国民的支持もないまま、石原慎太郎知事が強引に突っ走り、行くところまでいった感のある「東京五輪招致劇」は、失敗に終わった。社民党は当初から反対であったし、民主党も挨拶に来なかっ たとかで難色を示していた。与党になったら、石原知事はやたらと丁重になり、挨拶に鳩山の元に赴いた。
これに応えて鳩山がコペンハーゲンの、IOC総会に出向いて招致への挨拶をした。これで鳩山は、石原慎太郎に貸しを作った。石原の出馬しない時期都知事選挙に、微妙な影響が出るだろう。鳩山のしたたかな計算がここにある。
最終選考に残った、4都市のうちで2度目は東京だけだった。前々回になる北京の隣の都市でもある。国民の支持が圧倒的に低かった。旧施設を使うことの有利性よりも、新鮮味のないことの方が目立ってしまった。要するに、東京五輪招致は石原知事の人気挽回に打って出た奇策であって、強引な引き回しで決定されたのであって、落選は当初から目に見えていた。
第三者的にみても、初めての開催となるブラジルに落ち着くのが妥当であった。南米初であることや、経済成長の真っただ中にあるBRICsの一つでもある。最終投票の投票数の多さに、世界の期待が見て取れる。
石原知事はよほど悔しかったのだろう。良いだけ悪態をついてしまった。「変な力学が働いた」と抽象的な発言で終わればよかった。しかし、ブラジルはアフリカ諸国の援助を約束していただの、戦闘機を買い付ける約束をしたいただの、風評の類のことをリオの勝利の理由と大っぴらに発言したのである。
ブラジルは、国際オリンピック委員会へ石原知事の発言を抗議することになったようである。日本国内なら、強気も通じるかもしれないが、国際問題となるとそうはいかない。プライドの高いブラジルは、メンツを汚され黙ってないない。
石原知事は東京銀行で失った人気の回復を、五輪招致にかけたのである。立候補の一番目の公約に掲げていた。晩節を汚す行為が連綿とつずく石原慎太郎である。