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ミステリ感想-『丸太町ルヴォワール』円居挽

2014年03月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
祖父殺しの嫌疑をかけられた城坂論語。彼は事件当日、屋敷にルージュと名乗る謎の女がいたと証言するが、その痕跡はすべて消え失せていた。
そして開かれる古より京都で行われてきた私的裁判・双龍会。論語を弁護する青龍師・瓶賀流に対するは美剣士・龍樹大和。
丁々発止の舌戦が、意外な事実と彼女の正体を浮かび上がらせていく。
このミス11位、本ミス8位。


~感想~
冒頭から斜に構えて謎めき浮ついた糞みたいな会話の応酬でボーイミーツガールが繰り広げられ、胸のむかつきが止まらない。
しかし危うく読書を放棄しかけたところで事態が動き、第二章に入ってからは俄然盛り上がる。
依然としてJDCみたいな仰々しい二つ名と必殺技を携えたDQNネームたちが入れ代わり立ち代わり現れては、上滑りする会話を滔々と放つものの、双龍会の設定は「ダンガンロンパな逆転裁判、ただし真実は一つとは限らない」なんでもありのルールで、ハッタリと汚い罠の仕掛け合い、揚げ足取りと口喧嘩が延々と描かれ、非常に面白い。
冷静に考えれば「女は誰で本当に存在したか?」という本題そっちのけで、やれ湯呑みがどうしたのやれコーヒーがどうしたのと些細な議題を延々とこねくり回しているだけなのだが、この議題から考えうる限りの展開とトリックをありったけぶち込み、物語を二転三転させる手管は実に見事。
一件落着したと思いきや舞台裏に移ってからが本番で、そこから急転直下、曖昧であるかないかもわからなかった真実がたった一つの形として浮き上がるにいたっては、最後の最後にまたぞろ糞みたいなボーイミーツガールが再開されても許せてしまう。まったくこれだけ何度も(それも同じ手で!)騙され驚かされては賞賛せざるを得ないではないか。
冒頭から文庫版で100ページ近くも続く糞みたいな会話や、何人もいる「全部わかってる人」ポジションのキャラによるもったいぶりに耐えられれば、激しくも静かなどんでん返しの嵐に必ずや魅了されることだろう。


14.3.19
評価:★★★★☆ 9
コメント (2)