~収録作品とあらすじ~
美袋三条は大家のセクシーな未亡人から、何者かに狙われているかもしれないという不安を相談され…愛護精神
遭難した美袋はたどり着いた山荘で本格ミステリガジェット満載の事件に巻き込まれるが、メルカトル鮎は長編には向かない探偵だった…水曜日と金曜日が嫌い
メルカトル鮎はコロナ禍における銘探偵について語る…不要不急
殺したい相手がいる場合どうすればいいか? メルカトル鮎の答えは…名探偵の自筆調書
取材で鳥取に来た美袋はメルカトル鮎に出くわし、依頼に同行させられる…囁くもの
犯行予告めいたトランプを順に送りつけられる美人作家はメルカトル鮎に護衛を依頼し…メルカトル・ナイト
保養に招かれた美袋は天女とそれにそっくりな像を目撃し…天女五衰
過労で倒れたメルカトル鮎はいつになく不調で、次々とへまをやらかすのだが…メルカトル式捜査法
~感想~
メルカトル鮎シリーズを集めた短編集。
10年前の前作(?)「メルカトルかく語りき」の収録作はある趣向で統一されていたが、本作はごちゃまぜ。なんと1997年初出の作品まで2つあり、それが最新作を挟んでいるのだからむちゃくちゃである。
その97年初出の「愛護精神」が冒頭に置かれるが、長年続くうちに大変なことになっているメルカトル鮎シリーズとしては内容はかなりおとなしめ。タイトルの意味が明らかとなるラストは良かった。
続く「水曜日と金曜日が嫌い」は例の新本格オリジナル・セブン(笑)が集まった「7人の名探偵」に収録されたもので、7人の中で一二を争ったド本格の、しかし麻耶ならではの魔球で、再読でも楽しめた。
「不要不急」は最新作の掌編で、コロナ禍のメルカトル鮎が描かれる。…ファンはこれを読むと言いたいことが山ほど出てくるのだがそれは言わぬが花である。
97年初出の掌編で、そういえば有栖川有栖も書いていた懐かしの「名探偵の自筆調書」が今さら収録され、まるでそれを前フリにしたように出てくるのが2011年の「囁くもの」である。
前評判は聞いていたがもう最高。このシリーズでしかありえない趣向で、なぜこのメルカトル鮎が某作であんなことになってしまったのか不思議でならないがそれを気にしてはいけない。
続く「メルカトル・ナイト」と「天女五衰」も一見ありがちな概要でありながら、終わってみれば作者らしいブレ球となっている。
そして掉尾を飾る「メルカトル式捜査法」がたまらない。病み上がりで不調のメルカトル鮎が、いつになく失策を重ねるのだが、タイトルの「捜査法」が開始されてからは悶絶した。馬鹿だ。やっぱり麻耶は大馬鹿野郎だ!(花束を抱えながら)
近年に書かれた新シリーズ物はわりと滑っていた、というか劣化麻耶だったし、「メルカトルかく語りき」で行き着くところまで行ってしまった感のあるシリーズだったが、まだまだメルカトル鮎と麻耶雄嵩は健在だった。
ミステリの常識を次々と飛び越え、粉砕してみせた、予想を裏切り期待は裏切らない傑作短編集である。
21.9.23
評価:★★★★ 8
美袋三条は大家のセクシーな未亡人から、何者かに狙われているかもしれないという不安を相談され…愛護精神
遭難した美袋はたどり着いた山荘で本格ミステリガジェット満載の事件に巻き込まれるが、メルカトル鮎は長編には向かない探偵だった…水曜日と金曜日が嫌い
メルカトル鮎はコロナ禍における銘探偵について語る…不要不急
殺したい相手がいる場合どうすればいいか? メルカトル鮎の答えは…名探偵の自筆調書
取材で鳥取に来た美袋はメルカトル鮎に出くわし、依頼に同行させられる…囁くもの
犯行予告めいたトランプを順に送りつけられる美人作家はメルカトル鮎に護衛を依頼し…メルカトル・ナイト
保養に招かれた美袋は天女とそれにそっくりな像を目撃し…天女五衰
過労で倒れたメルカトル鮎はいつになく不調で、次々とへまをやらかすのだが…メルカトル式捜査法
~感想~
メルカトル鮎シリーズを集めた短編集。
10年前の前作(?)「メルカトルかく語りき」の収録作はある趣向で統一されていたが、本作はごちゃまぜ。なんと1997年初出の作品まで2つあり、それが最新作を挟んでいるのだからむちゃくちゃである。
その97年初出の「愛護精神」が冒頭に置かれるが、長年続くうちに大変なことになっているメルカトル鮎シリーズとしては内容はかなりおとなしめ。タイトルの意味が明らかとなるラストは良かった。
続く「水曜日と金曜日が嫌い」は例の新本格オリジナル・セブン(笑)が集まった「7人の名探偵」に収録されたもので、7人の中で一二を争ったド本格の、しかし麻耶ならではの魔球で、再読でも楽しめた。
「不要不急」は最新作の掌編で、コロナ禍のメルカトル鮎が描かれる。…ファンはこれを読むと言いたいことが山ほど出てくるのだがそれは言わぬが花である。
97年初出の掌編で、そういえば有栖川有栖も書いていた懐かしの「名探偵の自筆調書」が今さら収録され、まるでそれを前フリにしたように出てくるのが2011年の「囁くもの」である。
前評判は聞いていたがもう最高。このシリーズでしかありえない趣向で、なぜこのメルカトル鮎が某作であんなことになってしまったのか不思議でならないがそれを気にしてはいけない。
続く「メルカトル・ナイト」と「天女五衰」も一見ありがちな概要でありながら、終わってみれば作者らしいブレ球となっている。
そして掉尾を飾る「メルカトル式捜査法」がたまらない。病み上がりで不調のメルカトル鮎が、いつになく失策を重ねるのだが、タイトルの「捜査法」が開始されてからは悶絶した。馬鹿だ。やっぱり麻耶は大馬鹿野郎だ!(花束を抱えながら)
近年に書かれた新シリーズ物はわりと滑っていた、というか劣化麻耶だったし、「メルカトルかく語りき」で行き着くところまで行ってしまった感のあるシリーズだったが、まだまだメルカトル鮎と麻耶雄嵩は健在だった。
ミステリの常識を次々と飛び越え、粉砕してみせた、予想を裏切り期待は裏切らない傑作短編集である。
21.9.23
評価:★★★★ 8
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