日本の国会は、議員内閣制である。首相を出している政党が与党と呼ばれている。与党が法案を提出すると(ほとんどが官僚の製作である)、野党がこれを審議する。これを事前審査と呼ぶ。
国会の事前審査で、それぞれの党が自らの主張として決めたことは、所属の議員たちは反対できないことになっている。これを党議拘束という。党議拘束を犯すと、その議員は何らかに処分を受けることになる。
我々国民は議員個人を記名投票する。我々が議員個人を信頼して投票するのである。ところが、小選挙区制になって、比例区などというものができて、何らかの党に投票することにもなったが、原則は変わることはない。
しかしながら、国会では議員さんたちは個人の資格で、国会議員として行動する。選挙の時に所属していた党を平気で離党しても、議員としては居座っている。議員はあくまで個人としての資格なのである。
例えば、本国会で審議されている定額給付金などは、国民の70%以上の人が反対をしている。これに与党の議員全員が、賛同の意思をもっているとは到底信じがたいことである。
党議拘束がある限り、少しばかり理性的な議員さんがいても、反対投票ができないのである。これに反対しようものなら、公認が得られない。小選挙区制の中で、公認が得られないことは、刺客を送られて落選することになる。即ち議員生命が終わることを意味する。
渡部喜美議員のように親父から引き継いだ盤石の選挙基盤があって、民主党も公認候補を決めていない選挙区なら、その心配はいらない。党議拘束を無視できるのである。党内での出世はなくなっても、議員ではいられる。彼は例外的な存在である。
アメリカのように、大統領制の国家は行政府と立法府が、ほぼ完全に独立していれば、党議拘束はほとんどなく、議員は個人の資格で十分行動できるのである。議員内閣制で多少の党として方針はあっても仕方ないが、日本の政党は除名までする。異常に党議拘束が強いのである。僅かに、社民党が原則として党議拘束を設けていない程度である。
日本の国会議員さんたちは、所属政党が決めたことなら、問題だと思っても反対することなく、執行部の動向を批判すらできずに、ゾロゾロと無気力について歩くだけである。
日本の民主主義は、党議拘束の不自然さと、小選挙区制によって国民の声が届きにくい体制になって、極めて危うい状況にあると思われる。総選挙をやってもこれは変わることがない。