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ミステリ感想-『ペガサスと一角獣薬局』柄刀一

2023年12月02日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ドラゴン、ユニコーン、ペガサスらが現れたとしか思えない数々の不思議な事件をヨーロッパを取材旅行で訪れた南美希風が解き明かす。

2008年本ミス8位、本格ミステリ大賞候補

~感想~
様々なファンタジー生物が起こしたとしか思えない奇想あふれる事件を主に描いた短編集。
冒頭「龍の淵」は悪い時の柄刀一にありがちな見取り図・トリック図解なしの大技で、ピークは事件発生時のドラゴンが起こしたような事件の様相だが、トリックはどうでもよくなってしまう。

続く「光る棺の中の白骨」は5年前に溶接された密室の中に現れた白骨死体というこの上なく魅力的な謎だが、○○が出てきた時点で某作を筆頭にやり尽くされたネタだと丸わかりでずっこける。ただストーリーとの絡め方は上手かった。

ここまでの2作でやはり柄刀一との相性の悪さを痛感したところだが、表題作「ペガサスと一角獣薬局」は年間ベスト級の代物。一部の手掛かりに納得行かないところもあるにせよ、全盛期の島田荘司のような奇想と浪漫あふれる大仕掛けで、ユニコーンとペガサスを現出させてみせたのはお見事と言う他ない。何気にユニコーンの現実的な解釈も面白かった。

「チェスター街の日」は今となっては後続の別ジャンル作品で超有名なネタになってしまい陳腐化してしまったが、刊行当時ならば(やはりこれも作例があるのだが)切れ味鋭かっただろう。これもストーリーとの絡め方が実に巧み。

ボーナストラックのラスト一編は置いといて、柄刀一に苦手意識がある読者でもおそらく充分に楽しめるだろう好短編集で、本ミス8位と本格ミステリ大賞候補は伊達ではなかった。


23.12.2
評価:★★★ 6
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