~あらすじ~
安西お前はなぜ死んだ? マッキンリーを極めたほどの男が、なぜ難易度の低い塩尻岳で滑落したのか。
三年前のある事故以来、山に背を向けて生きていた草庭は、好敵手であり親友でもあった安西の死の謎を解き明かすため、再び山と向き合う。
08年このミス19位。
~感想~
ミステリという小説のジャンルの良い所として挙げられるのが、実に多様な題材を基に描かれるという点である。
山岳ミステリと銘打たれた今作では山に生きる登山家たちの日常や、彼らを取り巻く環境が細かに語られ、知識のない読者を引きつける。
全く知らない業界の話を聞くことは面白いものだが、こうしてミステリとして描かれなければ、山岳小説に縁は無かったろう。
本作の感想に戻ると冒険小説としても描けた筋書きから、作者はおそらく意図的に熱気を排し、抑えた筆致で丹念に描写を重ねた結果、物語に仕掛けられたいかにも本格ミステリ然とした、やや現実離れしたトリックを地に足を着け、現実に落とし込むことに成功している。
だがそうしたある種、派手なトリックを用いながら、淡々とした描写のせいでそれが劇的な効果をもたらさず、急ぎ足でほんの数ページだけ語られるエピローグとともに物足りなく思ったのも事実ではある。
ともあれ作者は他にもいくつか山岳ミステリをものしているので、それにも興味が湧いた。
14.1.21
評価:★★★ 6
安西お前はなぜ死んだ? マッキンリーを極めたほどの男が、なぜ難易度の低い塩尻岳で滑落したのか。
三年前のある事故以来、山に背を向けて生きていた草庭は、好敵手であり親友でもあった安西の死の謎を解き明かすため、再び山と向き合う。
08年このミス19位。
~感想~
ミステリという小説のジャンルの良い所として挙げられるのが、実に多様な題材を基に描かれるという点である。
山岳ミステリと銘打たれた今作では山に生きる登山家たちの日常や、彼らを取り巻く環境が細かに語られ、知識のない読者を引きつける。
全く知らない業界の話を聞くことは面白いものだが、こうしてミステリとして描かれなければ、山岳小説に縁は無かったろう。
本作の感想に戻ると冒険小説としても描けた筋書きから、作者はおそらく意図的に熱気を排し、抑えた筆致で丹念に描写を重ねた結果、物語に仕掛けられたいかにも本格ミステリ然とした、やや現実離れしたトリックを地に足を着け、現実に落とし込むことに成功している。
だがそうしたある種、派手なトリックを用いながら、淡々とした描写のせいでそれが劇的な効果をもたらさず、急ぎ足でほんの数ページだけ語られるエピローグとともに物足りなく思ったのも事実ではある。
ともあれ作者は他にもいくつか山岳ミステリをものしているので、それにも興味が湧いた。
14.1.21
評価:★★★ 6