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ミステリ感想-『検察側の罪人』雫井脩介

2020年05月09日 | ミステリ感想
 

~あらすじ~
敏腕検事の最上は担当する夫婦殺人事件の関係者の中に、学生時代の下宿先の娘を殺した疑いを掛けられるが、証拠不十分で逃げ切った松倉の名を見つけ、復讐を決意する。
そして最上を師事する沖野は松倉を苛烈に取り調べるが、捜査が何者かの手で歪められているのを感じ取る。

2013年このミス8位、文春4位


~感想~
社会派ミステリとうたわれがちだが生粋のエンタメ作品で、文庫版の上巻ラストで一気にB級に舵を切るようなある突拍子もない(しかし予想通りの)事件が起こる。
しかし下巻はほとんど消化試合で、敏腕なはずの最上が全然敏腕ではないため意表を突く展開は全く見られず、普通に普通を重ねたような超普通の展開が延々と続く。だからといって退屈なわけではないし、やりきれなさを残すラストシーンも良好なのだが、ここまで全てが予想の範疇から外れないと、年間ランキングでこんなにも高評価されるほどの傑作とは(個人的に)思えなかった。

なお原作に1ミリも無いインパール作戦や新興宗教や謎の始末屋芦名星をぶち込み「日本は戦争を企んでいる」というあまりにも香ばしすぎる真相を付け加え、最上と松倉が全然違う結末を迎えたのにラストシーンだけは原作そのままで「あのラストシーンはいらない」と言わせしめた、己の思想を主張したいがために他人の褌で相撲を取った糞オブ糞改悪の映画版については特に触れないこととする。ここまで変えるなら自分で原作書けよもう。


20.5.8
評価:★★☆ 5
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