんごと言うよりは、青い柿に近いかもしれない。
   
   蕾の先が色付き始めたのもあるので、いつものように、早い椿は、今月の末から咲き始めるであろう。
   これから、寒い冬を越して、暖かい春に向かって、代わる代わる主役が変わりながら、椿の花が咲き続ける。
   木偏に春が椿だから、春の花だが、秋から寒い冬にかけて咲く椿も美しい。

   私達のロンドンの家には、大きな椿の木が一本植わっていて、毎年、真っ赤な八重の花をたっぷり付けて咲いてくれた。
   さつま紅のような花で、剪定も兼ねて豪快に切って、大きな花瓶に生けて楽しんでいた。
   
   最初にここへ引っ越してきた時に植えた乙女椿が、主の居ない間に大きくなっていて、ロンドンから帰って来た年の冬に、綺麗な花を一杯に咲かせてくれた。
   それから、私は、少しづつ、椿の花に興味を持って園芸種を集め始め、庭植えにしたり鉢花にしたりして椿の栽培を続けて来た。
   今では、庭植えが20種以上、鉢花を合わせれば50種類位の椿の木が庭にある。
   それ程真面目なガーディナーではないので、花の名札が飛んでしまって名前が分からなくなった椿も多いが、それでも、始めてから随分経つので、夫々の花には御馴染みである。
   しかし、総ての花を園芸店で買って、小さな苗木から育ててきたので、まだ小さな木も多い。しかし、あまり大きくなると、庭が椿ばかりになってしまうので、それも困る。

   椿は、日本の花である。中国や東南アジア原産もあるが、ヤブツバキ(ヤマツバキ)とユキツバキに代表されるあの美しいツバキは日本が原産国である。
   このツバキが、16世紀に日本に来たポルトガルの宣教師に持ち帰られてヨーロッパに広がった。
   ヴェルディのオペラ「椿姫(ラ・トラヴィアータ)」で有名だが、私は、イギリスで綺麗な、一寸日本とは違った豪華な感じのツバキの花を植物園や公園で見た。
   あのロイヤル・キューガーデンでも、温室の中で大切に育てられていたし、庭園の木は可なり大きく育っていた。
 
   私の子供の頃のツバキの思い出と言えば、真っ赤なラッパ咲きで黄色い大きな蘂を付けたヤブツバキであった。
   花の蜜を吸うと甘かった。学校の廊下をツバキの実を磨り潰して磨いたような記憶もある。

   ところが、ツバキには、一重もあれば八重も唐子もあり、色も赤白の単色から絞りや覆輪、斑等色々で、咲き方も緒口、筒、抱え、ラッパ、椀、平開咲きと千さ万別、とにかく、種類が限りなく多くて、ドンドン新種が生まれているのである。

   ところが、欧米と日本とでは、ツバキに対する感性が全く違う。
   欧米人は、薔薇を好むので、日本から移っていったツバキは、品種改良されて薔薇の花のように華麗で豪華になってしまった。
   日本と違って、八重咲き・千重咲き・獅子咲きが主体で、それも大きければ大きいほど良いと言うことになっている。
   日本人は、原種に近い一重咲きの筒型や椀型のシンプルな花を愛でるが、欧米人には、小さな侘助ツバキ等に興味はない。
   まして、日本では、茶花など蕾のままか、咲いても三分咲きか五分咲きを生けるが、欧米人は、豪華に咲き切った満開の花にしか興味を示さない。
   日本から行った百合が、カサブランカになってしまったり、日本のつつじや皐月が、アザレアに品種改良されてしまったのと同じである。

   もっとも、人によって違う。
   桂離宮をケンブリッジで勉強したアーキテクトのサー・フィリップは、苔寺のコケの微妙な輝きや法隆寺の欄干の文様ををカメラで追っかけながら、日本文化は素晴らしいと言っていた。
   マーゴは、今度行ったら、庭に日本のツバキの鉢植を2鉢育てていた。
   フラワーアレンジメントの先生ブレンダは、私のプレゼントした一輪挿しを大切に使っているのだと言う。

   さあ、愈々、ツバキの季節である。
   良い写真が撮れればと思っている。

   
   
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