家畜を診療する獣医師として、かなりの場面を見慣れていると自負しているが、それが映像となってテレビで見ると、ドキッとする。深夜のNHKのBs放送で時々素晴らしい番組を放送している。海外ドキュメンタリーで、日本が制作したものではない。
この不況下にあっても、多国籍企業として世界の食料価格を牛耳っている、アグリビジネスが軒並み好調である。モンサントやカーギルは大儲けの現状にある。
ポーランドに進出した養豚業の世界最大のスミスフィールド社が、現地で大きなトラブルを起こしている。BIGビジネスをもじって、PIGビジネスと題されたイギリスの会社が制 作したレポ ートであった。スミスフィールドの養豚は、1棟1000頭規模のものばかりである。
周辺には糞尿を撒き散らし、汚臭で環境問題を引き起こしている。平坦なポーランドでは、川や池の汚染も深刻である。何よりも、ポーランドの豚肉価格を一気に下げてしまった。そのために、農家はこれまでの価格で豚肉を売れなくなってしまった。
工場式養豚では豚は狭いところに閉じ込められて、飼養される。家畜をいたわるべきとする、 家畜福祉もあったものではない。地元農民は、豚を幸せに飼わなければ、美味しいに気にならないと、放牧などをやって自由に飼養管理している。その人たちの豚肉が売れないのである。農民の抗議を受けて、工場式養豚を禁止すると約束した大臣は、ほどなく解任された。工場式養豚を支援しているのは、ポーランドの銀行である。国債を購入しポーランドの財政を支えているのは銀行である。
今流行の兆しを見せている、豚インフルエンザの初発は、メキシコの山村のスミスフィールドの養豚場であったことは、とても偶然とは思えない。
スミスフィールドの豚の餌を支えているのが、カーギル社である。カーギルはブラジルの熱帯雨林を開発し、原住民を追い出し地元の伝統的農家を圧迫し、猛烈な抗議を受けている。
スミスフィールドはポーランド国内最大の食肉業者、アニメックスを買収した。生産から流通まで牛耳ったのである。ポーランドの農民は、自給食料を前提にする農家が多く、零細農家がほとんどである。彼ら場英の運危機に陥っている。
レポーターは、地元の肉地元の農産物を買うことで、消費者のメッセージを届けるべきと結んでいる。 しかし、スミスフィールドは次はルーマニアに進出するとのことである。
翻って日本の畜産を見たときに、もう少し飼養形態はましだと思うが、基本的には変わりない。資金的な援助、制度的な保護は、国がやっていてそれを支えているのが、農協である。