熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

日本は外国人失業者に旅費等を支給して本国へ・・・ニューヨーク・タイムズ

2009年04月23日 | 政治・経済・社会
   本日のニューヨーク・タイムズ電子版に、写真スライド入りで、「日本は外国人労働者に支払って帰国へ Japan Pays Foreign Workers to Go Home」と言う記事が掲載されていた。
   この記事への反応メール90が紹介されていたが、日本人の外国人嫌いや人種差別などに言及する批判的な意見が相当な比重を占めていて、世界中に結構ネガティブな印象を与えている。

   浜松の例が紹介されている。労働者一人に3000ドル、扶養家族一人ずつに2000ドルの支給のようだが、多寡はともかく、特に、印象を悪くしているのは、一旦、旅費等給付金を受け取った外国人労働者は、二度と日本で就業出来ないと言う規定である。
   この旅費を立替支給すると言うニュースを知ったのは、TVで、日系外人労働者として来日していた両親が失職して、名残を惜しみながら日本の小学校をやめてブラジルへ帰る女生徒の様子が放映されていた時だが、二度と帰ってくるなと言う条件を付けているとは知らなかったので、少しショックを感じた。
   川崎元大臣が、「・・・we're suggesting that the Nikkei Brazilians go home. Naturally, we don't want those same people back in Japan after a couple of months.」とコメントしているのだから、ニューヨーク・タイムズの記事は、概ね正しいのであろう。

   ニューヨーク・タイムズの記事だけで言及するのだが、
   1990年代に、工業労働者、特に、3Kの仕事をする労働者が不足したので、日本政府は、ブラジルやペルーなど南アメリカへ移民した日本人の子孫たちに特別労働ビザを与えて招聘し、現在では、36万3千人が働いており、その多くが、今回の経済不況で、失業して困っているのだけれど、日本人でさえ職探しに困っているのだから、旅費を出すから国へ帰れと日本政府は言っていると言うことである。
   このプログラムは、近視眼的で非人間的であり、折角、日本が、外交人労働者に日本経済を開きかけた矢先の出来事で日本に対して打撃となると、手厳しい批難をしている。

   この記事の最後は、6年前に来日して10月にストーブ工場を失職し、政府に帰国補助を申請して6月に帰国する予定のウエリントン・シブヤ氏のコメントで終わっている。
   「彼らは、労働が必要な時は我々を使ってくれた。しかし、今は経済が悪くなったので、僅かな金を払って、サヨナラだ。我々は、一所懸命に働き、慣れるのに必死だった。しかし、瞬く間に、我々を蹴飛ばして追い出してしまった。こんな国から、おさらば出来るのは幸せだと思っている。」
   夢破れて帰って行く日系ブラジル人の思いは、恐らく、このような心境だろうと思う。
   棄民として母国から捨て去られた日本人移民の、そのまた子孫たちが、再び祖国から捨てられたように日本から出て行かざるを得ない、この悲惨さを何と表現すれば良いのであろうか。

   私は、ブラジルブームの時、1974年から79年まで、大型プロジェクトを追っかけてサンパウロに赴任してしたのだが、あの時は、私のバックには経済大国日本と大企業と言う大きな支えがあったので心配などはなかったが、しかし、異文化異文明とも言うべき新天地での仕事は苦労の連続で、今回の南アメリカからの日系労働者たちの苦労は筆舌に尽くし難いのではなかったかと思うと胸が痛む。
   
   このブログで、BRIC'sの一国であるブラジルが、日本の将来にとって、如何に大切な国であるかと言うこと、そして、ブラジルへの協力とコネクションの成功のために、日系ブラジル人の存在が、如何に貴重な日本の財産であるのかと言うことを論じたが、日本政府も日本産業界も日本人の大半も、悲しいかな、この厳粛な現実を全く認識していない。
   今、日本にあるブラジル人の子供のためのブラジル学校が閉鎖されようとしていると聞く。棄民であった日本人に対しては日本政府は冷たかったが、同じ海外移民であったドイツやイタリアなどの移民村には、びっくりするくらい素晴らしい学校や文化施設が本国の援助で建設され運営されていたのを思い出して、同胞に対する思いやりの無さと言うか落差に暗澹たる思いを禁じ得ない。

   現在、これら失業中の南アメリカからの日系労働者に対して、日本語研修や職業訓練や職業コンサルなどの支援が少しずつ進められているようだが、ニューヨーク・タイムズが触れているように、日本人の労働人口はどんどん減少しており、老人介護関連や農業など労働不足が心配される分野もあり、早晩、外国人労働力の活用を真剣に考えざるを得なくなる。
   「バッファーとして使っただけで必要が無くなれば使い捨て」と言う厳しい世界の批判の矢面に立っている日系外国人労働者への日本の対応だが、日本の経済社会の将来を見据えるためにも、今こそ、絶好の好機、ブラジルやペルーなど日系移民や子孫たちの日本での深刻な労働と生活問題を真剣に考えるべきだと思っているのだがどうでろうか。

(追記)写真は、ニューヨーク・タイムズ電子版より借用。
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