矢口タートルズVCは2020年に創部しました。 #小学生バレーボール #脳科学 #教育 #マインドマップ
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300%ハッピーの連合音楽祭
2010-11-28
/
教育について
11月19日(金)に連合音楽祭がありました。区内から7校が集まって、それぞれ練習してきた合唱や合奏を交流するイベントです。この音楽祭に私が担任している4年生+先輩学年5年生の約100名が出演しました。
私たち教員の目標は、こうした行事をただ上手に演奏を発表するということだけでなく、行事を通して子どもたちを成長させることが一番の目標になります。音楽や演劇活動は子どもたちの内面が育っていないと良いものは生まれませんので、細心の気配りをしながら指導をしてきました。
まず考えなくてはならないことは、いかにして「内発的なモチベーション」を上げるかということです。もしかすると厳しい指導をすれば子どもたちは懸命に練習して、良い演奏をしてくれるかもしれません。しかし、それでは教師から「やらされた」演奏になりかねません。「内発的なモチベーション」を高めることによって、子どもたちが自ら課題を設定し、自ら練習していくようになれば、行事を終えた瞬間の達成感はとても大きなものになるはずです。
今回の音楽祭に向けてのスタート時点で子どもたちの意見を引き出しながら行ったのは、「全脳思考チャート」による最終目標イメージの形成です。4,5年生100名を相手にホワイトボードに図解しながら私がファシリテートしていったのですが、残念なことその図を写真に撮っておくのを忘れてしまったため、今回の記事では文字だけで紹介しなくてはなりません。分かりにくくてすみません。
(1)目標イメージ設定・共有
「どんな連合音楽祭にしたいのか」という最終イメージを考える時に、全脳思考モデルでは自分や相手がどんな言葉を話すかを「ふきだし」で書きますが、その前に、そのイメージを数値化します。最終目標として私から子どもたちに与えた数字は「200%満足」というものでした。
この「200%満足」というイメージに従って、子どもたちから意見が出てきました。
「自分たちは本当にやりきったぞ!」
「立派に学校の看板となることができた!」
「香取小の演奏はすばらしい!」
「大きな拍手を送ろう!」
「集まったみんな素晴らしかった!」
という内容の言葉でした。
(2)目標達成までの過程をスモールステップでイメージ化する
最終目標イメージができあがったら、次にそこまでの過程をスモールステップでセリフにしていきました。心情曲線を3つの山にグラフ化したものでイメージ作りをするのが全脳思考モデルです。今回は、「個人練習」「クラス練習」「学年練習」「全体練習」という山場があることを私から伝え、4つの山を乗り越えた時にどんな言葉を話しているか引き出しました。
これによって、子どもたちの脳内に1ヵ月半の練習過程のイメージができあがります。
(3)練習状況を可視化する
練習過程の中で、言葉だけのアドバイス(というよりも多くの教員は注意をしてしまいますが・・・)をひと工夫します。
合唱・合奏の指導は音楽専科の教員に任せていますので、専門的なことは私たち担任には分かりません。しかし、その様子を客観的に分析することはできます。今回行ったのは、直した方が良いこと、つまりアドバイスしたい内容を、ホワイトボードにイラストで描いていく方法を取りました。言葉や文字だと理解が遅れるからです。また、100人もいればひとつの言葉でもとらえ方がまちまちになり、共通イメージを持ちにくいからです。
この「イラストシンキング」の方法は大変効果的でした。
立ち方が良い子と悪い子をイラストで描いたことで、子どもたちは、どちらが良いかを一瞬のうちに判断しました。
また、目や口の開け方も、はっきり開けているイラストと、なんとなく開けているイラストでは全然イメージが違うことを感じ取ってくれました。
「君たちの中には、2種類の人がいることが分かりました。この絵のようにキラキラ輝いている目をしている人と、トロ~ンとした目の人。大きく口を開けて歌っている人と、開いているのかどうかも分からない人。どちらが良いと思うかは、もう分かるよね。」
指示はこれだけで十分でした。
加えて、目も心もキラキラ輝いている子どものイラストを描いておいて、
「こんなに輝いている小学生を見たらさ、他の学校の人たちはビックリするじゃない。」
と言葉をつけ加えてあげれば、モチベーションもあがるし、自分のことを客観的に見ることができるようになるでしょう。
要するにメタ認知させるということです。
(4)その結果・・・300%の満足度
「自ら行動する」姿勢を習慣づけることができれば、教員のすることは子どもたちの求めに応じて支援をしてあげるだけとなります。実際に4,5年生の子どもたちは、休み時間やすき間の時間にも意識して練習している子がたくさんいましたし、最後の最後までモチベーションを高く保ち続けて「学校の看板」らしく行動していきました。
「絶対に良い演奏をしたい!」という気持ちが強くありましたので、本番当日は朝からかなり緊張していたようです。それもまた良い経験ではないでしょうか。もしも、どうでもよいなどと思っていたら緊張感すら味わえない。子どもたちは最高の緊張感の中で、自分の力を存分に発揮できるように、それぞれが気持ちを落ちつけようと努力していたようです。
ある子がその日の午後に書いた新聞の記事に、
「今日の私たちの音楽祭に向けて、先生から演奏している人も、聴いている人も、みんなが200%満足できるような音楽祭にしようと言われましたが、私は300%満足できた連合音楽祭になったと感じました。」
と記しました。また、
「私たちの出演した午前の第一部だけでなく、二部も三部もみんな合わせて、大成功の連合音楽祭になったのだと感じました。」
と書いている子もいました。
担任が設定した「200%ハッピー」という目標設定を大きく超えて、「300%満足」という言葉が飛び出してくるとは、指導している私自身が驚き、そして感動しました。また、その会場にいた人だけでなく、その後に続いた二部・三部の学校の子どもたちのことまで想像力を働かせて、きっと成功したことだろうと言ってしまう子どもの素晴らしさに、なんだか芸術作品を見ているかのようなほれぼれとした気持ちになりました。
(5)これからの教育について
PISA型に代表される論理的思考力が必要と言われている今後の社会では、当然、この流れである、「情報の収集力」「解釈する力」「熟考する力」「評価する力」「発信する力」というものも伸ばしていかなくてはならないと思います。しかしその前に、いかにして自分の内発的モチベーションをあげられるかが最も大事なポイントになってくることでしょう。このモチベーションについては、いつの時代も言われてきたことなので、とりわけ新しい問題ではありませんが、従来の教育のあり方がどんどん変化していく新しい時代のスタート地点に立った私たちは、教材をどのように教えるかということ以上に、子どもたちのモチベーションをどのようにあげるかという研究も深めていくことが必要なのでしょう。
【参考文献】
全脳思考
神田 昌典
ダイヤモンド社
モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
ダニエル・ピンク
講談社
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