日本などの先進国の畜産は、穀物を多給することで高生産と大型化を成し遂げてきた。これを「近代酪農」とか「先進的畜産」と自尊心をくすぐられて、高い生産性を誇っていた。
こうした技術は、穀物を大量に消化できる品種の改良と、畜舎の改良や餌管理技術を、畜産農家に提供することで成し遂げられた。が、最も重要な要因は、 安価な穀物が安定的に供給されてはじめて可能な技術でもある。
そのためには、穀物輸出国と"良好な関係”を保っておかなければならない。穀物輸出国とは、アメリカである。家畜に与える穀物とは、8割がトウモロコシ(コーン)である。コーンは、アメリカ中西部が生産地帯(コーンベルト)である。
日本で家畜に与えるコーンの量は、年間2千数百万トンである。これは、人間が食べているお米の、丁度3倍の量である。
この、コーンがバイオエタノールへと大きく転換し始めたのである。アメリカが政策的転換を図ったのである。いくら良好な関係といっても(実態は日本のアメリカ追従でしかないが)、結局は自国の事情が優先されるのである。当然のことである。
今、人の食料自給率は40%を切ってしまった。家畜の、飼料自給率はニワトリ(採卵、ブローラー)は5%足らず、豚が10%程度、肉牛が20%程度、乳牛は30%はほめすぎかもしれない状況になっている。
食料自給率(飼料自給率を含め)は、国の独立権の放棄に直結する。地球温暖化、異常気象は食料生産の不安定をも、もたらす。これからは、安定的に安価に穀物を供給してくれる国などなくなる。
牛乳の生産量の多い県は数年前より北海道の次に、栃木県、次に群馬県になっている。かつては、千葉県と兵庫県が2、3位を競っていたが、千葉カ4位であるが、3位群馬5位熊本県となっている。
これらは、穀物多給の大型酪農家が集中しているためである。また、消費地に近いことも関係している。飼料時給が高い地域ではないのである。
穀物の消費を、自国の事情を優先するアメリカは、すでに頼りにならない。「近代化」を目指して、高生産と大型化をしてきた日本の畜産は、大きな転換点に立っている。