今回の台湾訪問は、決して出張ではなく有給休暇を取っての3泊4日。その間に、南台湾で今も辛うじて息づく旧型客車の最後の日々を味わおうと目論む以上、一刻たりとも無駄にするわけには行きません。そういうとき、注目せずにはいられないのが台湾新幹線=台湾高鉄の存在! 地味~な車両を酷愛する立場上、ふだん日本国内の新幹線は移動の手段としてしか関心がない私ですが (^^;)、その新幹線車両が異国の地を走るようになり、しかも活用次第で非常に便利であるともなれば、どうしてもそのことに誇りと関心を抱いてナショナリストにならざるを得ません (^^;;)。というわけで、台北近郊の桃園空港(旧名:中正空港)に着いたあとは高鉄の桃園駅に直行し、時間の節約がてら、その魅力を体感してみることにしました。
日本式か?欧州式か?という選択をめぐってすったもんだを繰り返し、結果的に車両と箱物は日本式、信号システムは欧州式を採用するという妥協の産物となった台湾高鉄は、約1年前に開業した時点では「果たしてうまく行くのだろうか……」という憂慮を誘ったのも確かですが、開業以降は極めて順調に運行を続け、航空機から客を完璧に奪い去って本数も増える一途であるようです。それはまさに、日本風のシステム・サービスが台湾の現実にマッチし、広く受け容れられたからだと思われますが、実際桃園駅に向かい、切符を自動販売機で購入し、列車に乗り込むまで……自動改札で切符を裏返しに挿入しなければならないことを除けば全く違和感はありません (^^)。
ところで今回は当初、途中の嘉義まで普通車で移動し、嘉義からは台鉄の旧型客車で高雄へ向かおうと考えていたのですが、超偶然なことに入国日の9日と高雄捷運(地下鉄)の開業日が重なりましたので、 「折角なので高雄捷運の開業初日も楽しもう。それに、高鉄と台鉄の嘉義駅は非常に離れていて面倒だし」と思いまして (^^;)、一気に高雄まで向かうことにしました。そうとなればこの際思い切って……ということで、商務車(グリーン車に相当)の切符を購入! もっとも、ただでさえ日本の新幹線より安いうえに、現在2割引キャンペーン中につき、桃園から高雄(左営)までは1760元=日本円で6000円少々! これで700系グリーン車と同じ椅子の座り心地を楽しめ、しかも商務車ならではの美味いコーヒーと柿ピー (^^;) の無料サービスがついて来るのですから本当に安いものです (^O^)。また、商務車にはオリジナルの雑誌『T-Plus』があり、めくっているととにかく鉄道趣味に関連した話題が多く、他の航空機や列車の備え付け雑誌とは一味違った不思議な雑誌だ……と思ったら、奥付を見て納得。台湾鉄道史研究&趣味界の大御所(といってもまだ若い)・洪致文氏の監修によるものでした。
とまあこんな感じで、高鉄700Tはしばしば最高速度の300km/hを出しながら南下を続けて行きます。300km/hといっても、さすが路盤が新しいからでしょうか、東海道・山陽新幹線のような揺れは全く感じられません (^^)。沿線風景は……桃園・新竹あたりはこの季節の北台湾らしくどんよりとした天気でしたが、台中あたりで徐々に椰子やビンロウの木が増えて天気が良くなり、濁水渓を渡って雲林・嘉義の大穀倉地帯に入ると、田植えを終えて間もない一面の淡い緑の風景が果てしなく広がり……南台湾にやって来たぜ!という気分が盛り上がりまくり (^^)。しかも成田を出発して僅か6時間弱……。本当に速い!の一言です。
そして最後に、進行方向左側に車両基地を望みながら高雄(左営)に到着! 左営は高雄市街の北西ですが、高雄駅は現在工事中につき、当面はここが終点。工事完成試運転&入換機として、改軌のうえ運び込まれてこの地に息づいているというDD14・16は見えませんでした。残念!
高雄といえば、もともとはタカウという地名だったところに、福建あたりから移り住んできた漢民族が「打狗」という当て字をし、さらに日清戦争後台湾を領有した日本が「帝国の南端であり、さらなる南進の基地ともなる場所が、犬を打つという地名ではまずいだろう」ということで、タカウ=打狗に近い「高雄」という字を当てたという経緯があるそうで、そもそも地名からして日本との因縁が深い場所です(そして1945年以後も「高雄」をそのまま北京語でKaohsiung=カオシォンと呼んで今日に至る。あ、台湾は中華人民共和国ではありませんので、ピンインでは表記しませんぞよ。念のため ^^;……と思ったら、何と切符の「左営」ローマ字はピンイン表記ではないですか! 確かウェード式とピンインの中間の表記を導入しているところも多いのでしたっけ……汗)。そこに今や、日本国内と同じ気分で新幹線に乗って到達できるのですから、スゴイ時代になったものです。
※なお、台湾新幹線=台湾高鉄、およびこれからご紹介してゆく台湾鉄道事情に関しましては、いつも当ブログにコメントを頂くなど大変お世話になっておりますtaiwankatakura様が執筆に参加され、最近出版されたばかりの『台湾鉄道の旅・完全ガイド』(イカロス出版)をご参照頂きますと、より理解を深めて頂くことが出来るかと存じます。当ブログはあくまで個人的な思い入れが中心ですので……(^^;;;