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ミステリ感想-『こめぐら』倉知淳

2014年03月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
Aカップの男たち
ゲイではなくただブラジャーを愛用する男たちの同好会。
そこで披露された自慢の逸品、鉄製ブラジャーの鍵が失くなった。
誰がいつなんの目的で鍵を盗んだのか?

「真犯人を探せ(仮題)」
河川敷で発見された死体。犯人は彼と同じアパートに住む人々の中に?
懸賞付き犯人当てラジオドラマの答えとは?

さむらい探偵血風録 風雲立志編
B級作品から掘り出し物ミステリを探す僕が目を付けたのは、B級時代劇。
無名俳優たちが織り成す、ありきたりの時代劇。はたして悪漢は密室と化した路上からいかに消え失せたのか。

遍在
不死の命を与える代わりに大いなる災厄をもたらす――。狂死した伯父が遺した怪しげな呪術。
追い詰められた俺は、禁断の儀式を経て不死の命を得る……?

どうぶつの森殺人(獣?)事件
動物たちが暮らす森の中で、嘘つきキツネが殺された。
森の誰からも恨みを買っていたキツネを殺した犯人…もとい犯獣は誰なのか。
探偵ネコが指摘する殺人…もとい殺獣事件の真相は。

毒と饗宴の殺人
受賞祝いパーティーの席で写真家が毒殺された。
衆人環視の中で誰がいつどうやって、乾杯のグラスに毒を入れたのか。
居合わせた童顔の小男・猫丸が語るトリックとは?


~感想~
作家生活十数年の未収録作品を集めた短編集。
同時刊行の「なぎなた」と比べると、本格味の薄い作品が揃ったか。以下感想。

Aカップの男たち
まるで作者自身も愛用しているかのような、男のブラジャーあるあるは面白いものの、ミステリ部分はかなり目にどうでもいいことに。謎はまだしも動機も真相もいまいち。

「真犯人を探せ(仮題)」
出来の悪さを逆手に取ったバカトリック。
読者が抱くだろう感想のだいたいは作者本人があとがきで書いているので許せてしまう。

さむらい探偵血風録 風雲立志編
大げさに描かれた時代劇のお約束の展開と、それに入れられるツッコミが楽しい。
トリック自体はメタと言えば聞こえはいいが、作中で最後に語り手が言うとおりのもので、端的に言って酷い。

遍在
笑った。ミステリでも本格でもないこれが本書中での白眉だろう。
これまでの前提とここまでの展開をちゃぶ台返しで投げっ放すすさまじいトリック(トリック?)が素晴らしい。
人によっては怒り心頭だろうが、自分は大好きである。

どうぶつの森殺人(獣?)事件
作者があとがきで言う通り、これを長編に仕立てあげていなくて本当に良かった。
短編程度のネタをふくらませただけと憤るか、わざわざ中編にしたことで、一層の台無し感を演出できたと捉えるかは読者次第だろう。

毒と饗宴の殺人
既視感のかなり高いトリックで、事前に多少の伏線を張っていなければ駄作と一蹴してしまいたい代物。
全くの余談かつネタバレだが(以下反転→)パチスロファンならばむしろこの場合、積極的に当たりに行くと思うのだがどうか。たとえばチェリーを引けば3回に1回当たるとして、2回外れたら3回目は当たる確率が上がると思いがちである。
また前半に出てきた殺人未遂犯の彼は真相にも伏線にも一切絡まなかったのだがあれはなんだったのか。



~総評~
「なぎなた」と比べ、こちらのほうが倉知作品らしい味が出ている作品がちらほら。
しかし読者によって評価が真っ二つになるだろうなという物も多く、好みも分かれることだろう。
個人的には「こめぐら」に軍配を上げるが、期待値を上回りはしなかった。そろそろ長編書いてよ。


14.3.6
評価:★★☆ 5
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