ミステリ感想－『殺人方程式』綾辻行人

～あらすじ～
教団ビルで“お籠もり”の儀式中だった教主が、なぜか別の建物の屋上で死んでいた。
しかも、死体の頭部と左腕は切断されていて……。なぜ犯人は死体を切断したのか？
双子の兄弟が怪事件の謎に挑む。


～感想～
第一印象は、氏本人が語るとおり「物理トリックはうまくないなあ」。
思いついたトリックをそのまま小説にしてみたような、酷言すればひねりのない作品。
氏初の挑戦状（らしきもの）が挿入され、フェアプレイに則っているのはさすがだが。


評価：★★☆　５

ミステリ感想－『人形館の殺人』綾辻行人

～あらすじ～
館シリーズ第4弾。
人形たちがひしめく妖しい邸に移り住んで以来、周囲で続発する不可解な事件。
過去から甦る謎めいた情景に悩まされる彼に、姿なき殺人者がしのびよる。

本格ミステリ・ベスト100　64位


～感想～
館シリーズの体裁をとりながらも、構成はまさしく「囁き」シリーズのそれ。
おそらく大方の読者が予期しえないだろう意外すぎる結末には賛否両論が唱えられることだろう。


評価：★★☆　５

ミステリ感想－『十角館の殺人』綾辻行人

～あらすじ～
館シリーズ第1弾。
孤島を訪れた大学ミステリ研究会の七人を待ち受ける、恐るべき罠。
生き残るのは誰か？　犯人は誰なのか？

本格ミステリ・ベスト100　14位、文春8位


～感想～
氏のデビュー作にして、新本格派の誕生・本格ミステリ再興の象徴となった記念碑的作品。
トリック・プロットともにまだまだ荒けずりな面は多々見られるが、真相が明かされたときの衝撃は十分。
氏の決意表明、社会派ミステリへの訣別とも評される名言「（中略）1DKのマンションでOLが殺されて、靴底を擦り減らした刑事が苦心の末、愛人だった上司を捕まえる。――やめてほしいね。汚職だの政界の内幕だの、現代社会の歪みが生んだ悲劇だの、その辺も願い下げだ」はあまりにも有名。


評価：★★☆　５

ミステリ感想－『水車館の殺人』綾辻行人

～あらすじ～
館シリーズ第2弾。
古城を思わせる館の主は仮面の男。妻は幽閉同然の美少女。
有象無象の来客たちが集まった時、惨劇の幕が開く。


～感想～
大掛かり、と言うよりも綱渡りをしつづける曲芸的トリック。
読み進めるうちに感じていた違和感は真相が明かされるとともに一気に氷解する。
良くも悪くもトリック一本勝負の快作。


評価：★★★☆　７

ミステリ感想－『阿弥陀ヶ滝の雪密室』黒田研二

～あらすじ～
シリアルキラーJの襲撃により、意識不明に陥った刑事・胡田キョウジ。
彼の入院先で、小学生の幡野一輝が誘拐された。
そんなとき、新興宗教団体の教祖殺人事件が発生。
死体の上半身だけが見つかった現場には、Jの犯行を示す証拠が。
教祖殺人事件の謎を追い、阿弥陀ケ滝を訪れた友梨を“雪の密室”が待ち受けていた。


～感想～
前作とくらべ格段に読みやすくなった。
しかし、逆にトリック性は圧倒的に薄れてしまい、魅力がほぼ失われたといっても過言ではない。
どんな謎を追っているのかが、どうもあやふやで見せ方をあやまった感。
つまらなくはないのだが……。
あと、前作を先に読んでいないと、多数ネタバレしているので注意。


評価：★★　４

ミステリ感想－『ふたり探偵』黒田研二

～あらすじ～
北海道の取材を終えた向河原友梨らムック本の取材班は、寝台特急「カシオペア」に乗る。
だが友梨は、取材旅行の直前、同僚の笹川耕平が失踪したことに不安を感じていた。
彼は“シリアルキラーJ”に関してある予言をしていたのだ。
一方、友梨の婚約者でJを追う刑事・胡田は、Jに監禁されていた耕平から連絡を受ける。
耕平から、Jの標的が「カシオペア」の友梨たち取材班の中の人物だと伝えられた胡田だが、
Jの罠に陥り意識不明の重体に！　そのとき、友梨の体にある異変が……。


～感想～
辟易するくらい下手な文章。安っぽい心理描写。どうしようもない会話。
そしてそれら全てを吹き飛ばす、これでもかこれでもかと言わんばかりにくり出されるトリック。
ここまでやられては、筆力の有無など問題にならない。終わってみればいつもながらに贅肉のほとんどない、
均整のとれたトリック小説。お見事。


評価：★★★　６

ミステリ感想－『たけまる文庫 怪の巻』我孫子武丸

～収録作品～
猫恐怖症
春爛漫
芋羊羹
再会
青い花嫁
嫉妬
二重生活
患者
猟奇小説家

日本推理作家協会賞　候補　――猟奇小説家


～感想～
『謎の巻』よりもこちらの方がはるかにいきいきと書かれてるように見えるのは気のせいだろうか（反語）。
読む分には、ミステリではなくホラーだと思えば許せるということかも。
作者自身の言うとおり、ポルノ描写に無駄に気合が入っている。


評価：★☆　３

ミステリ感想－『人形はこたつで推理する』我孫子武丸

～収録作品～
人形はこたつで推理する
人形はテントで推理する
人形は劇場で推理する
人形をなくした腹話術師


～感想～
人形探偵シリーズ第一弾。
ユーモア味は『速水三兄妹シリーズ』とはくらべものにならないほど薄い。
マンガ化までされているが……まあ好みの問題か。手軽に読めるのは良いところ。


評価：★☆　３

ミステリ感想－『探偵映画』我孫子武丸

～あらすじ～
映画界にその名を知られたワンマン監督が謎の失踪を遂げた。
しかも「探偵映画」という野心作の撮影中に。
映画の結末、つまり「犯人は誰か？」は脚本家でもある監督しか知らない。
残された俳優やスタッフは撮影済みのシーンから、犯人捜しにのりだすが……。

本格ミステリ・ベスト100　56位、このミス16位


～感想～
なんといっても作中で描かれる映画がちっとも傑作に思えないのが痛い。トリックもプロットも練り不足（失礼）で、どこをめざし、どこに着地したかったのかが解らない。
正直、退屈。


評価：なし　０

ミステリ感想－『0の殺人』我孫子武丸

～あらすじ～
《作者からの注意》あなたが考慮すべき容疑者達は、四人だけということになります。
しかも、物語が進むに従って容疑者達は減っていくことになるから、範囲はさらに限定されます。
極めて簡単な問題ですからほとんどの人は、終幕前に真相を見破られることでしょう
――ほとんどの人は。でも、…。
※本文より


～感想～
速水三兄妹シリーズ第二弾。
前作から一転してユーモアトリック（？）が仕掛けられる。この試みは面白い。


評価：★★☆　５