前に少々読後の感想をご紹介した『将軍様の鉄道』では、金正日専用列車のゴツい全体像、そして平壌の金日成廟に保存されている金日成執務車が何枚かの写真とともに紹介されており、鉄道での視察旅行にこだわる金父子の趣味や、如何にも一般人民とはかけ離れたゼイタクぶりが良く分かりました (苦笑)。もっとも、この手のVIP用客車は何も北朝鮮の専売特許というわけではなく、例えば日本にも皇室専用車両があるように、鉄道が国家と結びついている世界のほとんどの国では必ずこの手の車両が存在していると言えるでしょう。面積が九州ほどしかなく、各種の交通手段が発達しているため、それほど在来線鉄道の特別車両による視察にこだわる必要がない台湾ですら、総統専用の客車があるほどです(塗装はキョ光号と同じ色)。
というわけで、「鉄道とは国家なり」の論理に最も忠実な国のひとつである中国にも、当然この手のVIP車両=共産党&政府高級幹部専用車両 (専運車) が存在しており、大規模な移動の場合には専用編成の出番となり、小単位の移動の場合には定期列車の尻に連結されたりします。
ただ、日本のお召し列車の運行が官報で告示されるのとは違って (撮ったことはありませんが ^^;)、中共のことですから当然のことながら何時運行されるかも分からず、撮影が見つかれば取り調べの可能性も! (-_-) それでも、昨年夏に中国鉄道博物館を訪れた際、敷地横の留置線にて、そんな専運車を撮り放題!な機会に恵まれました。
もっとも、撮り放題にはウラがあり……こういう人目に付きやすい所に放置されているということは、事実上もう使用されなくなったことを意味しています。特に、中国国鉄はここ10年少々のあいだに大幹線の最高速度が120km/hから160km/hにスピードアップされたことから、スジに乗り切れなくなった最高速度120km/hの専運車が役目を失って放置されるに至ったようです。分かりにくいかも知れませんが、これらの車両は全て3軸ボギー台車を装備しており、乗り心地は極めて良さそうながらも確かに高速対応は難しそう……。
特に、1枚目の画像の車両は、見ているだけで「もったいない……」という言葉が浮かびます。この車両は現在も製造が続く25系客車をベースとしており、1990年代に入ってから製造されているはずですが……散々金をかけたのにもう放置とは! (以下略)
いっぽう2枚目の車両は1960~80年代の作品と思われますが、如何にも分厚そうな車体をナマで見ると、22系客車とは比較にならないほど高級感が感じられます。たぶん東ドイツ製?
というわけでこれらの車両、訪れたときは「いつまでこれだけの車両をこの状態で放置するつもりのだろう……」と訝しくて仕方がなかったのですが (^^;)、リンク頂いている「不思議な転轍機」の「はいらーある」さんから頂いた情報によりますと、最近博物館の中へ搬入されたとのこと! 既に中国鉄道博物館内には毛沢東・周恩来執務車があり、車内を見学することも出来ますが、この放置車両が整備されて公開されたあかつきには、どれだけ怪しくデラックスな車内になっているのかをじっくり眺めるのが楽しみです (^^;