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ミステリ感想-『時空旅行者の砂時計』方丈貴恵

2020年10月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
加茂伶奈の一族はまるで呪いを掛けられたように次々と命を落とし、最後の一人となった彼女も重病で余命宣告されていた。
夫の冬馬はマイスター・ホラと名乗る声に導かれ、不思議な砂時計の力で58年の時をさかのぼる。
たどり着いたのは伶奈の大伯母たちが命を落とし、呪いの始まりとなった連続殺人事件の起こった屋敷だった。

2019年鮎川哲也賞、本ミス7位

~感想~
タイムスリップし、残された事件の記録をもとに未解決事件を阻止する! という魅力あふれる設定は序盤からあまり活かされない。
なんせ事件自体はすでに始まっているし、異常に理解ある協力者を得られてすんなりと探偵役に収まってからは、古き良きガチ過ぎる、それゆえに地味な本格ミステリに切り替わってしまうのだ。
事件は(物語的には)意外な、しかし(読者的には)あまりに予想通りの展開を見せ、読者への挑戦も挟まれるものの、急速にSF設定が山のように飛び出してからは、その肝心のSF設定もかき消すような、そっちの方がむしろトンデモ設定だろと言いたくなる、超すごいサイコパスが大暴れし、様子がおかしくなる。
期待していたSF的仕掛けもあまりに些細なもので、いろいろな要素を詰め込みすぎたわりに光るものの少ない、ガチ本格としてもSFミステリとしてもどっち付かずの中途半端になってしまった感が強い。
書ける力のある作者だとは思うので次回作以降に期待したい。


20.9.26
評価:★★ 4
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