政府はソマリア沖の海賊対策として、海上自衛隊を派遣する意向を固めた模様である。首相の意向に沿った検討委員会は、しぶる公明党を説得し、派遣を決断したようだ。
確かに人道的には、ソマリアの海賊(物取り行為・船ごと誘拐して金を巻き上げる行為など)はあってはならにことである。ソマリアは90年に内戦が起き、その後の干ばつなど200万人も死亡している。その後ソマリアは内政不安状態にある。こうしたことを背景に、海賊行為はビジネスとして定着した感がある。30億ドルも稼いでいるとの報道もあ る。儲けのいい仕事である。
日本が海上自衛隊を軽微に派遣したいようであるが、どう見ても法律的に無理がある。自衛隊は国内あるいは、国家に対する警備、自衛のものである。公海上での警備行動は自ずと制限されるべきで存在ある。政府は、自衛隊法82条の通常の海上警備行動をを考えているようだが、公海上での警備行動は海上保安庁の仕事である。今回は海賊が軍隊ならまだしも、民間の犯罪者である。
海上保安庁でも公海上の警察権の行使は、これほど離れたところまで及ぶのかは疑問である。ちょっとばかり無理だと思ったのか、政府は自衛隊に、日本特別警備隊と名称をつけて、派遣するようである。
支持基盤の弱い麻生内閣は、特別法を作って対応する力がなく、例によって解釈改憲の方法を用いての派遣である。法律を設けることなくなし崩しのままで、日本船の護衛ならまだしも、不特定の国籍の船舶をどのように保護するのであろうか。
日本は軍隊のない国家として知られている。それを最大限利用する形で、ソマリアそのものへの援助や治安対策への貢献を、日本は考えるべきである。このままでは、知らず知らずの間にこの国は、世界中どこにでも軍隊を派遣できる国になってしまう。