そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

貧困のない世界が創られる

2009-01-13 | 政治と金

1年何冊かの本を読む。書籍の購入については、僻地いるためネットでの購入が圧倒的である。書評などから購入して馬鹿を見ることも少なくない。それでも、これはと思う本は、年に1冊程度である。

所が今年は様相が異なった。年頭から読み始めた本が、今年の一冊になりそうである。本の題は「貧困のない世界を創る」(ソーシアル・ビジネスと新しい資本主義と副題がある)早川書房。著者は、2006年度ノーベル平和賞を受賞したバングラディッシュの、ムハマド・ユヌス氏である。

無担保少額融資を掲げ、貧困者のためにグラミン銀行創設した人として知られている。10年以上前に彼のことを知ったが、とてもおぼつかない銀行運営のように思えたが、すでに30年以上も貧困と闘っている。

この成功から彼が得て教訓の言葉が、珠玉のように全編にちりばめたれている。利益を最大化するビジネスとして、既存の企業は存在する。これに対して彼は、ソーシアル・ビジネスを提唱する。ソーシアル・ビジネスは利益によってではなく動機によって動く企業であると規定する。

同じ金融でも、いわゆる投資家たちの考えはこれと全く異なる。今起きている不況は、本来は金融不況である。利潤追求の金貸しの行き詰まりの減少にしか過ぎない。本来投資は、社会的貢献のためになされる、非営利的目的でなければならないのではないか。

貧しい人々や恵まれない人たちによって所有され、社会的な利益は生み出さないかも知れないが、所有者である貧しい人たちを助けることになる。お金に触れることさえなかった貧しい人たちを相手にしながらも、返済率が98.6%にもなる。

世界銀行もグラミン銀行と同じように、貧困の撲滅を掲げているが現実にはすでに安定している人たちを活気づけるだけで、豊かな人たちを助けている。あるいは、これまでの社会は貧困は本人のせいにすることが多く、社会のシステムなどを見てはこなかったのではないか。

「利益」が万能の社会のシステムがおかしいのである。この本は、あるいはユヌス氏の主張は、これまで経済を学んできた人たちには、理解できないことかもしれない。現場で、一次産業にかかわり国の形態を底辺から見つめる者にとって、極めて分かりやすい論理と実践に満ちた本である。

コメント (2)
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