アファメーションとは日本語では「肯定的自己宣言」のことを言います。簡単に言うと、「スーパーポジティブ宣言」とでも言っておきましょうか。私が教育改革をガリガリ進めてきた原動力が、このアファメーションにあります。何しろ10回連続の「学級崩壊」「学年崩壊」を担任として引き受けて、最高の状態に仕上げてきた理屈が「アファメーション」にあります。
いとも簡単に「学級崩壊」「学年崩壊」と書きましたが、最悪の状況はどのようなものだったのか、記録しておきましょう。
(1)5年生のとき、担任の押さえがまったくきかず、ふざけて給食中におかずを投げ合うようなことがたびたび起こる。その結果、教室の壁や床にはカビが発生している。それをきれいにする気力が担任には湧くわけがない。疲れてしまいますから。同じ学年を組む学年主任にもどうにもできない。ところが、担任2人は本当に人柄が良いのです。この状況なのに、子供たちを批判せずに受け止めてくれた。だから5年生の子供たちは、好きなようにやらせてくれた担任の批判は決してしない。担任の先生が大好きなのに、学級崩壊が起きてしまう珍しい状況。そのようなこともあるのですね。人間が生活しているのですから。
そして6年生で私が担任する。アファメーションです。「井上が担任するということは、どういう意味なのか分かっているだろうな。」「真面目に6年生生活を送ろうとしている子のために全力を尽くす。」「最高の6年生時代を送ってもらう。」こうした投げかけを、6年生スタートの初日にするのです。結果、3日以内に学級崩壊終了。立て直しができる教員はすべて、受け持った時点で問題は解決しているものなのです。
(2)5年生のとき、ある子供へのいじめ事案が起きたことを発端に、担任では制御できないほどの暴言・暴力行為が横行した。隣の学校にいた「副校長待機要員」がこの学年を改善しようと名乗りを上げたが、まったく通用せずに見放した。教育委員会もどうにもできなかった。私は6年生の担任をしていたため、5年生にはなかなか手を出せず、もどかしい思いをしていた。そこで、2月に校長に意見具申した。
「この学年崩壊した5年生は、6年生で私が担任します。2学級なので、もう一人の担任はベテランはいりません。私の思いを理解できる若手のH先生を2組の担任にしてください。そして私が行う学年改革に、管理職として何も言わないでください。革命的に成長させます。」
こうして完全なアファメーションを行いました。
4月、子供たちには、カビのはえた(1)の時と同じように、「井上が担任するということは、どういう意味なのか分かっているだろうな。」宣言はしました。さらには、「学ぶことの本当の意味を、この1年間で教えてやる。そして史上最高の卒業式を君たちが実現できるようにしてやる。」と宣言しました。このような強烈なアファメーションは、本当に力を持つのです。
この6年生。7月に2組の担任にしてくれと校長に具申した若手教員が研究授業を公開した際に、教育委員会の指導主事が講師としてきたのですが、次のように言った言葉が忘れられません。
「この学年の子供たち、ありえない成長をとげています。」
心底決意したアファメーションを起こすと、ありえないことがいとも簡単に起こるのです。この学年の子供たちが真剣に取り組んだことによって、私が目標にしていたマインドマップの書籍を発刊することもできましたし、9月に行われた区の小学校水泳記録会で、12種目中4種目で優勝という輝く歴史を残すこともできました。
今、バレーボールの卒業記念大会を前にして、指導する私が本気でアファメーションを宣言できるかどうか。子供たちは当然、全力で試合に臨むことでしょう。最後の決め手は、指導者の無意識からの決意にあるのです。
「矢口タートルズの6年生は、令和7年3月の二つの卒業大会で優勝する」