東方のあけぼの

政治、経済、外交、社会現象に付いての観察

現在のチャイナは中華文明の嫡子か

2014-11-27 21:22:20 | 東アジアの悪友
評論家石平氏の「なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか」(PHP新書)を読んだ。一年前に出た本だが現在11刷だからまずまず売れているのだろう。

石平氏はテレビ等の討論会で見ることがあるが、なかなか的確なことをいうなという印象を持っている。この本も興味深い点がある。平均的日本人(特に政治家)の中国人に対する感傷的な思い入れはあきれるものがある。

戦後の親中派、媚中派はもとより、昭和の右翼、大陸浪人、軍人の「アジア主義」は田舎っぺの感傷以外の何者でもない。まるで馬鹿な田舎娘がすれっからしの男に一方的に入れあげている図である。

日本人は支那(注)の古典に敬意を持っている。それはいい。それは当然である。日本人の通弊は、現在のシナ人も偉大な支那文明の継承者として崇め奉る田舎っぺ根性である。

西欧文明の源流がギリシャ・ローマ文明の遺産であることはいうまでもない。だが、古代文明の偉大さは遺跡と書物のなかにのみ保存されている。そして遺跡はともかく文書の保存や研究でもっとも進んでいるのはイギリス、フランス、ドイツ、アメリカである。

現在ギリシャやイタリアに住んでいる人間を古代文明の継承者と見なす人はだれもいない。近世においてギリシャはかなり長い間オスマントルコの支配下にあった。イタリアは小国に分裂していて国家としてローマ時代以来統一されたのは日本の明治維新の時期と一致する。

支那は例を前漢以降にとっても、統一国家であったのは一千年あまりであり、ほとんど同じ期間、分裂国家であるか異民族支配の状態であった。元と清の異民族支配は近世の合計四世紀に及ぶ。現在の支那は偉大な古代中華文明の継承者とは常識的に言えない。やっていることも文明人といえない。大国らしい度量も全くない。

古代中華文明の文物をもっともよく保存しているのは日本であろう。何回も易姓革命があり、数世紀にわたる異民族支配があり、歴史の半分以上の期間分裂国家(つまり動乱時代)であった支那と違い、日本は古代支那の古典をもっともよく保存している。研究者の質も高い。ギリシャ・ローマの古典研究の中心が西欧やアメリカであるように。

注: 「中国」というのは登録商標違反である。日本の山陽山陰地方は江戸時代から中国地方と呼ばれている。革命で王朝が頻繁に変わる支那は日本では王朝名で言及するのが普通であった。唐とか清とかである。歴史をとうして言及する場合は「唐」といったものである。唐人とか唐物屋(洋品店)などである。明治時代には厳然として清王朝があったから、当然清国といった。外国語大学で支那語を教えたところは清語科といった。永井荷風は外語の清語科卒業か中退である。

支那あるいはシナというのはあきらかにチャイナのフランス風の発音である。たしかラテン語でも同じような言葉ではなかったかと記憶する。注終わり

最初に述べたことに戻るが、日本には古代支那の古典を慕う歴史がある。一方で現代のシナ人も古代中華文明の嫡子とみなす幼稚な風習が俗衆の間にあるから妙なことが起こる。油断が出来る。シナ人に対して無防備になる。中華文明の継承者だと錯覚する、詐欺師、強盗、ごろつきを。だから石平氏のいうように「中国とつき合わない方が日本はうまくいく」のである。石氏の本にはその具体例が満載である。