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ミステリ感想-『伯爵と三つの棺』潮谷験

2025年02月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
フランス革命の余波が迫る小国。伯爵は野心ある三つ子の貴族に城の管理を任せる。
だが彼らを捨てた父が射殺され、複数の目撃者がいたにもかかわらず犯人は生き写しの三つ子のいずれか判断がつかなかった。

2024年このミス4位、本ミス5位

~感想~
西村京太郎の大傑作「殺しの双曲線」は双子のどちらが犯人か特定できないものだったが、そこへさらに1人増してきた。もちろんトリックは別物で、舞台もフランス革命のまっただ中に設定した理由がある。
登場人物の一部はD伯爵、主席公偵、次席公偵と記され固有名詞が無く、これは語り手が後年に著した手記という体裁でリアリティを持たせるためだが、筆は意外と軽快で特にD伯爵の愛すべき脳筋ぶりは常に面白い。
フランス革命という時代、三つ子の犯罪、語り手による手記という設定のいずれもがトリックに大きく関わり、鋭い論理とあからさまな伏線、二転三転する真相と本格ミステリに必要なものの全てが揃っているといって過言ではない。
2つの年間ランキングでベスト5に名を連ねたのも当然の、恐ろしくなるほど良く出来た作品である。


25.2.13
評価:★★★★☆ 9
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