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ミステリ感想-『インド倶楽部の謎』有栖川有栖

2023年10月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
前世からの絆で結ばれたと主張するインド好きが集まる例会に、過去~未来の全てが記されたアガスティアの葉を読み解く占い師が招かれた。
例会から数日後、メンバーが殺され、その死はアガスティアの葉によって予言されていた?
彼らを「インド倶楽部」と命名した有栖川有栖と火村英生が謎を追う。

2018年このミス14位、本ミス5位

~感想~
国名シリーズ13年ぶりの新作。間が空いたのはあとがきによると「あれ?時間が経つのが早いな。えっ、なんで?と思っているうちに歳月が流れていた」ということで特段の理由は無いそう。
前世からの因縁、アガスティアの葉に予言された死とザ・本格ミステリな道具立てだが、いたってライトな語り口かつ火村の休暇期間だけで解決するスピーディーさで、肩の力が抜けているのは良いところ。例によって火村とアリスがいちゃつくのも需要があるだろう。
個人的に初期の有栖川は文章も美しく描こうとしすぎて苦手だったが、最近の筆致はわりと好きだ。
論理と推理の流れは明快ながら、その実かなり奇抜なことをやっているのも読みどころで、特に予言の謎は腰砕けになりかねない真相を鋭い気づきで納得の真相に変えているのが見事。ご丁寧に火村が解いた時点で真相を予告してくれており、読者もそこで考えれば解ける趣向になっているので、ちょっと考えてみるのも面白いだろう。

またあとがきで作者は「本格ミステリはざっと十種類ぐらいのタイプに分かれるのではないか」「細かく分類し、まだ現れていない空席の分もカウントすれば、二十種類を超えるかもしれない」と話しており、タイプごとのそれぞれの代表作を検討するのも楽しそうだ。

本ミス8位だった白井智之「少女を殺す100の方法」より上位と聞くと「は?」ながら、先頃まさかの刊行となった京極夏彦「鵼の碑」と同じく、名物シリーズの十数年ぶりの新作だと期待し過ぎず、肩肘張らずに読まなければ十分に面白い佳作である。


23.10.19
評価:★★★ 6
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