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ミステリ感想-『依存』西澤保彦

2024年01月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
アパートの裏口に挟まれた小石、全く世話をしないのに飼い続けられる犬、ぬいぐるみをもらい帰される誘拐被害者、物を亡くすとおみやげと一緒に返される飲み屋…。
タック、タカチ、ボアン、ウサコら日常の謎の裏に潜む悪意を泥酔しながら推理する面々は、教授の家で新妻を紹介される。
タックは言う。「彼女は僕の母親で双子の兄を殺した」

2000年このミス8位、本ミス7位

~感想~
「スコッチ・ゲーム」に続きシリーズが大きく動いたターニングポイントとなる一作。
気楽に馬鹿騒ぎしながら無責任な推理に花を咲かせる一行にシリアスな展開が訪れるが、問題点がいくつかあり、まずかなりの長編ながらあらすじの地点にたどり着くまでに全体の9割が消化されるのが難。
そこから先のタックらの選択は「あの人ならそうするしそうなるだろう」と予測の範疇を出ずに拍子抜けするし、日常の謎も本題に絡んではいるもののいずれも小粒で、水増しにすら見えてしまう。あの人が肉親とはいえぽっと出の女に負けるわけないだろ…。

そして一番のネックが例のアレで、今回はこれまで目立たなかったウサコを語り手に抜擢しているのだが「ごく一般的な感覚を持つ普通の女子大生」と表現されるウサコがごく一般的どころか「不用意に笑顔を見せたが最後、己の意志に関わらず男を慰撫するためだけに存在し機能する癒やし系ロボットとして認知され封建的システムに組み込まれてしまう不条理を断固拒否する決意表明」とか今やネットのフェミしか言わない極端すぎるジェンダー主張をする始末で、今となってはさすがに古臭く見えてしまうユーモアと相まって破壊力は抜群。
ファンなら必読だが、ファン以外は本作から読まないように要注意のこと。


23.1.27
評価:★★ 4
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