小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『生首に聞いてみろ』法月綸太郎

2004年10月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
著名な彫刻家・川島伊作が病死した。彼が倒れる直前に完成させた、娘の江知佳をモデルにした石膏像の首が切り取られ、持ち去られてしまう。悪質ないたずらなのか、それとも江知佳への殺人予告か。
二転三転する謎に名探偵・法月綸太郎が迫る。

本格ミステリ大賞、このミス1位、文春2位、本ミス1位


~感想~
最近の好調ぶりをうかがわせる、丁寧で一切の無駄のない純粋本格ミステリ。
その分、物語は淡々と進み、起伏に乏しいが、丹念な筆致は読者を最後まで飽かせずに読ませてくれる。
代名詞だった「迷い」をついに振り落とし、一直線に突き進む様は、読みやすくなったもののどこか物足りない。
話題作となったが、いままでどおりの、これまでとなんら変わりない、いかにも氏らしい佳作。
もう、法月綸太郎の世界は揺らがない。いい仕事してます。


評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『暗黒館の殺人』綾辻行人

2004年10月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
館シリーズ第7弾。
九州の山深く、外界から隔絶された湖の小島に建つ異形の館・暗黒館。
その館にあの中村青司が関わっていると知った江南は館へと向かうが、
その途中でなにかに導かれるように事故に遭ってしまう。
一方、その暗黒館に住む浦登家の息子・玄児に招かれた大学生の中也は、
『ダリアの日』と呼ばれる儀式めいた宴に参加することとなり……。


~感想~
本格ミステリとしては「6」。
トリック小説としては「7」。
物語としては「8」。
綾辻行人作品としては「9」。
そして……館シリーズ最新作としては「10」。
僕が綾辻行人を知ってから8年。昔からのファンには12年ぶりの館シリーズとなる本作、待たせただけのことはあった。重厚ととるか冗長ととるかは微妙な線だが、じっくり丹念に編まれた世界を、長年待たされたぶんゆっくりゆっくりと読んでいくのが正解だろう。どんなにゆっくり読んでも、12年はかからないのだし。
要のトリックは意外と細かく、大仕掛けではない(ものすごい大仕掛けだけど印象はそれほど……)。
だが、最後の最後で必ず驚かせてくれることは請け合い。
あまり言うとネタバレになるが、「そういう物語だったのかあ~」と納得・感嘆・満足至極。
装飾過多なくらい、“いかにも”な要素がぎっしり詰め込まれ、絢爛豪華な叙述の祭典を、噛みしめるように読むべし。


04.10.10
評価:★★★★☆ 9
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