香港経由でネパールを訪れてから早いもので約1ヶ月経ち、その前後には大震災に関する様々な出来事が立て続いたため、すっかり旅の記録の整理も後手となってしまいました (汗)。しかし今日は、いつもお世話になっております「ぱれっと」様 (香港乗り物事情に関しては私にとって師匠であり、出発前に最新の『通用乗車地図』[※1]を頂くなど多大な御指南を頂きました m(_ _)m) と横浜中華街で美味い昼食を楽しみ、あれこれの土産話に花が咲きましたので、鮮度が落ちないうちに香港+αでの記録をアップしておきたく存じます。なお、今回の香港滞在は2泊3日で、実質的に乗り物三昧に浸ることが出来た時間は1日半に過ぎませんでしたので、香港島の非常にメジャーな2階建てトラムやケーブルカー、及び新界のトラムは残念ながら省略しております (鉄道線車両と路面電車を並べられると、何のかの言って前者を取りがちという点で、路面電車にどこか冷たい自分を発見……^^;;)。
さて、今回欠かさず乗っておきたかったのは、香港鉄路 (香港地下鉄が九広鉄道[※2]を吸収合併するかたちで成立)・東鉄線の釣掛式電車です♪ この車両、ミョーに近未来的な (?) マスクに加え、付随車は床下カバーを完備しているなど、見かけはやけに最新な雰囲気を漂わせていますが、下は何と釣掛。九広鉄道が1980年代に電化されて以来、3扉セミクロスの電車が用意されて活躍していましたが、電化と本数増に伴う沿線の急激な宅地開発、それに広東省側での猛烈な経済発展に伴い越境利用客が急増した結果、3扉というスペックでは到底不十分となり、1990年代末に5扉の車体を新造し下回りを流用して生まれたのがこの車両です。
1980年代に下回りが製造されながらも釣掛であるというのは如何にも英国の流儀ですが、静音対策が周到になされているためか、あるいは運転間隔が頻繁で (12両編成が2~5分間隔で走っています) スピードが余り上がらないためか、釣掛サウンドそのものは絶叫の域には達せず、車内では総じて「江ノ電1000形よりも響いているだろうか?」という程度。それでも、釣掛の大型電車に乗って近郊の緑の山々やニュータウンを眺めるというシチュエーション自体がたまらない魅力です。
但し、それをかき消す存在として、車内にはニュースやCMを延々と流すテレビが……。しかも、訪れた時期が時期だけに、放送されている内容は福島第一原発の深刻な状況ばかり……。まぁ、「祖国」であるはずの中国で生産された食品を信用せず、ほとんど (?) の食品を日本や台湾から輸入している香港にとって、今回の原発事故は全く他人事ではないのでしょうが……(私も最新の状況が気にならずにはいられず、乗車中も思わず他の客とともに画面を注視)。ちなみに、もしテレビ放送一切抜きで釣掛サウンドに耳を傾け続けたい向きには、編成中に1両のみある電動車の「静音車」がオススメ。もっとも、乗客が静かであるという保証は一切なく、むしろ広東省側・深セン[土+川]とのボーダーである羅湖に近づくほど、香港商品の買い出し (?) で往来する中国人客の喧噪が加わりますのでそのつもりで……(汗)。3分の1ほどの列車は羅湖ではなく、数年前に新たに開通した落馬州のボーダー[※3]に向かいますが、落馬州支線は駅間距離が長く、大部分の区間がトンネルであるだけでなく、利用客数もそれほど多くありませんので、釣掛サウンドを本当に楽しみたい向きには落馬州系統の列車がオススメですね~。
ちなみに、私が初めて香港を訪れたのはまだ英国領だった1994年で、中国側から羅湖のボーダーを歩いて通過し、電車に乗って九龍中心部に向かったのですが (フツーそんなルートで香港を初訪問する日本人はいないだろう……と ^^;)、それまでの中国側の旅が余りにも地獄過ぎたため (汗)、全てが秩序と清潔さに満ちた香港にすっかり舞い上がってしまいまして、思わず頭等車 (1等車) に乗車~。頭等車は当然のように付随車であり、先代の車体でも隣の電動車の釣掛サウンドは完全にブロックされ伝わって来なかったため、この電車は釣掛であるとは夢にも思わず、その事実を知ったのは最近数年来のことでした (滝汗)。頭等車は現在も編成中に1両連結されており、車内は全てゆったりとしたボックスシートですが (普通車は車端部のみボックスシート)、乗車の際には切符の事前購入、あるいは八達通 (オクトパス・カード) で乗車の際「頭等核準機」(1等車利用をカードに認識させる装置→精算は下車後改札通過時?) にしっかりとかざしておくのをお忘れ無きよう……。
※1 『通用乗車地図』は、通用図書公司が出版する香港各種交通機関利用指南本。全てのバス路線と停留所も網羅。香港で乗り物ヲタに徹するならば超!必携。
※2 九広鉄道の九は九龍、広は広州を意味し、香港側での社名。かつての国境=今の特別行政区境から広東省側は中国国鉄広深線 (現在、広深鉄路公司が運営)。
※3 ボーダーの橋を渡ると深セン地下鉄4号線「福田口岸」駅があり、2駅乗った「会展中心」駅にて1号線に乗換可。深セン中心部に行くにはやや面倒。