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ミステリ感想-『化石少女と七つの冒険』麻耶雄嵩

2023年03月11日 | ミステリ感想
~あらすじ~
良家の子女が集う京都の名門高校でまたも頻発する殺人事件。
部員2名の古生物部を率いる神舞まりあとお守り役の桑島彰に新入生の部員が加わり、見当外れの(?)推理が繰り広げられる。


~感想~
※「化石少女」の正統続編で、前作のネタバレが第一話から連発されるため、絶対に順番に読んでいただきたい。

今回も金田一君の母校も真っ青のペースで殺人事件が相次ぎ、まりあの思いつき命の牽強付会・我田引水の強引きわまりない推理も健在。それを彰が容赦なく一刀両断するのも相変わらずだが、まず個々の短編のクオリティが前作から上がっているのが良好。
特に冒頭からパンチの効いた第一話「古生物部、差し押さえる」、言われてみればごもっとものシンプルな伏線が際立つ「化石女」、いかにもこの作者らしいひねくれた結末の光る「乃公出でずんば」と、良作揃い。
そして前作の読者ならその先にあるものを当然期待するだろう。前作は言ってしまえば(非常に嫌いな言葉だが)麻耶作品の縮小再生産、焼き直しに過ぎなかったが、本作はそこから一歩進み新たな地平に踏み込んでみせた。
シリーズ続編に期待する点が全部入りなのはもちろんのこと、麻耶雄嵩に期待する尋常じゃなさも十分。そのうえ単独の短編としても楽しめる、要するに前作の読者は黙って買うべき一冊である。


23.3.10
評価:★★★☆ 7
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